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第6話 最年少キャプテン
五月の終わり。新緑だった木々は、いつの間にかすっかり濃い緑色になっていた。
ちなみにお悩み相談部は最近ちょっと知名度が上がって少しずつ相談者がくるようになった。
まぁ「勉強がわからない!」「彼女にフられたからはげまして!」「かわいい子探してて…」そんな軽い(?)相談ばっかりなんだけど。
気分転換に窓を開けると、少し暑くなってきた風が部室の中へ入り込んでくる。俺は机に座りながら、窓の外を眺めていた 。
💚「……暑くなってきたなぁ」
💛「まだ六月にもなってへんのに何言っとんねん」
向かいの席で、たっつんが呆れたように言う。
💚「だって暑いじゃん!」
💛「知らんがな笑」
💚「なんでこの部室にはクーラーがないわけ〜?」
そんなくだらない話をしていると――。コンコン。
💚💛「?」
扉を叩く音がした。
💚「どうぞー!」
扉が開く。そこに立っていたのは、少し焦ったような顔をした一部赤毛がはいった黒髪の男の子だった。
❤️「……ここ、なんでも相談部で合ってますか?」
💚「うん!そうだよ!」
俺は立ち上がる。
💚「相談?」
❤️「はい……」
男の子は少しだけ迷ったあと、部室へ入ってきた。俺は椅子を勧める。
❤️「ありがとうございます」
男の子は椅子に座った。よく見ると、見覚えがある。確か、二年C組の――。
💚「……ゆあんくん?」
❤️「え?」
💚「バスケ部の!」
❤️「あ、はい。そうです」
💛「バスケ部……」
たっつんが少し考えるように呟く。
💛「もしかして、2年で部長になった?」
❤️「……はい」
俺は目を丸くした。
💚「え!?二年生なのに部長なの!?」
❤️「まぁ……そうです」
💚「すごっ!」
思わず声が出る。バスケ部の部長。二年生なのに。それだけでも、きっとかなり頼られているんだろう。だけど――。ゆあんくんは、少し困ったように笑っていた。
💚「それで、今日はどんな相談?」
❤️「……実は、体育祭のことで」
💚「体育祭?」
❤️「はい」
もうすぐ体育祭。最近はどのクラスも、体育祭の 練習や準備で忙しくなっている。
❤️「今年、クラス対抗リレーに出ることになって……」
💛「おお」
❤️「俺、アンカーなんです」
💚「アンカー!?」
❤️「はい」
それはすごい。クラスの最後を任されるってことは、それだけ期待されているってことだ。
💚「じゃあ、足速いんだ!」
❤️「まぁ……普通よりは」
💛「いやいや、バスケ部の部長やっててアンカー任されるくらいやったら、普通ちゃうやろ笑」
❤️「……そうかな」
ゆあんくんは笑った。でも、その笑顔はどこか無理をしているように見えた。
💚「……?」
俺は少しだけ首を傾げる。
💚「もしかして、それが悩み?」
❤️「……」
ゆあんくんは黙った。そして、少し俯く。
❤️「……期待されるのが、ちょっとしんどいんです」
💚「……」
💛「……なるほどな 」
❤️「バスケ部でも、みんな俺を頼ってくれて」
ゆあんくんはゆっくり話し始めた 。
❤️「体育祭でも、絶対勝ってくれって言われてて、別に、頼られるのが嫌なわけじゃないんです。むしろ、期待してもらえるのは嬉しい」
その言葉を聞いて、俺は少しだけたっつんを見る。少し前の、たっつんの相談を思い出した。頼られるのは嬉しい。
だけど――。 一人で抱えるのは、苦しい。
❤️「でも……もし俺が負けたら、みんなに申し訳ないなって」
💚「……」
❤️「俺がアンカーだから、俺が頑張らないとって思って」
俺もたっつんもしばらく黙っていた。
体育祭。クラス対抗リレー。アンカー。たくさんの人からの期待。きっと俺たちが思っている以上に重いんだろう。
💚「……そっか」
❤️「はい」
💚「じゃあさ」
俺は笑った。
💚「一回、体育祭を楽しむことから考えてみない?」
❤️「……え? 」
💚「体育祭って、勝つためだけにあるんじゃないでしょ?」
💛「まぁ、確かにな」
💚「みんなで応援したり、競技したり、お昼食べたり!」
💛「お前、さては食べることしか考えてへんやろ」
💚「だって今年キッチンカー来るんだよ!?」
💛「そこなん!?」
❤️「……ふふっ」
ゆあんくんが小さく笑った。
💚「ほら!笑った!」
俺は嬉しくって笑顔になる。
❤️「え?」
💚「さっきまでずっと難しい顔してたじゃん」
❤️「……そうでした?」
💛「してたしてた」
❤️「そっか……」ゆあんくんは少し考える。
❤️「楽しむ、か…」
💚「うん!」
💛「でも、悩みを解決するなら、それだけじゃ足りへんな」
💚「あ、確かに」
たっつんが俺を見る。
💛「体育祭当日までに、なんとかしよ」
❤️「……!」
💚「もちろん!」
俺は拳を握った。
💚「なんでも相談部に任せて!」
💛「お前、まだ何も思いついてへんやろ」
💚「……」
💛「図星やん笑」
❤️「あははっ」
今度は、さっきよりも自然な笑顔だった。
❤️「よろしくお願いします」
💛「うん!ゆあんくんは絶対笑顔のほうがかわいい!こちらこそよろしくな」
💚「うんうん、そんな難しい顔しないで!よろしく!」
こうして、体育祭に向けた俺たちの相談が始まった。窓の外では、夏を待つように木々の葉が揺れていた。
中学生活最後の体育祭まで、あと少し。どんな体育祭になるかな?体育祭が待ち遠しい――。
【5月下旬】
ここまで読んでくださりありがとうございます。 今回はついにゆあんくん登場です。お悩み相談部もたっつんのチラシと噂の力でまあまあひろまってきました。ゆあんくんの悩みは少しだけたっつんの悩みに似ています。❤️お悩み&体育祭は4話分の長いお話になります。
コメント
1件
第6話、読み終えました〜! ゆあんくん、初登場ですね!バスケ部の最年少キャプテンでアンカー、期待の重さがすごく伝わってきました……「しんどい」って本音を言える場所があってよかったなあ。主人公の「楽しむことから考えてみない?」という返し、すごく優しくてじんわりきました。たっつんとの掛け合いも相変わらず絶妙で、最後にゆあんくんが自然に笑えたシーン、ほんとによかったです🌷 次の体育祭編、楽しみにしてます!
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