テラーノベル
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病院の自動ドアが開いた。
元貴は、力の抜けた歩き方で外に出てくる。
背中が少し丸まっていて、視線は地面。
右手には、折れ目のついた診断書。
その姿を見つけた瞬間、若井が走り出した。
「元貴!」
涼ちゃんも後を追う。
二人が駆け寄った時、元貴はやっと顔を上げた。
「……来ちゃったんだ」
強がる声だったけど、もう保っていなかった。
若井が何も言わずに抱き込む。
涼ちゃんも反対側から腕を回す。
元貴の体は、思ったより軽かった。
「……俺さ」
診断書を握る手が、震える。
「もうどうしよう」
声が一気に崩れた。
「歌えなくなったらどうしよう……」
「聞こえなかったら……
俺、何すればいいんだよ……」
最後は、言葉にならなかった。
声を押し殺そうとしても、涙は止まらない。
涼ちゃんが、ゆっくり背中を撫でる。
落ち着かせるように、低い声。
「大丈夫」
「今は答え出さなくていい」
元貴は首を振る。
「大丈夫じゃない……」
「俺、音楽しか……」
涼ちゃんは被せない。
ただ、一定のリズムで言う。
「よしよし」
「一旦、家帰ろうか」
「落ち着いてから、三人で話そう」
元貴は抵抗する力もなく、頷いた。
若井が先に車へ向かう。
「俺、運転する」
後部座席に座らされると、
元貴はすぐに俯いた。
涼ちゃんが隣に座り、肩を抱く。
元貴は必死に息を整えながら、
小さく言った。
「……怖い」
涼ちゃんは即答する。
「うん」
否定しない。
「怖いよね」
「でも、きっと大丈夫」
車が静かに走り出す。
運転席の若井が、バックミラー越しに一度だけ確認する。
診断書は、まだ手に握られている。
でも今は、
誰かに支えられて、車に揺られていた。
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