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そこは、閑静な住宅地に佇む大きな一軒家だった。
京本班の6人は、元警察庁長官の自宅に家宅捜索に来たところである。
「すごい、でっか。こんなとこで暮らしてるってすげーな」
慎太郎が無垢な歓声を上げる、その横で、
「俺の家よりちっちゃいな…若干」
大我がつぶやいた。
高地はどちらも取り合わず、インターホンを押す。しかし、応答する声はない。
「留守か?」
もう一度押してみる。結果は同じだった。
「しょうがない。ガサ入れは隣人に立ち会ってもらおう」
大我は早速くるりと踵を返し、向かって左隣の家へ。ついていこうとした4人は、「大人数で行ったら怖がられるだろ」と樹に引き留められた。高地は大我を振り返り、そっちに駆けていく。
大我がチャイムを鳴らすと、今度は「はい」と声がした。
「突然すみません。警視庁の者ですが、少しお時間よろしいですか」
しばらくして現れた小柄な女性は、瞳に不安と戸惑いの色を浮かべていた。高地は優しい笑みを向ける。
「警察庁の高地といいます。こちらは京本。あの、お隣に住んでいる鈴木さんはご存知ですか?」
はい、とうなずいた。
「最近、姿は見かけられましたか」
「いえ…。そんなに親しくもしていませんし」
そうですか、とつぶやく。「それで一つお願いがあるのですが、家宅捜索に立ち会っていただけませんか」と言って、持っていた令状を示した。
女性は「えっ」と驚いた様子だ。
「特段難しいことじゃないです。ただ我々が捜索しているのを、部屋の隅で眺めていればいいだけで」
大我は促し、未だ困惑している女性を連れ、あらかじめ管理会社から借りてきたマスターキーで中へと踏み入る。
6人は手分けして、盗まれたであろう調書を探す。やがて、「ありました!」とジェシーが声を上げて2階から下りてきた。
「書斎のキャビネットの中にありました。鍵はかかってたんですけど」
「え、どうやって開けたんですか?」
驚く慎太郎に、「ピッキングしただけだよ」
あっけらかんと笑う。
「本人は戻ってから探そう。車がなかったから、また追跡しないとだけど」
大我は言った。「ご協力いただき、ありがとうございました」と女性を振り返る。
6人は鈴木邸を辞去した。
警視庁に帰ってくると、「俺がナンバーの追跡します」とパソコンの得意な北斗が手を上げる。
「じゃあ俺手伝います」と慎太郎。
ジェシーと樹も作業に回った。
「大我、ちょっと」
高地が大我の肩を叩いた。そして部屋を出る。
「何?」
高地は答えず歩いていく。不思議そうな顔の大我は、言われるがままついていき、屋上へと出た。
空は曇天だった。重い雲が太陽の光を遮る、薄暗い午後。
「主任がやったんでしょ?」
先を行く高地が突然に振り返った。その手には、拳銃が握られていた。
大我は動じる様子もなく見据える。
そして僅かに苦笑して、スーツの腰に取り付けたホルスターから同じものを取り出した。
「久しぶりだな、主任って呼ばれるの」
銃口が睨み合った。
続く