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柱時計の短針が11を指す。
アンティークで洋風な柱時計だが、意外にもこの寺の内装と合っていた。
わざわざ太陽の位置を見て時間を推測せずに済むと思うと、明治時代にも時計があって良かった。
とはいっても、時計というのは高価なもので転生先で生まれた家には時計なんて無くて苦労していた。
家族は時計が無いのは当たり前の様子だったためか、不満などを漏らしてはいなかったが。
(今朝から何も食べてないな…)
まだ11時になったばかりだというのに、どうりで腹の虫が鳴るわけだ。
脹相の呪胎を産んだり両親が死んだりと、朝飯どころではなかったのだ。
「昼ご飯作ります。」
脹相の呪胎を研究している羂索に声をかける。
「ああ、適当に作っておいて。」
台所に行き、玄米を軽く洗い水に浸す。
浸している間に、鍋に水を入れ昆布で出汁を取る。
野菜や豆腐を入れて具材が柔らかくなるまで煮た。
玄米を水と一緒にもう1つの鍋に入れ、火にかける。
出汁を取った方の鍋の中の具材が柔らかくなっため、火を止めてから味噌を溶かし入れた。
玄米の方の鍋が沸騰し、火を止めて蒸らす。
出汁を取った方の鍋を再度温め、味噌が溶けたため、味噌汁ができた。
次に、魚と塩を用意する。
まず魚を下処理し、内臓を取り除く。
表面に塩を振り、しばらく置いて味をにじませる。
玄米の方の鍋の米をしゃもじで解し、麦ご飯ができる。
魚を炭火で表面がこんがりとなるまで焼き、焼き魚が完成した。
「もうできたようだね。」
焼き魚の臭い匂いにつられたからか、羂索が台所に来た。
「麦ご飯と味噌汁は好きな量をよそってください。」
飯を食堂に運び終え、手を合わせる。
「「いただきま〜す。」」
味噌汁の味が薄いし、ぬるくなっている。
焼き魚は小骨が多いため、取り除くのに時間がかかる。
麦ご飯なんかよりも現代の白米の方が絶対美味い。
明治時代に転生してからは、転生先の母に教えられて料理ができるようには一応なった。
だが、現代に比べて難しいし時間がかかる。
正直現代の味を普通だと思っている私にとっては、明治時代の飯なんて全て不味く感じてしまうのだ。
表情を歪ませることのなく食事をする羂索を見て、(一応私料理はできている方なのか?)と思ったのだった。