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「改めてご挨拶させて頂きます。私はマナさんとお付き合いをさせて頂いております荻野聖人と申します」
「明石圭太です」
「それでね、圭太ちゃんにもう1つ報告があるんだぁ」
マナは顔を赤らめながらニヤついてそう言った。
「何だよ?」
俺はその態度に、なぜかイラついていた。
「実はね、大学を卒業したら荻野さんと結婚するの」
「結婚? 冗談はよせって! 全然笑えないし――」
「ホントだよ。嘘じゃないって!」
「本当なんです。3日前、マナさんにプロポーズをしました。来週には、マナさんのご両親にご挨拶に伺う予定です」
「マジか――ふざけんなって――」
俺は誰にも聞こえない声でボソッと呟いた。
「それでね、近いうちにここを出て行こうと思ってるの」
「出て行くって、どこに行くんだよ?」
「荻野さんのマンションだよ。荻野さん、渋谷区の広尾にある高級マンションに住んでるの。ホントでオシャレなんだよ」
「マナさんが家を出て行くことを許して頂けますか?」
「許すも何も、俺が口を出すようなことではないので、マナが出て行きたければ好きにすればいいんじゃないですか――」
「そうですか、良かった。実は反対されるんじゃないかと心配していたんです」
荻野さんは、大きく息を吐いた後、ホッと胸をなでおろしていた。
「どうしてですか?」
「そりゃあ、高校時代からの親友で、マナさんの両親に許されて一緒に住んでいるくらいの人ですから、そんな簡単には許してもらえるとは思えませんでした」
「正直驚きはしましたけど、別に反対はしていません」
だからと言って、心の底から賛成などしてはいない。でも、荻野さんを見るマナの眼差しは見たことないくらいキラキラしていた。幸せそうだった。だから俺にはそれ以上何も言えなかった。
そして次の日から、マナは俺達2人の家ではなく萩野さんのマンションで寝泊まりするようになった。俺の家に帰って来るのは、引っ越しの荷造りをするためだけのものになっていた。
「圭ちゃん、お腹減った。何か作って!」
マナはここ数日、大学が終わると俺の家にやって来ては荷造りをしていた。
「今食べたら夕飯食べれなくなるぞ」
「大丈夫だよ。それに荻野さん、いつも仕事が終わるの遅いから夕食は21時過ぎになっちゃうの」
「マナが夕食作ってるのか?」
「作れると思う?」
「思わない」
「でしょ?」
「でも、飯ぐらい作れるようにならなきゃ、いい奥さんにはなれないぞ」
「荻野さん、料理は出来なくてもいいって言ってくれたの。外食でも何でも一緒に食べられればいいんだって」
「あっそうかよ――」
マナのノロケ話を聞かされていると無性に腹が立ってくる。