テラーノベル
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「……本当、勝手なことばかり言うな」
頬に添えられたゆうの手に、蓮は自分の手をそっと重ねた。振り払うためではない。ただ、これ以上自分の動悸が相手に伝わらないよう、誤魔化すようにその手を包み込んだだけだ。
「でも、振り払わないんですね」
ゆうは嬉しそうに目を細め、重ねられた蓮の手を握り返してきた。見た目の細さからは想像もつかないほど力強く、けれどどこか愛おしそうに包み込んでくる。
「……お前に力任せで抗っても、またろくでもない手で追い詰められるのが目に見えてるからだろ」
「あはは、正解です。逃げようとしたら、次はもっと困る方法で捕まえますから」
悪戯っぽく笑うゆうの顔は、一見すれば年相応の無邪気な高校生そのものだ。だが、その背後に隠された絶対的な執着心を、蓮は嫌というほど理解していた。
中学時代、誰もが自分を恐れて遠巻きに見ていた。「狂犬」と呼ばれ、拳でしか人と繋がれなかった孤独な日々。そんな自分の過去を知りながら、恐怖どころかこれほどまでに深い情熱を向けてくる奴なんて、後にも先にもこいつだけだ。
(……勝ち目、ねえな)
観念したように蓮が深く溜息をつくと、ゆうは満足そうに微笑み、ゆっくりと重ねた手を解いた。
「今日はこれくらいにしてあげます。先輩、お腹空きましたよね? 帰り、何か食べて行きましょう」
「……お前のおごりならな」
「いいですよ。先輩の好きなもの、全部知ってますから」
そう言って先を歩き始めたゆうの後ろ姿を見つめながら、蓮は苦笑いを浮かべた。かつて誰も寄せ付けなかった元ヤンの少年は、今や一筋縄ではいかない後輩の掌の上で、静かに新しい日常を受け入れ始めていた。
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コメント
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読了しました。手を重ねるシーン、すごく好きです。振り払うためじゃなくて動悸を隠すため、ってところに蓮の不器用な優しさが滲んでて。ゆうの「もっと困る方法で捕まえますから」の台詞も、執着と愛情が混ざっててぞくぞくしました。続きが待ち遠しいです🍀