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学校の教室…。
「よっしゃ!羅堂!これで頼む!」
羅堂の前にドンッと置かれたのは、ハードカバーの12冊の本。
置いたのは、学校では有名人の男子だった。
名前は、武田(たけだ)寅吉(とらきち)。
ちょっと古風な名前であるためか、本人は少し嫌がっている。
仲の良い人からは「トラ」と呼ばれていて、巷では喧嘩無敗伝説を持つ『学校の番長』である。
体格は、中肉中背だが、ブレザーとシャツの下は筋肉ムキムキで生傷がいくつか付いている。
見た目は短髪の明るい茶髪、顔はややつりあがった目つきで猫っぽいと言われれば猫っぽい。
「コレって、『ダレンシャン』?武田ってこういうの読むんだね。」
「ダレ…しゃん?ふーん、そういう名前なのか。」
武田は本の一冊を手に取り表紙を見て答えた。
「え?自分で持って来た本を知らないの?」
「いや、どれが良いかわからなくてよ。とりあえず図書委員にオススメ聞いて持って来たんだ。」
「物語知らないとクライマックス行けないんじゃない?」
「大丈夫だって!俺とリュウで行くんだ。余裕よ!」
そう言って武田は羅堂の前の空席に座り、にっこり笑った。
「だろうね。で、リュウ君は?」
「あー今トイレ行って…あ!来た!」
教室に現れたのは、180センチ以上の大柄の男。
名前は、上杉(うえすぎ)龍也(たつや)。
学校の柔道部のエースで幾つもの大会で優勝している『トラ』と同じくらい有名人だ。
見た目は、大柄で怖いイメージがあるが、虫も殺さないくらい優しい顔(よく見たらイケメン)をしているし、実際めちゃくちゃ優しい。
正直モテる。
「お待たせ」
上杉がヒラヒラと手を振りながらこちらへ近づいてくる。
すると、武田がバンッと机を叩き立ち上がった。
「おせーわ!コンニャロ!俺に全部運ばせやがって!」
「悪い悪い。でも、図書委員に聞いたのは正解だったろ?」
上杉は笑いながら言った。
「そーいえばお前、この本の名前聞いた途端トイレ行ったよな。知ってたろ、ぜってぇ」
「知らないよ。本読まないし。名前なんだっけ?」
上杉が本を一冊手に取り表紙を見る。
それを見て羅堂はため息をついた。
「ダレンシャンだよ。なんだ2人とも知らないの?」
「何だよ、悪いのかよ」
武田がムッとなりながらも椅子に座る。
「悪いっていうか、楽しめないんじゃない?これの物語知ってるの?」
そう羅堂が聞くと、武田がニヤッと笑った。
「その辺は図書委員に聞いて抑えてある。確か『めっぽう強い吸血鬼』が出て来て喧嘩して主人公が死ぬ話だろ?」
「その図書委員、誰?」
「まぁまぁ、俺とトラなら大丈夫だって。それに羅堂が助けてくれるんでしょ?」
「まぁ、そうだけど…。じゃあ、早速行ってもらうけど、最後に助言だけするよ。」
「おう!」「お願いします!」
「①物語の中は基本的に英語だろうけど、翻訳された本だから全部日本語に聞こえるし見えるから安心してね。
②物語の中には神みたいな存在が必ずいて、2人が外の世界から来ていることに気付くはずだから、力を貸してもらえるなら貸してもらった方がいいよ。
③最後に、本の世界へ送ることはできても、2人が何処に送られるかは僕にも分からない。だから、気を付けてね。
以上だけど質問ある?」
羅堂はニッコリして、本の順番がしっかりされているか確認しながら綺麗に整頓し始めた。
武田と上杉はちょっとフリーズした後、手を上げた。
「何?」
「何じゃねぇ!それって最悪海の真ん中かも知れねえって事だろ?」
「そうだね」
「もしそうなったら俺ら死んじゃうのか?」
「その前に帰還させるから安心して。もういいかな?」
「いやちょっと…」
「いってらっしゃい♬」
緑色の光と黄色の線状の光が本から発光し、武田と上杉を包み込んだ。
光が消えると羅堂の前から2人は消えていた。
「さて……死んでないよね?」