テラーノベル
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「ははは。まぁ立ち話はこの辺で、どうぞ上がってください」
父が二人を招き入れたことで、この話は終わってしまった。しかし涼は腑に落ちない様子で、キッチンへ行ってからずっとウロウロしていた。
「星……星……」
「星がどうしたの?」
それから十数分後。散らばっていたピースが組み合わされたように記憶が繋がり、涼は両手を叩いた。
「思い出した! 確かに見に行った……」
「へぇー。……どうしたの?」
能天気な母には話が通じてないようだ。涼がキッチンを出て行こうとすると、そこは真っ先に止められた。
「ちょっと、だめよ。お父さんは今大事な話してるんだから」
「分かってる。父さんじゃないよ」
駆け足で階段を上り、普段はあまり使わない居間へ向かった。そこには、思った通り“彼”が居て。怖かったけど勇気を出して、声を掛けた。
「あの……」
「うん?」
声に気付き、読んでいた雑誌を置いたのは創だ。彼は少し不思議そうにしていたが、やがて涼の方へ歩いた。
「あ。成哉君じゃん。どうしたの?」
「あっ……えっと、すいません。思い出したんです。星を見に行ったこと!」
言うと、創は可笑しそうに吹き出した。
「そっか。それわざわざ言いに来てくれたんだ。ありがと」
身長差があるせいか、頭に手を置かれる。恥ずかしいけど、やっと彼の笑顔が見れてホッとした。
「そうだ、じゃああいつのことも思い出した?」
「あいつ?」
「うん。俺の従兄弟。木間塚准」
「…………」
沈黙が流れる。フルネームを出されてもピンとこない……けど……。
「お、覚えてます! もう一人、男の人がいたことは!」
「あははっ、アバウトみたいだけど……覚えてるだけ凄いよ」
涼はそこで初めて彼のことを……彼らの詳しい素性を知った。創と従兄弟の准は東京で暮らしているが、昔はこの町にある祖父の家によく遊びに来ていたらしい。東京にも幾つか事業所を展開しているが、今は准の父が継いでいると。
「へぇー。父さんの上司の孫……じゃあ、創さんも俺の上司みたい!」
「俺はまだ学生だし、君も学生だから。上司と部下なんてめんどくさい関係じゃないよ」
創は冗談半分、残りは諭すように涼に言った。
「俺も准も祖父さん家に来ることなくなってさ。まぁ会いに行かなくても、あの人がしょっちゅう東京に来るからなんだけど」
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