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「はい、ショートケーキね。あそこのケーキって、ホントすごくおいしいんだよ」
言いながら天馬君が、ケーキの乗ったお皿を手渡してくれる。
添えられたフォークで切ったケーキの一口を食べると、程よい甘さの生クリームが口いっぱいに広がった。
「本当においしいね、このケーキ」
「ねっ、そうでしょ?」
彼がふっと顔をほころばせて、ケーキのひとかけらを刺したフォークをパクリと口にくわえる。
「さっきは飲み物だけだったし。理沙にも、このケーキ食べさせてあげたかったんだ」
「そうなんだね、ありがとう」
その気持ちが純粋に嬉しく思える。
「ううん。僕も、喜んでもらえてよかったって思ってるから」
満面の笑みを浮かべた天馬君が、最後までお皿に残しておいたイチゴを頬張る。
フォークに刺さったイチゴを幸せそうに口に入れる仕草を見ていたら、思わず「かわいいな…」と、感じてしまった。
「……どうしたの? じっと僕のことを見て」
気づけば、彼はとっくに食べ終わっていて、その潤むような大きな目で私を見つめ返していた。
「う…ううん、どうもしない…なんでもないから…」
と、あわてて自分のお皿のケーキに目を落とす。
「そうなの? …ねぇ、もっと紅茶飲む?」
「うん、もう少し……」
ティーポットから淹れてくれた紅茶を飲み、残りのケーキを口に運びながら、不意の気恥ずかしさに見舞われて、なかなか顔を上げられない自分がいた──。