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おじいちゃんは、今まで深く考え事をしていたかのような。深い皺を寄せた顔をして泣いていた。
玄関先には、幸助おじさんのための刀箱が開いていて、おじいちゃんがタオルを持って来てくれた。
キッチンでぼくは体を拭いてもらった。
「何も言わなくていいからね」
おじいちゃんはいつものように優しかった。
傷ついた僕の体を白いタオルで撫でるように拭きながら、耳元で囁いていた。
ところどころから、穴が開いて血も流れている。
そんなぼくにおじいちゃんは、目を瞬かせた。もう、泣いても泣いても仕方ないんじゃないかな。
やっぱり、おじいちゃんは知っているんだ。
この黒い街のことを……。
村田先生たちが車で帰る音と同時に、幸助おじさんが玄関先に仁王立ちした。何かしら? 幸助おじさんの背中からオーラのようなものが発せられていた。
殺気っていうのかな?
確か幸助おじさんは、隣町の道場で師範をする前に、あちこちで武者修行をしていた。その時に免許皆伝という何かを貰ったと、遥か昔に聞いていたんだった。
二部木さんや三部木さん。四部木さんに五部木さんと六部木さん。後は、一番初めに生まれた一部木? さんもきっと、今頃は何かよくないことを考えているはず。三部木さんたちの両親はどうなのだろう?
こんな時だから幸助おじさんがいてくれて良かった。
「おじいちゃん。亜由美は?」
おじいちゃんは首を傾げて、
「はて、昼間から。二階に上がったまま降りてこないな」
「え!?」
ぼくは嫌な予感を覚えて、二階へ駆けていく。幸助おじさんも物凄い無駄のない動作でぼくの後を追った。
亜由美の部屋のドアを勢いよく開けると、机で本を読んでいた亜由美がこちらを睨んだ。
ぼくはホッとして、亜由美に謝った。
事件は街全体っていうけど、何が起きるのかとんとわからない。
幸助おじさんが、ホッと安心の息を吐いて一階に降りて行った。
ぼくはこの時に、すごく大事なことを思い出した。今までの悪夢のせいでよく覚えていなかったけれど、急に浮上してくる疑問がある。
それは遥か昔の疑問だけど、数日前なんだね。
「亜由美。数日前に裏の畑で、ぼくたちが遊んでいた時。誰かぼくたちをずっと見てなかった? 何か見ていたら教えてほしいんだ。ほんの小さいことでもいいんだ」
亜由美はめんどくさそうに、本を置いて、白いルーズリーフの紙を取り出した。