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いつの日からか
久々知先輩が僕を避けている気がした 。
以前の先輩なら 、廊下をすれ違う時だって
ちょっと視界に入っただけでも 、こちらへ来て
話をしてくれたり 、たまに穴に遊びに来た
してくださっていたのに 。
今ではそれが一切無いし 、僕から話しかけても
少し話してすぐどっか行ってしまう 。
ましてやこの前なんかは
聞こえていないのか無視をしてきた 。
そんな久々知先輩が次第にイライラしてきて
最近はムキになって自分から話しかけに
行く感じになっていた 。
今日だってそうだった
『久々知先輩 』
「…….それで?話の続きをしてくれ」
「えぇー?そうだなぁ〜」
今日は 、尾浜先輩とお話をしていた 。
言っちゃ悪いけど 、尾浜先輩は
僕にとって宿敵でもあった 。
だから邪魔をしに話しかけたのもあるけど
でも今のは絶対無視してきたよね?
『…..聞こえてないんですか?久々知せんぱ
「 兵助は聞こえてるよ 」
『…..はい?』
「ちょ 、勘右衛門っ…..」
『意味がわからないんですけど 、』
「そう?同じい組だから 、頭がいいと思ってた
けどそんなことないんだね 。」
『…..今なんて言いました?』
「おい 、ふたりとも辞めろって…..!」
『わっ…..』
「….あっ、綾部….ごめん 、!?」
僕と尾浜先輩が言い争ってると思ったのか
まるで久々知先輩は僕を尾浜先輩から離そうと
してるかのように僕を押し退けて 、その拍子
僕は尻もちを着く形になってしまった 。
……….やっぱり 、おふたりは付き合ってるのかな
きっと 、付き合ってるんだ 。
付き合ってるから 、恋人を守るのは当然だし
僕を選んでくれないのなんてわかっていたのに
目の当たりするのはとても苦しい 。
分かりきっていたことなのに 、やっぱ辛いなぁ 。
諦めなくちゃ 。でも 、それができない 。
だって 、こんなにも久々知先輩が好きなんだもん
「….綾部?」
『…すいません 、取り乱しました 。』
「いっ 、いや…..!こちらこそ 、悪い 。
その 、尻痛くないか?」
『えぇ 、全く 。』
「そうか 、ならよかったよ…..笑」
そう自虐的に笑う先輩を見て 、少し寒気を感じた
それもつかの間 、先輩が口を開いた 。
「……..あ 、綾部…..その 、」
『なんですか?』
「…..これ以上 、俺に関わらないでくれ 。」
『…….え?』
僕 、いま久々知先輩になんて言われた?
関わらないでって 、言ったよね
なんで 、どうして?
僕が一体何をしたっていうの?
尾浜先輩に酷い言葉使いをしたから?
じゃあ 、僕はどうすればよかったの?
はっと我に返ると 、目の前に居たはずの
久々知先輩はどこかへ行ってしまっていた 。
だから 、僕も移動しようとしたとき
「……ねぇ 、ちょっと付き合ってよ」
『…..尾浜先輩 。』
きっと 、久々知先輩の事だろう 。
近頃話すことになるのはわかっていたけど
今はやめて欲しかったな 。
なんて思っていれば 、
前を歩いていた尾浜先輩が立ち止まったのが
わかって 、少し距離を保って僕も止まった
「…..なんだ 、全然悲しそうじゃないじゃん」
『は?なんなんですか 、貴方 。』
「いや 、普通さ好きな人に
関わるなって言われたら泣いて縋るでしょ 。」
『それはっ………ぅあっ…!』
「そんな中途半端な好きで 、
俺の本気を踏みにじんじゃねぇよ!」
いきなり胸ぐらを掴まれたと思ったら 、
気づいたら地面に転んでた 。
急いで立ち上がるものの 、
何かが怖くて声が出なくなってしまった 。
それでも 、尾浜先輩の怒りは止まらなくて
僕は何度も怒られた 。
「……….俺だって 、兵助が好きなんだよッ!
お前が好きになるずっと前から!!!
俺は 、今のお前なんかに兵助は渡さない 。
仲良くもしたくない 。邪魔 、どいて 。」
僕にわざとぶつかって 、
尾浜先輩はどこかへ行ってしまった 。
その瞬間 、腰が抜けたように座り込んでしまった
あんな尾浜先輩先輩 、見たことがなかった 。
それほど久々知先輩が好きで 、
それほど僕が憎かったってことだろう
きっと 、僕みたいな邪魔者は
さっさとどこかへ行くべきなんだ 。
そうすれば 、今みたいな
怖い思いも痛い思いもしなくて済むし
久々知先輩とは 、もうばいばいだけど 。
でも 、尾浜先輩が来ないならなんでもいい
そのまま僕は 、転んだ時に打った拍子で
乾燥していた手がぱっくりいってしまったので
医務室で塗り薬を貰いに行った 。
伊作先輩は 、なにがあったのか聞いてきたけど
穴を掘っていたら血が出てきたって適当いって
薬を塗ってもらうことに成功した 。
あぁ 、でも …. 伊作先輩が言ってたっけ
「何があったかは聞かないけど 、長屋に戻る前に
顔を洗っといで 。目腫れてるからね 。」
言われた通りに顔を洗って 、
少しはましになった顔で僕は部屋へ戻った 。
でも 、開口一番に
滝にどうかしたと聞かれた 。
だから 、少し冗談っぽく
さっきの出来事を言ってみたんだ 。
そうしたら 、滝夜叉丸ってば
そうか。ってだけ言って 、自分を写していた
手鏡を置いて 、僕を抱き締めてきたんだよ
本当に 、これだからお人好しは嫌いなのに 。
久々知先輩だってお人好しだ 。
お人好しすぎるから 、
僕は勘違いしちゃったじゃない 。
『滝 、僕もうせんぱいを好きになるのやめる』
そう 、短く告げればそうか 。ってまた言って
僕をより強く抱き締めた
久々知先輩に関わるなと言われて
尾浜先輩にも釘を刺されたあの日から
滝夜叉丸が言ったのか分からないけど 、
やたらとみんなが僕にくっついてくる 。
僕は知ってる 。
みんなが僕があのふたりと
会わないようにしてくれていることくらい 。
でもさ 、ろ組の先輩方はいいんじゃない?
今日も 、四年生みんなで
朝食を食べることになっていて
食堂に着くとそれぞれメニューを注文した 。
そんな時 、五年ろ組竹谷八左ヱ門先輩が
何やら僕に話しかけようと声をあげていた 。
「おーい!喜八郎!!」
『ん 、竹谷せんぱっ……
「あ!あー!喜八郎見てみろ!
今日はお前の好きなぷりんがあるぞ!!」
「本当だな!そそそうだ!
俺のぷりんやるよ!!」
『え 、やった守一郎大好き 。』
「え!えへへ / /よかったよ!笑」
そういえば誰か僕を呼んだっけ?
「おい 、無視したくせにこのアホ!!
良くもまぁ美味しそうにぷりん食ってるな?」
『んん〜っ 、いたいれふよ 。』
『もう 、なんなんですか ……. 』
「そうですよ竹谷先輩 、何の用ですか?」
「急用じゃないならぁ 、席戻って欲しいな〜」
「いやいや 、なに!俺ただ七松先輩が 、
今日の鍛錬は伊作先輩に止められてできない
っていうのを伝えたかったんだけなんだけど….
最近やたら俺らに喜八郎ガード強くない!?
なあお前ら??!」
そう言った竹谷先輩は 、
一緒に食べていたであろう
五年生の皆さんの方を向いた 。
勿論そこには 、気まずそうなおふたりも居る
そんなおふたりを前にして 、
同じ顔のおふたりも頷き出した
「なんか 、喜八郎を守ってるよね?」
「あぁ 、そう見える 。
兵助さては喜八郎になにかしたのか?」
なんて 、ニヤニヤする鉢屋先輩に
久々知先輩がわなわなとしだした 。
「え 、その反応まさかお前っ……
とうとう付き合ったのか!?!!!!」
「ちょ、ちがっ…」
「おほー!遂にかっ!おめでとう兵助!」
「ずっと心配だったけど 、よかった笑」
なに馬鹿げた会話をしているんだろう 。
呆れて言葉も出てこない 。
でも 、そんな時 、滝夜叉丸が立ち上がった
「何を仰ってるのか理解しかねますが 。
して久々知先輩は尾浜先輩と恋仲なのでは?」
「は?」
「……なんで 、」
慌てた様子のふたりを見てか 、
ろ組の先輩方も少しは冷静さを戻していた
「え 、なになにどういう事?話が見えないよ 。」
「…..まぁ 、どう考えてもいい話じゃないよな」
「滝夜叉丸 、その話詳しく 。」
「えぇ 、もう全てお話してやりますよ 。
うちの喜八郎を泣かせたんですから
しっかりと晴らしてやらないとですからね」
『ちょっと滝 、なんで言うの信じらんない』
「はぁ?!私はお前を思ってッ」
「はいはい 、滝夜叉丸説明はやく!」
「全く…..では説明します 。」
そうして 、滝夜叉丸は
あの日の出来事を全て話しやがり 、
そして 、どうしてみんなが
僕を守ってくれてたのかも教えてくれた 。
「……喜八郎は 、ずっと貴方を想っていたのに!
久々知先輩はいつもいつも尾浜先輩ばかりで 、
ましてやあの日好い人よりも尾浜先輩を
優先したでしょう?
それが何よりの証拠でしょう?!
これ以上ありますか?!無いですよそんなもん!」
『…..滝 、もうやめて 。』
「やめられるものかっ!お前はずっと健気に
思い続けていたじゃないかっ…….なのに 、
なのになんで怒鳴られたりそんな思いせねば
ならなかったのだ!!そんな 、そんなお前を
ただただ見過ごすしかない私は 、
あなた達五年生が許せませんよ!!!」
幸い 、食堂には四年生と五年生しか
居なかったから 、どれだけ滝夜叉丸が叫んでも
他の人に聞かれることはないけど 。
でも 、こんなにも同室に思われてたなんて
ちょっと嬉しい自分もいた 。
滝夜叉丸が泣き崩れ 、
タカ丸さんや守一郎が駆け寄る 。
三木ヱ門だけは 、僕の傍を離れなかったけど
でも 、次の瞬間 。
ずっと黙り込んで居た久々知先輩が口を開いた
「…….喜八郎が 、俺の事…..うそ…だろ?」
「……だって 、それじゃあ俺はっ………」
ふと 、久々知先輩と目が合った 。
やっと 、やっと僕を見てくれた 。
それが嬉しくて 、涙が出そうだった 。
僕って 、気づかないだけで弱虫なんじゃ
ないかって思い始めてしまうのも仕方がない
そうして 、三木ヱ門が僕に
長屋へ戻ろうと言ってくれたその時だった
「滑稽だな 。久々知 。」
「………..立花先輩 。」
「自分の気持ちに素直になれねぇクセにッ
そんなんで喜八郎を
幸せにできるはずがねぇだろ!!
お前と勘右衛門がしたことは 、
それぐらいのことなんだよ!!!!!!」
つづく。
コメント
5件
続き見たいよぉ〜(´;ω;`)
気になるうううううううううううううううううううううううううう