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廊下から飛び込んできたのは相棒の高梨だった。 俺と同じ所轄の刑事で、十年来の相棒だ。
「早く! こっちはもう包囲されてる!」
彼は俺の腕を引き、非常階段へ走らせた。
階段を駆け下りながら、胸ポケットのUSBを握りしめる。
「高梨、何が起きてる?」
「上は“自殺”で片付けようとしてる。佐藤が死んだ理由も、あの映像も全部な」
「じゃあ、さっきのヘルメット野郎は――」
「……警察じゃない。いや、警察“だった”奴かもしれん」
駐車場に飛び出し、パトカーの陰に身を隠す。
だが、次の瞬間。
背中に硬い感触――拳銃の銃口が押し付けられた。
「……すまん、城戸」
低い声。振り返るまでもなく、それが高梨の声だとわかった。
時間が止まったようだった。
「お前……最初から俺を――」
「俺じゃない。家族を守るためだ。USBを渡せ」
高梨の手は震えていたが、引き金にかかる指は本気だった。
そのとき、駐車場の向こうからエンジン音が近づく。
黒いSUVが突っ込み、俺と高梨の間に滑り込む。
ドアが開き、あの“見知らぬ刑事”が姿を現した。
「乗れ! 生きたければ!」
ためらっている暇はなかった。
俺はSUVに飛び乗り、扉が閉まった瞬間、タイヤが悲鳴を上げて回転した。
バックミラーには、高梨がただ立ち尽くす姿が映っていた。
「これで完全に、あんたは“警察に追われる側”だ」
ハンドルを握る男が冷たく言った。
「名前ぐらい教えてくれ」
「……神代(かみしろ)だ。今は、それだけ覚えておけ」
夜の高速道路に車は消えた。
胸ポケットのUSBが、まるで時限爆弾のように重かった。