そんな昨夜の出来事を語り合った結果、ギレスラが当然の疑問を口にする。
『ガッ? ダカラ、イワヤマニハ、バストロ、ジグエラ、ヴノ、ガ、カエッテクルンデショ? ソコニイクノデ、アッテルノ? ハテナ?』
ペトラの表情もギレスラの物と寸分の違(たが)いも無い。
『そうよレイブお兄ちゃん、バストロのお師匠の指示は、お師匠ですら知らない隠れ場所に潜んでいるって事だったでしょう? 岩山の岩窟、『光と影の岩窟』じゃあ駄目じゃない! 待っているだけだから楽チンだ、そう言うのってあんまり良く無いんじゃないかなぁ? 嘘に近くないぃ?』
『ガッガッ』
少し非難めいたムードを帯びたペトラの言葉に激しく頷いて同意を示したギレスラ。
掛け替えの無いスリーマンセルの駄目出しに近い対応にも、顔を曇らせる事無くレイブはいつもの風情のままで言う。
「だから岩山の岩窟なんじゃないかぁ! ほら良く思い出してみなよペトラとギレスラっ! あそこだったらさ、岩山に帰って来る師匠たちを見つけるのに最適じゃない? それにあそこには有ったじゃないかぁ、他のどこよりも秘匿性に優れた倉庫がぁ」
興奮気味に告げたレイブの声に、ペトラは首を傾げてギレスラはボーッとしている。
レイブは多少イライラしながらも言葉を続ける。
「もうっ! 確(しっか)りしてよっ! あの倉庫の奥でペトラが見つけたんじゃあないか! 蔦(ツタ)の蔓(つる)に隠された最奥のあなぐらをぉっ! 思い出してっ! ねえ?」
この言葉にはまずはペトラが、続いてギレスラも、ハッ、とした表情を浮かべながら交互に言葉を発する。
『あ、あれっ! あの倉庫の奥の空間? あそこに隠れるって訳ぇ? レイブお兄ちゃん!』
「そうだよぉ~」
『デ、デモ、レイブゥ、ハイレナカッタジャン?』
「ぬふふ、これ、なーんだぁ~!?」
『むっ?』
『ヌヌヌッ?』
訝(いぶか)しがるペトラとギレスラの目の前にレイブが取り出して見せた物は……
揃って古惚けてはいるが、石を穿(うが)つ為のノミ、ハツリノミと、間接的にも直接的にも石を砕く為の利器ビシャン、所謂所(いわゆるところ)の石工ハンマーである。
レイブは胸を張り捲って誇らしげに言う。
「へへーん、去年の秋、僕だけ入れなかったからさぁ、あの後廻った里で聞いて回ってねぇ、思い当たる人達に僕自作のタリスマンを大量に譲渡する事で手に入れて居たんだよぉ? この道具! なんと、これが有れば石や岩を削る事が出来るのさっ! だから、僕もペトラが見つけた穴の奥に入ることが出来るって訳っ! どう? 最高の隠れ場所でしょ? ゼロ距離の隠れ場所なんだからさぁ!」
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