続きですん
犯人を探すこと2日。
結果を言ってしまえば、情報が全くない。
野田「クソが……まったく尻尾を出さねぇな…」
永瀬「その辺にいた半グレとかにも(全員絞めて)片っ端から当たりましたけど……全然知らねぇっぽいですわ」
天羽組の持っているツテは使えるだけ使ったが、それでもまだ見つからないのだ。
情報がないことに腹を立てていると、俺の携帯が鳴った。
伍代だ。
俺はすぐさま電話に出る。
伍代『あ、旦那?約束通り犯人の情報は素っ裸にしてきたよ』
和中「…!本当か」
俺は皆に視線で合図し、スマホをスピーカにして全員が聞けるようにした。
伍代『ちょっと複雑で胸糞なんだが…』
そう言って伍代は語り出す。
組員は全員齧り付くようにスマホに詰め寄った。
伍代『まず小峠の旦那を襲った実行犯は…サツだ。しかも汚職警官ね』
その言葉に全員額に眉間に皺を寄せた。
須永「サツだァ…?」
全員予想だにしていなかった存在に驚愕する。
伍代『で、めんどくさいのはここから。裏にはとある極道組織がついてる。千葉県の瞠若会ってとこ』
千葉の瞠若会。
その名前に組員は全員聞き覚えがあった。
数週間前。
小峠「はぁ……」
青山「どうしたちゃんかぶ、なんかあったか?」
事の発端は、華太がよくため息をついていた事だった。
小峠「それが…最近見回りに行くたびに、所々で千葉の瞠若会っていうとこの構成員が俺を待ち伏せしてまして。目的を聞いたら、俺を瞠若会に入れたいって言うもんですから…」
その言葉には皆過敏に反応した。
小林「はぁぁ?何だその礼儀知らずぅ。そんなもんぶん殴ってこぉい」
矢部「待ち伏せはちょっと良くねぇなぁ?いっぺん教育的指導を入れるか…」
小峠「そういうことは直接じゃなくて、組と親を通せって言ったんですけど…あっちはまったく聞き耳を持ちませんね」
そう言って深くため息をつく。
工藤「これはすぐに対処する必要がありそうだな…」
阿久津「ああ。そいつらは親の顔を汚してるのに気がついてねぇのか?」
速水「礼儀知らずのバカもいいとこですよ、ホント」
飯豊「俺が居たらその場で叩きのめしてたぞ?小峠の兄貴に失礼なこと言いやがって!」
宇佐美「小峠の兄貴、天羽組を抜けるなんてことないですよね??大丈夫ですよね??」
舎弟達は憤慨したり華太のことを心配したりと様々な表情を見せた。
小峠「馬鹿野郎、そんな不義理な真似するかよ。いくら積まれても俺が天羽組を離れることは無いから安心しろ」
今にも泣きそうな顔の宇佐美の頭をコツンと優しく叩き、華太はまっすぐそう言った。
そう言い切る様子に、組員達が華太に惚れ直したのは内緒である。
伍代『小峠の旦那、瞠若会の奴らに勧誘されてなかった?』
和中「されていたな。ウチも問題視していたが……」
伍代『やっぱりね。奴ら、それに怒ったんだよ』
どういう事だと組員が更に詰め寄る。
伍代『自分勝手な理由さ。小峠の旦那が自分たちのものにならなかったから、殺して、死体だけでも確実に自分たちのものにしてしまえっていうとんでもない理由。ただ自分たちが手を下したら確実に天羽組に狙われるから、汚職警官にありったけの金積んでやらせたって訳。警察なら人の1人や2人殺しても隠蔽は可能だしね。』
伝えられた事実に、組員誰もが殺気立った。
小林「あ゛…?」
香月「……メンヘラにも程があんだろうがよ、ゲス共が…!!」
南雲「救いようねぇなァ……!」
全員が殺気を隠すことなく、額にビキビキと青筋を浮かべる。
伍代『だけど警官共は殺しの技術なんて持ってない。それでも小峠の旦那は天羽組の安全を案じて警察には手を出さないことを分かってた。それをいい事に10人以上で襲撃をかけた。でも警官共は相当バカだったんだろうね。瞠若会の目的は小峠の旦那の回収なのに、それを忘れたんだ。それで伊集院の旦那に拾われたのさ』
全てを語り終えた伍代は一息つく。
伍代『あと、瞠若会は警官たちのミスに怒って、実行犯十数人を全員殺したらしいよ。それでほかの警察官たちが瞠若会を追ってるんだけど、見つかるのは時間の問題だ。瞠若会の粛清に出るなら早い方がいい』
その言葉に野田の兄貴は口を開く。
野田「すまねぇな伍代。思った以上にクソ共だったわ……そいつらのヤサはどこだ?」
伍代『千葉県○○街の三丁目。行けば分かるよ』
野田「ありがとな」
そう言って野田の兄貴は電話を切った。
そして、未だ嘗て無いほどの圧で組員に問う。
野田「お前ら……言いてぇ事は分かってんな?」
無論だと俺たちは無言で頷く。
阿久津「瞠若会とかいうヤツら……全員カタに嵌めてこい。遠慮は要らねぇ、気が済むまで暴れろ」
「「「「承知しました」」」」
部屋に響き渡る一定の機械音。
止まることの無いその音に耳を傾け、じっと眠っている華太を見つめる影が3つ。
速水「小峠の兄貴ーぃ………起きてくださーい…」
華太直属の舎弟である、速水、飯豊、宇佐美だ。
飯豊「空龍堂の大福買ってきましたよー……って、まだ起きねぇよなぁ…」
そう言いながら、机に買ってきた大福を置く。
宇佐美「小峠の兄貴、今他の兄貴たちが犯人をぶちのめしに行ってるんです。…だから早く起きてくださいよ…みんな待ってますよー……」
いくら声をかけても、華太はピクリとも動かない。
速水は華太の右目の包帯の上にそっと手を添える
速水「これ……もう治んないんだよね」
飯豊「ああ…氷室さんが言ってた。あと、ここの頬の傷も残るってさ」
そう言いながら飯豊は、華太の右目の下に出来た裂傷をトンと指さす。
宇佐美「そこも傷が残るんですか…!?」
飯豊「裂傷に毒が入り込んで、その上で犯人共が証拠隠滅に投げた手榴弾の火傷が重なって、どうしても傷が残っちまうんだとよ」
速水「せっかく綺麗な兄貴の顔に傷が残るなんて……」
宇佐美は椅子に座りながら華太の手を握る。
宇佐美「それでも……生きててくれるだけで自分は嬉しいです……!!」
その言葉に速水と飯豊は顔を見合せ、ふっと笑う。
速水「そうだね」
飯豊「今は兄貴が起きるのを待とうぜ」
と、その時だった。
宇佐美「………ぇ、?」
速水「どうしたの?」
宇佐美は突然声を上げる。
宇佐美「今…小峠の兄貴の手が動いたような…」
宇佐美が握っていた華太の手が動いたという。
「ん゛、…………」
その場にいた3人は確かに声を聞きとった。小さいが、華太が微かに声を上げた。
飯豊「兄貴!!!?」
速水「小峠の兄貴!!!」
宇佐美「起きてください!!!」
3人はその好機を見逃すことなく、華太を呼ぶ。
小峠「ぁ゛…………?」パチッ
そして、ついに華太が目を開けた。
舎弟達の目が開き、そこからどんどん涙が溢れてくる。
「「「兄貴ぃぃぃっっ!!!!」」」
目が覚めたと同時、3人は勢いよく華太に抱きつく。(無論傷に触らない程度に、だが)
華太は状況判断がまだ出来ていないのか、目をぱちぱちと瞬かせている。
体に力を入れて起き上がろうとするが、傷が痛むのか顔を歪ませ、瞬時に力が抜ける。
宇佐美「ダメです!酷い怪我なんですから…まだ起き上がらないでください!」
小峠「…何日だ……?あれから、何日経った…?」
自分の状況を整理するため、まずは日数を聞く。
飯豊「軽く2週間程度かと…」
小峠「…ウッソだろ……」
速水「まじです」
自分がそんなに寝ていたのが信じられないと頭を抱えた。
小峠「仕事終わってねぇ…」
宇佐美「今はそんなこと考えないでください!」
だが、舎弟達が最も恐れていた質問をされてしまう。
小峠「ところで……右目見えねぇんだけどどうなってる?」
どう答えればいいのか。
嘘をつくか、正直に答えるか。
to be continued…
コメント
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初コメ失礼します! ちょっと前から見させてもらってるんですがこの作品 主様天才すぎませんか?!キャラ一人一人に気持ちが籠っていて ちゃんかぶも自分で凡人言ってるけどやばいよ何が凡人だよですよ! 主様神作品ありがとうございます