忘れることが出来るなら、どんなに楽なことか
イギ×海
ナチ×陸
このcpが出てくるわけではありませんが、こういうcpが「あった」と言うことが話のなかで必要となるだけです。
「大丈夫、大丈夫だから。」
頬を手で挟み視線と視線を無理矢理絡み合わせる。
呼吸を乱し、過去を思い出す兄の姿。
「海にい、僕に合わせてね。」
優しく赤子にでも言い聞かせるように言い、ゆっくり深呼吸を行う。
「すーはぁ、すーはぁ。」
視線が無意識に下に向かっているのに気付き、そっと上目遣いのようにして海にいの視線を僕と絡み合わせる。
数分経つと落ち着いてきたのか、そっと僕に抱きついてくる。
「どうしたの?ゆっくりでいいし、嫌なら途中でやめてもいいから何を見たのか教えて欲しいな。」
静寂に包まれた暗い夜を乱す一滴のしずくから広がる波紋。
いつも帰ってくる返答は同じ。でも、今日は違うことを願って聞いてみる。
「なんもない、ごめん。」
いつもと同じみたい。
「いいよ。言えそうなときに教えてね。」
優しく優しく、壊れ物を扱うように。海にいの気に触れないように。
「寝れそう?」
僕が問いかけると海にいは首を横に振る。
僕はあぐらをかき膝枕になるように海にいの頭を窪みに入れさせる。
「まだまだ夜は長いから、とりあえずゆっくりしてようね。」
瞼を指先で撫でてやると、体の力をゆっくり抜き目を瞑る海にいを可愛くも思う。
ふと、僕の隣で囚人座りをしている彼を見る。
顔は伏せており、寝ているか起きているかがわかりにくいが、微かに震えている為起きているのだろう。
「陸にい?起きてる?」
分かりきっていることを本人に聞いてみる。
すると、声を出す代わりなのか知らないが、肩に体重をかけてきた。
腕と顔の間に手を入れ頬を撫で、そっとこちらを向くように陸にいの顔を扱う。
陸にいの目を覗くと薄汚く濁ってしまたったエメラルド色の瞳とルビー色の瞳がどこか遠くを眺めており、涙袋付近は黒く変色していた。
無意識だろうか?寝ていないせいで目元が緩んでいるのか、そっと目から雫を落とす陸にい。
顔を近づけそっと舐めてあげる、我ながら猫同士の毛繕いのようだ。
急に感じた生温い妙な感触に反応してか、視点を少しこちらに向けて僕の存在を確認していた。
「、、、先輩?」
疑念と願いが含まれたその呟きに心が痛む。
「ごめんなさい。」
僕は陸にいの先輩にはなれない、何度なりたいと考えてもなれない。
きっと陸にいは僕を見ていたのではなく、先輩という幻覚を体格の似た僕に重ね合わせて見ていたんだろう。
そっと瞼付近をふれ、目を瞑らさせる。
だが、数秒後そっと触れていた手を握られ、「ごめん。」と一言呟きまた顔を伏せてしまった。
やっぱ怖いのかな、?
戦後か戦時中かもうあまり覚えていないけれど、陸にいは暗いところを怖がり、目を瞑るのさえ恐怖するようになっていた。
横にならせようとするならば、一瞬で泣きじゃくり始め過呼吸状態になってしまう。
「陸にい、、そんなに思い詰めないでね。」
陸にいにとって誰から言われているように感じるかは分からない。でも、陸にいはそっと僕の手を握ってくれた。
そして、少しだけ顔をあげ、
「、、、、、大丈夫です。思い詰めてなんかいませんから。」
「それより先輩、最近寝てないでしょう?私はいいので先輩は寝て下さい。」
やっぱり、僕は陸にいから僕として見てもらえないらしい。
「うん、、分かった。陸にいも一緒寝よ?」
「はい、、あとで寝ます。」
そういい、手を離しまた顔を伏せてしまった。
数十秒後、少し目元が濡れる感覚がし、手の先で自分の頬を撫でるとやっぱり濡れていた。
海にいが膝にいるため下手に動けず、自分から出てくる水滴を裾に吸わせることしかできない。
部屋には、僕の鼻水を啜る音と少しの嗚咽の音しかしなくなっていた。
「空、?」
海にいがその音に気づいてか、僕の名前を呼び、陸にいは僕の手をまた繋いでくれる。
「ごめん、。」
僕より辛いはずの2人に心配されて、自分の存在意義が分からなくなる。
僕はにいに達を助ける為に生まれてきたはずなのに、逆ににいに達に心配されて、、。
「ごめん、ちょっとトイレ。」
その場に耐えれなくなり、海にいを枕に寝かせ立ち上がり部屋を出る。
そのまま、隣の部屋にある仏壇へと向かう。
そっと置いてある座布団の上に正座し、金剛色に輝いているモノを見つめる。
そして、横にかけられている刀をそっと引き抜き、刃先を自分に向かせる。
コメント
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ww2の記憶を忘れたいのかな、、、?海と陸は、、、でも空はこっちに向いて欲しいのかな、、、。今回は三人とも極限状態で詰まった空気がとても良い話でした!!