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電車に揺られ、かなり田舎まで来た。
私たちが住んでいたのはそこそこの都会だったから、海に近づくにつれて田んぼや森が広がっていくのはなんとも心地よかった。
翔太は私の隣で電車の窓によりかかって寝ている。
その綺麗な横顔を見つめながら、抜け殻になってしまった私たちは、何がいけなかったんだろう。何でこんなつらい思いをしなければいけないんだろう。
なんで、耐えてこなければいけなかったんだろう。
そう思った。
俺は優香に揺らされて、起こされた。
ここが観光地化されていない田舎の海に一番近い駅なのだ。ここから海に向かっても線路は引かれていたが、人がほとんど住まなくなったから電車が通らなくなったらしい。
俺らはこの駅から歩いて海に行くことにした。
支払いをしたあと、優香は線路に飛び降りた。線路の合間から雑草が伸び、周りを見渡せば田んぼや森しか見えない。
「私、田舎の線路の上、歩いてみたかったんだよねー。」
そんな呑気な会話に笑えてきて、久しぶりに素で笑った。
俺も線路に飛び降りた。そしてニヤッと笑って見せた。昔の俺らに戻った心地だった。
赤くなってきた空を仰ぎながら雑草の伸びる線路の上をひたすら歩いた。