コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
なろ子が熱をだした。それも高熱。
電話が途中で切れたことに何かあったと思った俺は全力でなろ子の元まで走った。。なろ子は玄関で1人うずくまっていた。
「なろ子!!」
俺が声をかけるとなろ子はふらついた足取りでこちらに寄ってきた。
「…ぁ……」
「無理に喋らないで。部屋連れてくから、」
俺はなろ子をお姫様抱っこして部屋まで連れていく。あの一件以来やせ細ったなろ子はとても軽く、まるで人形だ。
「はぁ……はぁ……」
「……っ」
ベッドに横たわってなお、荒い呼吸をするなろ子。息をするので精一杯といった様子で、目に光がない。
俺にはにょきをみたいな医療知識もないから、出来ることといえば救急を呼んでなろ子の手を握ってあげるくらいだ。こんな時にまでにょきをの名前が出ることに軽い自己嫌悪を覚えると同時に、兄の存在は知らないうちにトラウマになってたのかもしれない、とも思った。
「………っぁ……」
なにか喋った。
俺は顔を近づけ、より正確に聞き取ろうと耳を傾ける。
「……ぃ……の、き…」
朦朧とした意識の中、なろ子が呟いたのは
今は亡き、恋人の名だった。
そりゃそうだよな。俺はなろ子の心の穴が埋まりつつあるなんて思ってたけど、全部俺のひとりよがり。なろ子は結局、俺を通してにょきをを見てたんだ。俺たちは双子だ。顔だけは瓜二つ。きっと俺の顔を見てにょきをと重ねていたんだろう。
俺に見せてくれたたくさんの笑顔も、俺に聞かせてくれた楽しそうな声も、全部全部本当はにょきをにあてたものだったんだ。
わかった瞬間何かが切れた気がした。
「どうしたんですか?なろきゅん」
俺の力でなろ子を笑顔にすることが叶わないから。
「の…き……だぃ…好きぃ……」
「ふふっ…私もだぁいすき」
〝私〟がなろ子のそばにいればいいんだ。