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階段から慎重に引き摺り下ろし、元ストーカーさんを車に積んだ俺達は、一旦会社に戻り痕跡を消して回った。

階段を夜中に洗うことになるとは……

痕跡を無くした後は、どんな時間からでも入れるシャッター付き車庫がある、大人のホテルに行った。

初めてここに入るのがこんな理由とは……

俺は一生童貞なのかもしれん……







「聖くん。先にシャワー浴びてくるね」

いや、わざわざ意味深にいわんでええ。

「はいはい」はぁ

ため息も出るわ……

それぞれシャワーを浴びた後、話をまとめた。

「とりあえず。夕方までは動かないほうがいいと思うのだけど、どう?」

「時間が勿体無いが賛成だ。何かあれば駐車場にある防犯カメラで俺たちのアリバイにもなるしな」

「うん。と、いうことで、寝よっか」

「そうだな」

流石に同じベッドはまずい。俺はソファで寝ようと荷物を床に下ろしていると……

「何してるの?ベッドに行くよ?」

「いや、まずいだろ。俺は1日くらいソファでもかまわん」

「こんなに大きいベッドなんだから、気にしないのっ!」

半ば強引にベッドに寝かされた。

もちろん二人きり……大人が二人…それも異性である……

やることもなく時間だけはある…それならやる事は一つ……!!寝た。







「おーい!起きろー!」

「ん?なんだ?」

翌日。昼前には起こされた。

「だって、暇なんだもん」

なんだよそれ…もう少し緊張感を持てよ。爆睡していた俺が言えないか……

「じゃあゲームでもするか?」

「えっ?!そんなのあるんだ?もしかして来たことがあるのかな?」

「…いや。そこの案内に貸し出しリストが載ってた」

くそっ!見栄を張れば良かったか!?

「知ってるよー。寝る前に見てたもんね!」

危ねぇ!危うく見栄張り童貞の烙印を押されるところだった!

間違ってないけど。

「じゃあ頼んでおいてくれ。俺は顔を洗ってくる」

「うん!何か食べ物も一緒に頼んでおくね!」

あんたの方が使いこなしているんでないかい!?

俺達は夕方までゲームに興じた。





ピピピッ

「時間だ」

アラームは夕方に合わせておいた。

「じゃあこの逃避行も、これでおしまいだね」

何が逃避行だ!会社から車で10分のとこやないかいっ!

「昨日話した通り、俺が向こうに行って、転移魔法で魔物狩りをしていたところに捨てて来たらいいな?」

「うん。出来れば火魔法で燃やしてくれたらさらに安心かな」

「わかった。出来たらな」

俺達はホテルを出て車に乗った。




「何か臭うね」

「ああ。窓を開けて走ろう」

現在は真夏と言っていい時期だ。車に乗り込むと、即座に窓を開けて車を出した。

ホテルの場所は、近くに建物も何も無い所なので、薄らと出ている月を確認したら、邪魔にならない位置に路駐して、元ストーカーさんを下ろしたらすぐに転移した。






「あっ!お帰りなさい!昨日は何かトラブルですか?」

転移室に転移した俺は、魔導書を取りに寝室へと来ていた。

「すまんが時間がない。聖奈も俺も大丈夫だ。後で説明するから行かせてくれ」

「わかりました。待っています」

ミランには申し訳ないが、死体遺棄を手伝わせる訳にもいかない。

「じゃあ、行ってくる。今日は帰れる予定だが、もし無理でも必ず明日には帰るから」

それだけを言い残し、部屋を飛び出た。

早くしないと我が家に変な臭いが……

死体と共に魔法で転移した。






「ここなら火魔法を使っても大丈夫そうだな」

服装は地球の普段着だが、武器は装備して来た。

中級の火魔法の一つを詠唱して、最後の言葉を紡ぐ。

『ファイアウォール』


火の壁を出した。

流石に生活魔法の着火では時間がかかり過ぎるし、近寄らないといけないので、臭いを嗅ぎたくない俺はこの魔法を選んだ。

「凄いな。中々火力が衰えない」

ウォール系の魔法は持続時間が長いようだ。

良かった。

多分攻撃系の『フレアボム』にしなくて。

死体が爆散したら二度とここに来れなくなるし、川の水を飲めなくなりそうだ。


2分くらいで火が落ち着いて来てしまったので、もう一度同じ魔法を唱えた。


それを2回くらい繰り返すと、黒い物体がほとんど見えなくなったので、生活魔法の『製水』を使って水を掛けまくる。


「よし。こんなもんだろ」


残りの焦げ跡は、その内自然に消えるだろう。

早く聖奈さんのところに行かないとな。人が来たら転移に巻き込んでしまう。

まあ、小山(?)丘(?)と田んぼしか見えなかったから、大丈夫だとは思うけど。




転移室に戻った俺は窓を開けておいた。

「後で消臭しよう……車も」

月に願い、聖奈さんの元へと戻ることに。






「うまく行ったぞ」

「良かった!」

聖奈さんは臭いが嫌だったのか、車の外で待っていた。

くさいが仕方ない。帰りがけに消臭スプレーと芳香剤を買おう」

「絶対だね!」

俺達はマンションへ向かった。






買い物を済ませて車の臭いをどうにかした後、マンションに着いた。まだ月の位置に余裕があったので、シャワーを浴びて服は洗濯した。

「準備はいいか?」

「うん!」

「異世界に行きたい」

ミランへの説明が待っている。嫌わないでくれよ……

嫌われたら、お兄さん死んじゃうよ?








「そうだったのですか。やはり美人でも良いことばかりではないのですね」

何か思ってたのと違う感想だったが……嫌われないならいいか。

「ミランちゃんも気をつけてね!」

「私ですか?まだお子様なので何もないと思いますよ?」

成人は迎えているが、まだ13歳だ。だが、あんた日本にいたら聖奈さんよりやばいと思うよ?

「私が男なら、私なんかよりミランちゃんのストーカーになるね!絶対っ!」

なんの自信だ。

「それより、宝石はどうなりましたか?」

「ああ。あれは売れたよ。正確には向こうの商人に買い取ってもらえた」

「最高金額だったよ!全部で13,500,000円になったの!よく即金で支払ってもらえたよね?」

「なんか貴金属が人気らしくて、どの店でも一億くらいまでなら即金らしいぞ」

凄い世の中になったもんだ。金が高騰しているから宝石より金を売ろうかな?

刻印が無くても買い取れるって店の人が言ってたし。

「ああ。金の高騰の影響よね?買取合戦も大変だね」

聖奈さんはその辺もちゃんと調べていたか。

宝石は軒並み買値より安かったが、それの土台の金属が高値がついた理由だろうな。

サファイアには勝てんが……

「ギルと円は同じくらいなのですよね?」

「そうだな。それだけあったら、会社も半年くらいは大丈夫だろう」

まあ、俺の高すぎる給料のせいですけど……

バーンさん、頑張って家具を量産してくれ!

「会社とはお金がかかるモノなのですね」

いや、それは違う。

そんな会社は潰れてしまう。

「ところで、ブレスレット似合うな。やっぱり金がミランには似合うな!」

話を変えるつもりはなかったが、目についたので正直に褒めておいた。

「ありがとうございます。母にも随分羨ましがられました」

そっか。ミラン母は毎日来てくれていたんだったな。それならミランを一人にさせても少しは安心だ。

「そうか。バーンさんが何か催促されるかもな」

和気藹々とミランと話しているのに……

21ちゃいの子供がこれ見よがしに胸元を強調してくる……

「聖奈も似合ってる」

「えっ?!それだけ!?」

仕方ないだろ。直視しにくいんだよっ!

何で服の上じゃなく中に入れてんだよっ!?

「だって、引っ掛けたり無くしたら嫌だもん」

心の声が漏れていたか……

「そしたら直してもらえばいい。無くしたならしらん」

「ええー!そこは『物は壊れたり、無くなる物だよ。次の贈り物の口実が出来て嬉しいくらいだ』くらい言ってよ!」

長いから覚えられん。

それを覚えるくらいなら中級魔法の詠唱を覚えたい。

「そんなことを言うタイプに見えるのか?」

「うーん。ううん。見えないよ!」

じゃあ言うなよっ!

騒がしく夜を過ごした俺達は、いつの間にか眠りについていた。







「今日も魔物狩り?」

「そうだな。とりあえず試したいから、馬車を使わずに転移で向かわないか?」

俺の唐突な提案に、聖奈さんは口を開く。

「でもそれだと、街の出入りに記載されていないのに、魔物の納品をしていると思われない?」

「そうだな。だけど、冒険者組合と街や領主がそこまで連携しているのか?

俺にはそうは見えないけどな」

「そうですね。確かに組合が問い合わせれば、組合員の動きくらいなら行政も教えるかもしれません。

ですが、怪しい動きや、困らせたり素行が悪い訳でもない私たちを、わざわざ調べるとも思えませんね」

これで2対1か。じゃあこうしよう。

「それに今回限りだ。基本は馬車で移動するが、旅に出る前にどれくらいの範囲にみんなで転移出来るのか知らないとな」

「それなら賛成だよ」

よし。俺達は基本多数決ではない。全員賛成か任せる。そうじゃないと行動しない。

不満が溜まるのはいつも少数や弱者なのだから。

…あれ?それって、俺のことじゃないのか?


魔法での転移のため、転移部屋ではなく寝室から行える。

「じゃあ詠唱に入る」

長い詠唱を終えて、最後の言葉を紡ぐ。

『テレポート』

三人での今現在の最長転移だったが、魔力が減った気はしない。

あの封印の解除は、一体どれだけの魔力が込められていたんだ?






画像

「わあ。ここにしたんだ!あれ?あそこ焦げてるね?」

「ああ。元ストーカーさんの跡だな」

「なんてとこに連れて来たのよっ?!」

そんな怒らんでも……

確認の為だよ、確認の。

「とりあえず始めましょうか?」

リーダーの一言で、俺達は気持ちを切り替えて集中した。

川沿いを下流に降ると街道方面に出るので、上流へと向かう。

まだ昼には程遠い上に、日差しも森に遮られていて、夏なのに涼しい。

やはり川沿いに来て良かった。

暫く進むと、ミランから止まれの指示があった。



手を挙げたミランに近寄り小声で話しかける。

「どうした?何か見つけたのか?」

すると無言で指を指したので、そちらを窺うと……


「クマね」

「クマだな」

大きな熊がいた。

川で魚でも取っているのかな?

「あれは、この辺りで一番強い魔物の赤目熊です。

並の攻撃では一切効かず、その攻撃は人を紙切れのように切り裂き、移動は雪崩のように速いので激しく人を呑み込むと言われています。

こちらが風下なのでまだ気付いていませんが、どうしますか?」

たしか普通のヒグマでも、拳銃じゃ倒せないと聞くな。

「遂に私の出番だね!」

いや、あんたまさか……

「熊なんて、私の魔法でイチコロだよ!」

聖奈さんは制止も聞かずに詠唱を始めた。

「ミラン。ライフルを構えろ」

「はい。覚悟は出来ています」

やはりミランも聖奈さんの魔法をアテにはしていないようだな。


『アイスランス!』


聖奈さんの魔法は、森のクマさん目掛けて飛んでいった。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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