夜の王宮。静寂に包まれた寝室で、私はベッドの上で図鑑をめくっていた。王室所蔵の宝物の中で、どれが最も持ち運びやすく換金性が高いかを精査するためである。
そこへ、カイル殿下が入ってきた。
「……夜更けに読書とは、珍しいな」
「あら、殿下。私、こう見えて読書が趣味ですの。……とても有意義な『お勉強』(どのお宝をいただくかの品定め)をさせていただいておりましたわ♡」
ベッドから私が立ち上がると、殿下はあからさまに視線を彷徨わせた。
「殿下、ご命令通り『必要物品』を身に着けましたわ♡いかがかしら?」
《……なんだ、その破壊的な格好は。昨日俺が選んだ寝間着──透き通るような生地の向こう側に、肌が、彼女の輪郭が……。視線を逸らさなければならないのに、釘付けになって動けない……っ》
カイル殿下が、余裕のない手つきで私の肩に触れる。昨日自ら贈った「実用的な」寝間着を脱がせようとするその指先を、私は優雅な動きでそっと制した。
「あら、殿下。そのように急いでは、せっかくのお疲れが取れませんわ」
「……何だと?」
「……私、本で読みましたの。マッサージの仕方を。今夜は殿下をたっぷり癒やして差し上げたいのです。……まず、こちらに横になってくださいませ?」
私は彼をベッドにうつ伏せにさせると、小瓶に入ったオイルを首筋から背中へとたっぷりと垂らした。逞しい背中を、手のひらでなぞるように丹念に解きほぐしていく。
《冷たい……。いや、熱いのか……? 背中に落ちた滴が、火種のように熱を持って広がる。彼女の掌が肩から腰へと滑るたび、筋肉が強制的に溶かされていくようだ……》
「では、次。仰向けに……なってくださる?」
促すと、殿下はもう抵抗する意志すら失ったような瞳で私を見上げた。私はオイルを足し、わざと腰の低い位置……鼠径部ギリギリまで、指先を滑り込ませる。
《おかしい。身体が、不自然なほど火照る。彼女の吐息が掠めるたびに、心臓の音がうるさくて破裂しそうだ。……俺はどうしてしまったのだ……》
(ふふふ。アンナに用意させた媚薬入りオイルが、殿下の体温でじわじわと効いてきたわね)
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