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手榴弾のピンを抜いたまま、俺は影山を睨みつけた。
雨音がコンクリートに反響する地下駐車場は、一触即発の火薬庫と化している。
「……撃ってみろよ。俺の指が緩んだ瞬間、ここにあるガス車三台が吹き飛ぶ。有毒ガスが地上に漏れ出せば、お前らが守ろうとしてる『綺麗な都庁』も、汚染地帯に逆戻りだぞ」
俺の言葉に、影山の頬がわずかに引き攣った。
組織にとって、この「一掃作戦」はあくまで秘密裏、かつスマートに行われるべき「事務処理」だ。
ここで大爆発を起こし、無差別な汚染を広げることは、奴らにとっても最悪のシナリオだった。
「……全車、供給を停止しろ。狙撃班、待機だ」
影山が無線に低く命じる。
地下へ伸びていた太いホースの振動が止まり、送り込まれていた死の吐息が途絶えた。
「賢明だな、インテリ」
「勘違いしないでください、黒嵜さん。これは妥協ではありません。君という『個』の処理よりも、計画の『完遂』を優先したに過ぎない」
影山が冷酷に合図を送ると、工作員たちが車両を移動させ始めた。
だが、奴らは去り際に、俺の足元へ小さな黒い立方体を投げ捨てた。
「……!なんだ、それは」
「地下の鼠たちに贈る、最後の手向けです。ガスが止まっても、彼らの『居場所』がいつまで持つか……楽しみですね」
影山たちが走り去ると同時に、その立方体が不気味な高周波音を出し始めた。
――指向性エネルギー兵器
地盤を振動させ、人工的に土砂崩れを引き起こす装置だ。
「……野郎!!」
俺は手榴弾を安全な場所へ投げ捨て、再びマンホールの中へと飛び込んだ。
地下では、凄まじい轟音が響き始めている。
「山城!源蔵さん!逃げろ、崩落が来るぞ!!」
激流を逆走し、俺は必死に仲間の元へと向かった。
志摩からの通信が絶叫に変わる。
『黒嵜!逃げろ!奴ら、駐車場の下の支持基盤を破壊した! 新宿駅の西口エリアが……沈むぞ!!』
地上のビル群が揺れ、夜の新宿に巨大な地割れが走り始めた。