テラーノベル
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俺の好きなヤツには 、好きな後輩がいて 。
両思いなはずなのに 、お互いが遠慮をするから
いつまで経っても結ばれることの無いふたり 。
だから 、横から掻っ攫ってやろうと思って
その想いを伝えてみせた 。
「ごめん 、勘右衛門 。俺は喜八郎が好きだ 。
勿論勘右衛門も 、好きだけど…..
自分の気持ちには逆らいたくない 。」
でもよ 、好きなやつにそこまで言わせてまで
付き合って欲しいなんて言えるわけないだろ?
だから 、俺は…
兵助が笑って幸せでいれるなら 。
お前の親友で居続けるし 、
兵助と喜八郎の永遠を願い続けるよ
僕には 、好きな先輩がいた 。
五年い組 火薬委員会委員長代理 久々知兵助 。
彼を好きになるのに 、時間は要らなかった 。
彼が作る豆腐料理は 、いつも輝いて
僕の心も胃袋も持ってかれてしまいそうだった
実習のときのあの顔はとてもかっこよくて
僕に向けてなら良かったのに 。と思ってしまった
僕を見つければ 、真っ先に手を振って
こちらにやって来てくれて 、
やぁ綾部って微笑んでくれる 。
他にも色々言ってやりたいことはいっぱいある
先輩のいいところもわるいところも 。
でもね 、聞いて 。
久々知先輩は 、同じ組で同室の尾浜勘先輩と
すごく距離が近いんだ 。だからきっとね
おふたりはトクベツな関係なんじゃないかなって
そうなったらさ 、邪魔はできないじゃない 。
でもね 、そんな先輩方を見てるとね
心臓がぎゅっと摘まれてる感じがするの 。
これって 、病気なのかな?
……聞いてるの?滝 。
「…..聞いている 、聞いてはいる。」
『…なにそれ 』
「なにそれ 、じゃない阿呆!
毎日毎日似たような話ばっかして 、
いいか!お前は久々知先輩が好きなのだろう?
なら 、好きだから嫉妬したり動悸がするのだ 。
毎晩毎晩そんな状態じゃ 、こっちが持たん 。
さっさと想いを伝えてみてはどうだ!?」
そう 、滝が言った 。
思いっきり布団から飛び起きて 、
肩を上下に揺らしながらそう言った滝は
そのあとは僕をじっと見下ろして 、その返事を
今か今かと待ち構えているように思えた 。
でも 、僕はそれじゃあだめなんだよ 。
この思いだけは 、先輩に届いちゃいけないの 。
でも 、ずっと僕の心の中に留めとく 。
なんて僕にはできっこないから 、
こうやってお前にぶちまけているんだよ 。
まぁ 、興奮状態のお前に
何を言っても聞かないだろうから
その日はもう寝るという選択を取った 。
意識が途絶えようとした時
頭に響くような声で「話途中に寝るなァッ!」
みたいな声には無視を決め込んだ 。
上級生いろはで縦割り班での実習だった 。
俺と勘右衛門は 、この二学年に挟まれて
問題なくやり過ごせるだろうか 。
いや 、無理だろう 。
そんな当たり前なことを考えていると 、
ぞろぞろと何やら眩しい集団が現れた 。
「今回の実習は絶対私達ろ組が勝つ!!」
「何を言うか三木ヱ門!
勝つのは勿論い組の私達だ!なぁ喜八郎?」
「あれぇ?喜八郎は?」
「守一郎〜おんぶしてよ 。」
「えぇ?やだよ 、体力使っちゃうじゃん!」
「僕だってもう疲れちゃったんだもん〜」
「あ “っ!おいアホハチロウ!!
守一郎を困らせるんじゃない!!」
「はぁー?困らせてないけど 、滝夜叉丸ウザ」
「あーはっは!!い組は早速喧嘩か??
滑稽だな!!なぁ?守一郎!」
「もー!喧嘩しないの!!
ほら 、各組の場所へ行った行った!」
タカ丸さんにそう言われれば
はーいと可愛らしい返事をして 、
見た目からして浮世離れした後輩が
俺の目の前に現れた 。
「 久々知せんぱい 」
そう 、俺の名前を呼んでくれた気がしたけど
きっと俺の耳が都合よくなっただけだと
自分に言い聞かせていれば 、
横からぐいっと勘右衛門に肩でぶつけられ 、
どうやら本当に呼ばれていることに気づいた 。
でも 、その時の顔は 、
さっきの様な柔らかい顔から少し変化していて
なにか辛そうに顔を歪ませていた 。
そういえば 、さっき疲れたとか言ってたな 。
もしかして 、体調が悪いのか!?!
『あ 、綾部っ!具合が悪いのか??!』
「……はい?何の話ですか 。」
『….あ 、なんでもない 。』
「…….そうですか 。」
そのあとの会話は 、覚えてられなかった 。
それほど恥ずかしいことをしてしまったから 。
でも 、飽きたのか知らないが
あの後すぐ綾部が平の元へ帰ったのだけは
俺の記憶に鮮明に残っている 。
「ふは 、抜け殻状態すぎだよ 。大丈夫か?」
『…..勘ちゃん〜 。』
俺は勘右衛門に抱きついた 。慰めて貰いたかった
「わっ 、/ /お、おい兵助??
喜八郎が見たら誤解されちゃうぞ、??」
『…..良いんだよ 、どうせ俺を見ていないから』
そんなことをいいながら 、
綾部が見ていたらどうしようと思って
後ろを振り返ってみた 。
すると 、なんと運が悪いのか
俺らの事をじっと見つめ 、
心做しか睨んできているようにも思えた 。
なんで 、綾部がそんな顔をするんだ 。
そう思ったとき 、ひとつ希望が降りてきたが 、
そんなのはすぐに砕け散った
「お早う 、喜八郎 。」
「 立花先輩 」
『…..なっ…』
目の前で広がっているのはこうだ 。
立花先輩が綾部を呼んだかと思えば 、
綾部は立花先輩に近ずき
そのまま頭を撫でられていた 。
そんな二人の様子を 、当たり前かのように
互いの同室たちが呆れた顔で話をしていた 。
「はぁ 、相変わらずだな 。
お前らは距離が近いんだよ 」
「そうだぞ喜八郎!
先輩に対して少々距離感というのをだな….」
「別にお前らには迷惑かけていらんだろうに
そんなに言われれば 、喜八郎が可哀想だろう」
「潮江先輩ひどいですよぉ」
「可哀想な喜八郎 、おいで 。」
「あーもううるせぇッ!!」
「ぼうっとしてないで助けてくださいよ!?
尾浜先輩!久々知先輩!!」
「あっごめんごめーん!今行くよ」
『…..今行く。』
平に助けを求められ 、そこでタイミングよく
先生方がいらっしゃり 、いよいよ実習が
始まろうとしたおかげで
俺らが巻き込まれることは無かった 。
でも 、綾部を抱く立花先輩の顔は
誰がどう見ても雄の顔をしていたし
綾部も 、満更でもなさそうだった 。
その後の実習は地獄そのものだった 。
まさに生き地獄のようなもので 、
立花先輩と綾部の距離感に目眩がしたし
少し平との距離も羨ましく思った 。
でも 、勘右衛門が居てくれたお陰で
何とかやり過ごす事ができていたと思う 。
そんな感じで 、俺が嫉妬混じりなことをすれば
毎回のように勘右衛門が話を聞いてくれた 。
いつしか 、それが日常かされていって
喜八郎が誰かと話していても
どうせ後で勘右衛門が聞いてくれる筈だ 。
って甘えるようになっていた 。
でも 、それがいけなかったんだって
気づくのに 、俺は遅すぎたんだと思う 。
でも 、そんな時間ですら 、神様はくれなかった
その日は 、予算会議の日だった 。
いつかの予算会議から金楽寺で行うことになった
各委員会が躍起となって予算を貰う
いわば合戦とも言える行事なのだ 。
時は過ぎ 、皆が金楽寺に着くと
いよいよと予算会議が始まった 。
六年生方のいる委員会に先を譲っていれば
立花先輩が一番に立ち上がった 。
「文次郎 、一番は私達作法委員会からだ」
「何処からでもいいわ 、はよしろィ….」
そうして 、作法委員会の予算会議が始まった
「して 、文次郎」
「……なんだ 、仙蔵 。」
「なぜこうも予算が減らされている??」
「….言わせてもらうが 、
少々要らないものを買おうとしているだろう。
そんなのに当てるほどの金はないんだぞ」
「ほう?どれが要らないというのか言ってみろ」
「あぁ言ってやるさ 、まずは____ 」
もうそこからはふたりの言い合いだった
然し 、言うことを一切曲げない潮江先輩
とうとう立花先輩が痺れを切らし 、
焙烙火矢を手に遊び出した頃だった 。
「お 、おい喜八郎!
立花先輩を止めてくれないか!」
「なんで ? 三木ヱ門 、
これは予算会議なんだよー?」
「今にも宝烙火矢を投げ込まれそうで怖いんだよ!
一度生計を立て直してからじゃないのか?!」
「んー 、確かにそうだね」
委員長達の直属の後輩達の交渉によって
一度 、言い争いは収まろうとしていた 。
「立花先輩〜?落ち着きましょうよぉ」
「 喜八郎 。」
「はっ 、‘’ お前の喜八郎 ‘’ はこう言ってるが?」
「………..後で覚えておけ 。
まぁいい 、次の予算についてだが___ 」
どんどんと次の予算について
話し合いが進んでいたけど 、少し待って欲しい
お前の喜八郎って言わなかった?
ほら 、横見て見てくださいよ 。
田村もびっくりしてますよ 、こっちだってほら
上級生みんなあんぐりしちゃって 。
それに 、俺だってそのひとりだ 。
潮江先輩がそう言うのにはきっと 、
普段からお部屋で立花先輩が
そう話しているのだろう 。
そんなの………そんなのってさ 、、
そうふつふつと怒りが湧いてくる時 、
今度は大きな声が響き渡った 。
「あ ” ー !!気が散るッ!!」
「っ…潮江先輩 、声でかいです…..」
「おい文次郎 、喜八郎の耳が痛くなるだろ
近くででかい声を出すな 。」
「はァ!?!元はと言えば仙蔵お前なぁ!?
喜八郎の太腿ばっか触って変態親父かお前は!
喜八郎も喜八郎でそれを許すな!
そしてお前も仙蔵にもたれるな甘えるな!!」
「えぇ〜?潮江先輩 、羨ましいんですか?
いいですよ?予算くれたら甘えてあげます」
「予算は欲しいが 、それは妬けるぞ喜八郎 。」
「やらんし要らんわバカタレィ!!」
「わー潮江先輩怒ったぁ」
「ふ 、シワが増えるぞ 。加齢臭 。」
「クッソ 、覚えとけよお前ら!!」
そんな会話を聞いて 、みんなはやれやれって
聞いているけど 、俺はそれどころじゃなかった
確かに 、よく見ていれば
立花先輩の手は綾部の太腿にあって
綾部も綾部で立花先輩の肩に寄りかかっていた
きっと 、あれがふたりの普段の姿なんだろう
恋人であってもなくても 、もうどうでも良くて
きっともう俺には 、あの人を越えられない 。
そう 、気づいてしまってはもう遅かった 。
予算会議が終わった後から
兵助を見ることはなかった 。
きっと 、部屋でいじけてるんだろうな 。
そう思い 、兵助の部屋でもあり
俺の部屋でもある部屋の前まで来ると
少し身構えるようになってしまった 。
部屋の前まで聞こえる 、鼻を啜る音や嗚咽の音
きっと 、音の正体は兵助だ 。
なんで泣いてるかなんて 、分かりきってる 。
俺も 、その事でイライラをしているから 。
そう考え込んでいれば 、
中から俺の名前が呼ばれたので
とりあえず中に入ることにした 。
「…..勘右衛門 、おれ …… 」
言葉の続きが出てこなくっても
何年一緒にいると思っているのか 。
言いたいことくらい分かってる
わかってるからこそ 、俺はアイツが許せない
俺が好きな兵助は 、
こんなにも綾部喜八郎を好きなのに
喜八郎は別の男に夢中になってるし
でも 、中途半端に兵助にも噛み付いて
正直いって気持ちが悪い 。
ねぇ 、兵助____?
俺ならね 、俺だったらだよ 。
俺なら 、ずっと兵助だけを想ってるし
兵助しか見えてないよ 。
「……泣くくらいなら 、俺にしてよ 。」
その日は 、俺も兵助も
何も考えず 、ただただ泣いていた 。
互いの体を密着させて 、抱きついた状態で 。
でも 、それのおかげか 。それのせいなのか 。
俺の心は変わってしまった _________
「……….俺だって 、兵助が好きなんだよッ!
お前が好きになるずっと前から!!!
俺は 、今のお前なんかに兵助は渡さない 。
仲良くもしたくない 。邪魔 、どいて 。」
続く 。
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