テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
芙月みひろ
92
#王子
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私は、用もないのに、わざわざシステム部のフロアまで足を運んだ。ガラス張りの会議室。物陰から、中の様子を伺う。
(……陽一さん。会議で発言してる姿も、知的で最高にかっこいい。……でも、さっきはどうしたんだろう。急に腰を押さえて悶絶するなんて)
私は頬に両手を当てた。
(――はっ! もしかして昨夜の夜、ちょっと激しすぎたのかな。今頃逆にガタが来ちゃったのかも……。あんなにフラフラになるまで愛してくれるなんて、やっぱり陽一さんは私の神(推し)……♡)
よし、陽一さんチャージ完了。私は、溢れ出しそうな幸福感(と、さらに強化予定の栄養メニューの献立表)を胸に、社員食堂へと向かった
昼休みの社員食堂。私は、向かいに座る王子谷くんを「背景」……視界に入っていても脳が認識を拒否する「空気」として眺めていた。
「……勘違いしないでよね。今日は陽一さんが会議で予定が合わなかったから、仕方なーく、人助けだと思って座ってるだけなんだから」
「はいはい。白石さんの『春川先輩以外は風景』っていう徹底ぶり、逆に清々しいっすよ」
一人だと「王子ファンクラブ」に囲まれる彼を助け、同時に専務の娘だとバレて寄ってきた逆玉狙いの『ゴミ』たちを、彼の圧倒的顔面スペックで追い払う。互いに利害が一致した、いわば「防波堤ランチ」なのだ。
「というか王子谷くん。会社で陽一さんといる時にゲームの話を長々として、私の貴重な『陽一さんチャージタイム』を邪魔しないでくれる? 本当に邪魔なのよ」
「いや、春川先輩は俺のゲームの師匠なんすよ! そもそも白石さんはいいじゃないっすか、家でも会えるんだし! 会社くらい俺に譲ってくださいよ!」
「はあ!? 家はプライベート、会社はオフィシャル! どっちも私のエリアなの!私の推し(神)に気安く話かけないでくれる?」
「……白石さんくらいっすよ、俺にガチな殺意を向けてくるの。でも、それが逆に安心というか。他の女は俺の顔しか見てないけど、白石さんは俺をただの『邪魔な障害物』としか思ってないっすよね」
「障害物? 私はその顔を見ても、『動く石ころ』くらいにしか見えないから」
私が冷たく言い放つと、王子谷くんはなぜか、嬉しそうな表情で口角を上げた。