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食堂を後にした私たちは、意気揚々と妃殿下の私室へと帰還した。 扉を閉めた瞬間、アンナが小リスのような瞳をキラキラさせて飛び跳ねる。
「お嬢様、殿下のあの顔!……もう、笑っちゃいますね!」
「ふふ、そうね。人前であんなにむせるなんて、殿下もまだまだだわ」
私はソファーに深く腰掛け、不敵な笑みを浮かべた。
「さてアンナ。今夜もあのチョロ殿下を骨抜きにするわよ」
その時、部屋の扉がノックされた。現れたのは、カイル殿下の侍従。その手には、仰々しくリボンがかけられた箱が捧げられている。
「殿下より、妃殿下へお届け物でございます」
「……お届け物?」
いぶかしげに受け取ったアンナが箱を開けると、中から現れたのは――。柔らかく、ランプの光を透かすほど繊細な、最高級のシルクとレースで作られたネグリジェだった。いや、これはもはや「布」と呼んでいいのか怪しいレベルの代物だ。
「ひゃあああ!? な、なんですかこれ、布が……薄すぎですよ! お嬢様、これ、着てないのと一緒じゃないですか!」
「……あら」
添えられた手紙には、カイル殿下の硬い筆跡でこう記されていた。
『昨夜の君は……衣服の着脱に手間取っていたようだったので、公務の効率化を鑑み、より実用的な寝間着を用意した。今夜はこれを着用するように命ずる』
(実用的な寝間着、ねぇ……。夜の営みまで軍事作戦か何かだと思っているのかしら)
あまりの必死な言い訳に、呆れを通り越して感心してしまう。私はその「スケスケ」なネグリジェを指先でつまみ上げた。
「宝石類でも届くかと思ったけれど……。まあいいわ。これで、アンナと選んだ勝負下着(ランジェリー)の上に羽織るものができたものね。選ぶ手間が省けたと思えば、これもアリかしら」
「お嬢様、ポジティブすぎます! でも……うふふ、絶対今夜、殿下びっくりして固まっちゃいますよ!」
アンナは届いたばかりのネグリジェと、私たちが用意した黒のランジェリーを並べ始めた。
アンナに調べさせたところ、王城の宝物庫には皇室所蔵のお宝が沢山眠っているらしい。
ちまちまと宝石をくすねるより、一生遊んで暮らせる高価なお宝をゲットし、田舎で隠居生活を送る方がてっとり早い。
(いいわ。望み通り、今夜はたっぷり『効率的』に可愛がってあげる。……その代わり、宝物庫のお宝はいただくわよ、殿下♡)