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「私たちは世界の終わり。死者の声は枯れ、意志は衰える。」
誰かの声が、ぼんやりと耳に届く。
その声はどこか懐かしく、優しい響きを持っている。
でも、誰の声なのか、どうして聞こえるのか、分からない。
目を開けようとしても、何も見えない。
温もりも感じない。ただ冷たさだけが全身を包み込んでいる。
――何かが刺さっている。胸に?背中に?いや、分からない。
……苦しい。
目覚めたはずなのに、身体が動かない。
思考も鈍り、頭が真っ白になる。
「意識を失っていたのか?」そう問いかけても、自分自身の声すら届かない。
何も分からない。ただ、胸が張り裂けそうに苦しい。
どうしてこんなに悲しいの?
何も覚えていないのに――どうして?
「アルセナ….泣かないで。記憶が散っても、言葉が届かなくても。君の名前が世界の一部と化しても、私の哀歌は君を導く。」
再び、声が響く。今度はもっとはっきりと。
誰の声だろう?懐かしい。けれど思い出せない。
それでも、その言葉だけは深く胸に刻まれていく。
「そして過去は私たちに、もう一度チャンスをくれる……。」
覚えていない名前、覚えていない場所。
なのに、その声の響きだけが私を引き留めている。
頭の中でかすかな記憶のかけらが霧散していくのが分かる。
「すべてを忘れて、一からやり直すことになっても、君なら、いつか……。」
一瞬、光が差し込む。それが希望のように感じた。
だが、次の瞬間、その光はかき消され、冷たい闇が押し寄せる。
奇妙なほど冷静だった。まるで、自分自身でなくなったように――。
記憶が霧のように消えていく中、最後に残るのはただ一つの囁きだった。
「この束縛からは逃れられない。私も同じだ。
私ひとりで逃げるような真似はしない。すべての終わりを、私は君と共に見届けるよ。」
息が詰まる。苦しい。胸が締め付けられる。
「私の名前は世界の一部になる……けれど、君にとってこれは新たな機会。」
胸を貫く刃物のような感覚――でも、痛みは感じない。
感じるのは、言葉にできない苦しさと、ぼやけた視界だけだった。
「安心して。私たち、ずっと一緒だから。」
誰……?
記憶が壊れ始めているのを感じる。
「哀歌」――それが何なのかも、分からない。
「過去が君を留め、哀歌は君を未来へと導く。君はいずれ、再び歴史に名を刻む。」
私は……私は一体……?
最後に聞こえた声は、耳慣れない言葉だった。
καληνὐχτα(カリニヒタ)――おやすみなさい。