《神話を超える双星の勇者》
第7話:「滅びの兆し」
 
 神託の試練を乗り越え、決意を新たにしたカイ、リナ、セリア、レオンの四人。
神託に抗い、未来を自分たちの手で切り開くため、彼らは次なる目的地へと歩みを進めていた。
 だが、旅路の中でリナは、自分の中に広がる「違和感」に気づき始めていた。
 
 ■ 微かな違和感
 「リナ、顔色が悪いけど大丈夫か?」
 カイが心配そうに声をかける。
 「うん…大丈夫。」
 リナは微笑んで答えたが、その言葉は自分自身を騙すものだった。
ここ最近、胸の奥に黒い靄が渦巻くような感覚があった。
 ——時折、意識がぼんやりとし、身体に奇妙な力が満ちるような感覚がある。
 リナはそれを「自分の努力による成長」だと信じたかった。
だが、その力はどこか不気味で、自分の意志とは違う存在が心の奥底に囁いてくるような気がしていた。
 
 ■ 魔族との遭遇
 そんな中、一行は荒野で魔族の軍団に遭遇する。
 「久しぶりだな、人間ども。神の意志に抗う愚か者よ。」
 その言葉に、カイは剣を構え、レオンは雷刃を握りしめる。
 「ここは通さないぞ。お前たちに未来はない。」
 だが、魔族はリナの方に視線を向けて言った。
 「滅びの影よ…いずれお前は自らの運命に屈するだろう。」
 リナは剣を握りしめながら震えた。
 「違う…私は、兄さんと一緒に未来を切り開く!」
 だが、魔族は嘲るように言い放つ。
 「ならば証明してみろ。お前の力が、滅びを呼ぶものでないと。」
 
 ■ 戦いの中で
 戦いが始まると、カイとレオンが前線に立ち、セリアが後方から魔法で援護する。
 リナも必死に戦うが、ふとした瞬間、胸の奥で「黒い力」が疼く。
 ——もっと力を使えば、すぐに勝てる。
 そんな囁きが耳元に響く。
 「ダメ…私は、自分の力で…努力で勝つんだ!」
 だが、その制御が利かず、リナの剣が漆黒の力を纏い始める。
 カイは異変に気づき、驚愕の表情で叫ぶ。
 「リナ!その力は…!」
 リナは震える手で剣を見つめた。
 「…これって…何?」
 
 ■ 闇に飲まれる
 リナの剣から溢れ出した黒い力は、魔族たちを一瞬で飲み込み、消滅させていった。
 だが、それは敵だけにとどまらず、周囲の大地すらも侵食し始める。
 「…こんなの、望んでない…!」
リナは顔を歪め、必死に剣を放り投げる。
 その瞬間、力は収まり、周囲には静寂が戻った。
 だが、魔族のリーダーは嘲笑を浮かべた。
 「お前は滅びの存在…抗ったところで、いずれその力に飲まれよう。」
 そう言い残し、闇の中へと消えていった。
 
 ■ 疑念と葛藤
 戦いの後、リナは膝を抱えて震えていた。
 「私…本当に滅びの存在なの…?」
 誰もが言葉を失った。
カイは迷いながらも、リナの傍に寄り添った。
 「リナ、お前は大丈夫だ。絶対に、そんな存在じゃない。」
 だがリナは、震える声で答える。
 「でも、私…魔族を…私があんな力を使ってしまったのは事実だよ…」
 セリアは静かに呟く。
 「その力は…神の力に近いもの。リナ、その力はおそらく…神の意志によって与えられたものだわ。」
 レオンは眉をひそめ、問いかけた。
 「それでも、リナは抗い続けるか?」
 リナは、震える身体を必死に抑えながら答える。
 「私は…兄さんと一緒に戦いたい。…努力して、自分の力で未来を切り開きたいの。」
 
 ■ 仲間の支え
 その言葉に、カイはリナの手を取り、強く握りしめた。
 「だったら、俺は最後までお前を信じる。たとえ滅びの影と言われても、俺はリナを信じる。」
 レオンも静かに頷く。
 「なら、俺もお前を支える。努力を信じる者を裏切るほど、俺は冷たくない。」
 セリアも微笑み、優しく言った。
 「リナ、自分を信じるのよ。あなたの努力は、必ず道を切り開くわ。」
 リナは涙を流しながら、頷いた。
 「…ありがとう、みんな。」
 
 ■ 迫る闇
 だが、そんな中、遠くの空に漆黒の雲が立ち込めていた。
 それは「滅びの兆し」。
リナの中にある黒い力が、世界に影響を及ぼし始めている証だった。
 
 ■ それぞれの決意
 リナは拳を握り、誓った。
 「私、必ずこの力を制御してみせる。…努力して、兄さんと一緒に未来を切り開くんだ!」
 カイも強く頷く。
 「俺は、リナの隣に立つ。絶対に守り抜く!」
 レオンは剣を握りしめながら静かに呟く。
 「滅びの力なんかに、負けるなよ。」
 セリアは杖を掲げ、決意を込めた。
 「リナの努力が報われる未来を、私も信じてる。」
 
 滅びの力に抗いながらも、自らの努力を信じて進むリナ。
兄妹の絆と仲間たちの支えが、彼女の心を支えていた。
 だが、この旅路の果てには、さらなる試練と闇が待っている。
 
 第7話・完
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