白い空間に椅子が対面で置かれている部屋に2人は閉じ込められた。お題が書かれており、それを達成していかない限り元の世界には帰れない模様だ。2人共椅子に座っている。1人は若い女の子でこの状況に少し戸惑いつつもわくわくしているようだ。もう1人は男でこの状況に全く戸惑いもせず、女の子にずっと微笑みを投げかけている。全く表情が読めない。
1つ目のお題がきたようだ。
お題 自己紹介をしてください。
2人はお題を見る。さっそく男が自己紹介を始めた。
「俺はヨウ・リーシン」
リーシンは微笑みを絶やさずにそう言い放った。あまりの自己紹介の短さに女の子は驚きつつも自分も自己紹介を始める。
「えっと、メリア・エキナセアです。16です。兄が…います。」
リーシンは机の上で手を組み、微笑みながら話を聞いている。それとは反対に、メリアは膝に手を置いてリーシンを警戒しているようだ。
「へー、16若いね。」
そう言われると彼女は答えに戸惑い曖昧な返事をした。
「え、あ、はい…」
するとリーシンはクスッと笑い
「そんなに緊張しないでよ。」
それに対し彼女は「はい…」と返事をした。
彼女は表情が全く読み取れないリーシンに恐怖しながらも勇気を出して質問をする事にした。
「あの、おいくつ…ですか?」
「30前半だよ。」
その答えに彼女は驚いた。見た目ではもっとずっと若く見えたからだ。
「え、全然見えない…」
彼女は自然と漏れ出た声にハッとし口を自分の手で塞ぐ。すると、彼は少し嬉しそうに
「若く見える?照れちゃうなぁ。」
その反応に「あれ、ちょっと可愛いかも…」と彼女は思った。だが同時に、相変わらず変わらない表情に恐怖もした。すると彼が
「お兄さんってどんな人?」
意外な質問に少し驚きつつも彼女は答える。
「兄は…1つ年上で、すっごく私のことが大好きでいつも私の事ばっかり気にしています。仲間思いで、とってもいい人なんですけどね。今…離れ離れで…何してるんだろうな…」
彼女は少し寂しそうに話をしたあとに、 彼が喋り始めた。
「兄妹愛か、美しいね。俺は兄弟とかいないからそういうのはよく分からないけど、仲間なら大勢いるよ。特に日本人の子は面白くって揶揄いがいがあるんだ。」
彼はその人の事を思い出したのだろうか、クスッと笑った。
彼女は「にほんじん」とはなんなのかと疑問を覚えつつも彼が楽しそうに話すのでつられてしまい「ふふっ」と笑ってしまった。すると彼は微笑み
「可愛らしい笑い方だね。」
と言った。彼女は彼の急な言葉に、頬を赤らめた。
「んえ、あ、ありがとうございます…」
そう彼女が言い終わった直後に
ピーピー
と何か音が鳴り始めた。どうやら、次のお題が来るようだ。
次のお題 お互いの世界について
このお題を見て、さっき浮かんだ疑問を彼女は投げかけてみる事にした。
「あの、にほんじん…?とはなんなのでしょうか?」
彼女の問いかけに驚きつつ彼は答える。
「日本人ねぇ…説明するのちょっと難しいけど、まぁ言うなら働くのが人生の同調圧力のプロかな?あとすぐ謝る。まぁよく言うなら礼儀正しすぎる人達のことかな。」
それを聞き、あちらの世界にもそんな人がいるんだなぁと感心をした。
「丁寧な説明ありがとうございます。他の世界のことを知るのはとても面白いです。」
彼女は少し緊張がほぐれているようだ。膝の上に置いていた手がいつのまにか机の上に置かれ、腕を組み身を乗り出して相手の話を聞いている。リーシンは頬づえをしながら彼女に聞く。
「君の世界はどんな感じ?」
すると全く間をおかず彼女は喋り出した。
「私の世界は…緑が豊かで沢山の王国があって、魔法を使える人は魔法を使っててとっても良い世界です!」
そう明るく言った後、どんどん彼女の顔は暗くなっていき暗めのトーンで再び話し始めた。
「でも、最近幻影獣っていう怪物に世界が荒らされて…世界はもうめちゃくちゃで… 仲間とも離れ離れになっちゃってて…」
彼女は今にも泣きそうな顔で話している。
すると彼女ははっとして
「すみません。私ばっかり話してました!リーシンさんの世界はどんな感じなんですか? 」
その問いにリーシンは少し考えながら答える。
「うーん、そうだなぁ…化け物はいないし特別な力を持っている人間がいる訳でもない、法律があって社会があるだけの面白みの無い普通の世界だよ」
とてもメリアは興味津々でリーシンの話を聞いている。
「魔法も無いし、化物もいない世界かぁ!そんな世界があるなんて…」
彼女は目を輝かせている。
ピーピー
また音が鳴った。お題変更だろう。
次のお題 どちらが強いか
彼女はお題を見て驚いた。
「え、どちらが強いか…?えぇ…」
困り果てているようだ。
「ふふ、つまらないお題だね。」
彼は微笑しながらそう言った。
「何故ですか? 」
彼女が不思議そうに疑問を提示すると彼はさも当たり前かのように言い放った。
「生物学的に考えたら男が強いのが当たり前でしょ?」
その言葉に彼女は少しむっとし
「私の方が強いかもじゃ無いですか。私…結構銃の腕には自信があるんですよ?」
と彼女は自信満々に銃を取り出し目の前の彼に銃口を向ける。
「ここで私がこうした時点でもう貴方の負けは確定ですよね?」
自信満々の彼女の様子に微笑みながら彼は彼女の持っている銃を指差し
「ね、君のトリガー部分に何か挟まってるよ。それじゃ撃てないよね。俺が取ってあげるから、貸して?」
と片手を出した。
彼女は彼の言葉を真に受け、銃を両手で手渡した。すると彼はニヤッと笑い彼女の銃を奪い、片手で両手首を掴んで拘束し
「ふふ。君騙されやすいね。」
彼女はしまったという顔をした後リーシンを見上げる。すると彼はメリアの両手を引っ張り顔を近づけ耳元で
「ほらね?こうなっちゃったら、生物学的に強いのは男なんだよ。…今ここで君をどうとでもできちゃうってわけ。」
すると彼は顔を離し、手の拘束もやめて「ふふ、冗談。」と言った。
「え、あっ?え?」
彼女がとても困惑をしているのが見受けられ、彼は可愛いなと思った。するとまたサイレンが鳴り出した。次のお題かと思われたが今回は何だか違うようだ。体が透けていっている。あぁ、元の世界に戻るのかとリーシンは察した。ふと目の前の彼女に目をやると、顔を手で覆い、もごもごと喋り出した。
「また、会えると…いいですね…!」
少しくぐもった声に微笑みながらも彼はその言葉に応対した。
「機会があればまたお話でもしよう。 」
するとあたりが一気に眩しくなり2人は元の世界へと帰っていった。
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