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ガンッ、と鈍い音が玄関に響く。
「なんだよ、その顔。親戚がわざわざ遠出してお前の顔見に来てやったってのに、冷てぇなぁ」
「……何しに来たんだ」
「何しにって……親父に言われてさ、お前の様子を見てこいって言われたんだよ。……へぇ、何その格好? 随分と浮かれた恰好してんなぁ。もっとババアの世話で疲れ果てて、死人みたいな顔してるかと思ったのに。……そういや、あのババアはどうしたんだ? 姿が見えないけど」
母を「ババア」と呼び捨てにする聞くに堪えない物言いに、胸の底から煮えくり返るような苛立ちが募る。
「君と話すことは何もない。用が済んだんなら、さっさと帰ってくれ」
「はぁ!? せっかく人が来てやったのになんだよ、その態度は! 相変わらず上から目線でエラそうな奴……っ。……ちっ、まぁいいや。お前さ、アイドル時代の貯金、まだ山ほどあるんだろ? あのババアが毎月うちに振り込まなくなった分、お前がまとめて払えよ」
どこまでも身勝手すぎる要求に、柊吾は指先が白くなるほど拳を強く握りしめた。
「断る。あれは母さんが勝手に君たちに渡していたものだ。僕には一切関係ない。それに……あの時も言ったはずだ。君たちのような血も涙もない金の亡者と親戚でいるつもりはないって。僕たちが苦しんでいるときにせせら笑っていた君に渡すお金なんて、一円もないよ。今更親戚面するのはやめてくれ。迷惑だ」
震えながらも絞り出した拒絶に、翔の顔からヘラヘラとした薄笑いが消え、粘つくような嫌悪感が浮かび上がった。
「チッ……ただのATMのくせにエラそうにしやがって。親父も馬鹿だよな。フリだけでもいいからコイツにいい顔しとけばよかった、なんて日和りやがって……」
吐き捨てるように呟くと、翔はドアに体重をかけ、さらに室内へと強引に押し込もうとしてくる。ドアの隙間から滑り込んでくる威圧感に、柊吾の背中に冷や汗が伝った。
「……これ以上居座るつもりなら、警察を呼びます」
「警察? ハハッ、呼べるもんなら呼んでみろよ! どうせできっこないくせに」
翔は鼻で笑うと、ニヤニヤと顔を近づけて嘲笑した。
「お前が世間の目を何より気にしてるってことくらい、お見通しなんだよ。今警察なんて呼んで騒ぎになったら、また週刊誌におもしろおかしく、あることないこと書きたてられるぞ? 『落ちぶれた元アイドル、身内と金銭トラブル』ってな。……まぁ、あれから四年も経ってりゃ、お前の顔なんて誰一人覚えてねぇかもしれねぇけどさぁ」
「……っ」
過去のトラウマがフラッシュバックし、柊吾の足がすくむ。エゴサの恐怖、無責任な誹謗中傷、そして自分を拒絶した親族たちの冷たい目。呼吸が浅くなり、視界がぐらりと揺れたその時だった。
コメント
3件
マジであいつ(翔)殴りたい((( うちの柊吾様に色々言いやがって💢(( もし私だったら即殴ると思います!!(( 頑張って作品書いてください!!!!✨️
かんなさん、第59話読了です。翔の「ATMのくせに」という台詞、ゾッとしましたね…。柊吾が震えながらも拒絶し、それでも過去のトラウマに押し潰されそうになるラストが胸に迫ります。警察を呼ぶと言っても嘲笑され、選択肢を奪われたような閉塞感。読んでいるこちらまで息苦しくなりました。それでも柊吾が一歩も引かなかった姿勢に、静かな応援を送りたくなります🕊️