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胸の高鳴りをなんとか抑えて、ようやくケーキを食べ終わり、「ごちそうさま…」と、お皿にフォークを置いた。
すると、天馬君が、
「……ねぇ?」
唐突に、私の顔を上目づかいに見た。
「どうか…した…?」
つぶらな眼差しで見つめられ、再び照れくささに見舞われて、ついと目をそらそうとした。
「あっ…こっち向いてて」
伸びてきた手が頬に触れ、続いて顔が近づいてきたかと思うと、唇の端が不意に濡れた舌先で舐められた。
静まり返る部屋に、ぴちゃりと湿った音が響く。
「なな、なっ…なに?!」
何が起こったのか、一瞬まるで理解ができなかった。
「理沙の口に生クリームが付いてたから…ね」
なんでもないことのように言い、クスリと笑う顔に、
「あ…ああ、そうなんだ…」
と、必死で落ち着きを取り戻そうとする。
そこへ──、
「理沙の唇ってさ、誘ってるよね?」
思わぬ言葉が浴びせられ、落ち着くつもりがまたしても慌てふためいてしまう。
そんな私を見て、天馬君がまた「ふふっ…」と、おかしそうに笑う。
「ねぇ、理沙…キス、してもいい?」
「キ、キス?!」
今や彼の雰囲気に飲まれている私は、自分より年下に見える少年の前ですっかり弱腰になっていた。
「ね、いいよね…?」
薄紅く色づいた唇が近づいてくる。
「ダ…ダメって! なんで、キスなんか…! だって、私からは、誘ってなんかいないし…だから……」
「黙って……理沙」
しゃべる口をふさぐように、チュッとキスが落ちた。
「んっ……」
少年のようだからとあなどっていたのに、キスは信じられないくらいに巧みだった。
いつの間にか、離れない唇に翻弄をされていると、
「理沙……僕が年下だと思って、なめてたでしょ?」
そう図星がつかれ、とっさには言葉が出てこなかった。
「やっぱりね…」
天馬君がまた「ふっ…」と、天使のような笑みを浮かべる。
「……言っとくけど、僕は年下に見えるだけで、君とそう年は変わらないと思うよ? だから少なくとも、君よりは、キスもうまいと思うしね?」
(可愛いだけの少年じゃなかった……)とは感じるものの、あまりうまくは思考は働かず、やっぱり何も言い返せなくて、私はキスされたばかりの唇をギュッと噛むことしかできなかった……。