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そして、1週間が過ぎた。マナの荷造りは殆んど終わっており、明日荻野さんが借りてくるトラックに詰め込めばそれで終わりだった。
「マナ、忘れた物はないか?」
「ないよ」
荷造りを終えたマナは、ソファーで横になってテレビを観ていた。
「こっちには、来ることはあるのか?」
「特に用なんてないから来る訳ないじゃん。もしかして圭ちゃん、マナに来て欲しいんじゃないの?」
「そんな訳あるか!」
「寂しいんでしょ?」
「全然!」
「寂しいなら時々会いに来てあげてもいいけど」
「別に寂しくねえから結構だ」
「あぁ~あぁ~〜素直じゃないよね。ホントは自分だけ1人になっちゃうから面白くないんでしょ?」
「はぁ? ふざけたことばっか言ってんじゃねえぞ」
「圭ちゃん、何怒ってる訳? 意味わかんないんだけど」
「怒ってねえし」
「怒ってんじゃん! マジでそういうのウザイんだけど!」
「俺が気に入らねえならさっさと出て行けよ。こっちはマナがいなくたって、全然寂しくねえんだよ」
「チッ!? わかった! 出て行くよ! こんなボロい家、2度と来るもんか!」
マナは大声でそう言うと、バタバタと大きい足音をたてながら家を出て行った。
翌日、午前10時を過ぎた頃、アパートの前に2トントラックが停まり、中から荻野さんが出てきた。
ピーンポーン―――
「おはようございます。早速、荷物を積ませてもらいます」
「おはようございます。あれ? マナは来なかったんですか?」
「えぇ、明石さんに会いたくないって言って――。何かあったんですか?」
「昨日ちょっと言い合いになってしまって――」
「そうだったんですか。でも羨ましいです。何でも言いたいことを言い合えるって。マナさん僕には、まだ遠慮してる部分がありますから」
荻野さんは少しばかり寂しそうな表情を浮かべていた。親が大企業の社長をしていて、育ちのいいお坊ちゃんと聞かされていたから、どうも信用出来なかった。でも、話をしていて常識のある誠実な男性であることはわかったし、マナを本気で想っていてくれているのは嫌ってほど伝わってきた。
「直ぐに本性を現しますよ。アイツは人に遠慮するような玉じゃありませんから」
「早くそうなってもらえればいいんですけどね」
「大丈夫です。俺が保証します。それより、俺手伝いますから早く片付けてしまいましょう」
「すいません、助かります」
それから2人でマナの荷物をトラックに積み込んだ。1時間もかからないで作業を終えることが出来た。
「ありがとうございました。本当に助かりました」
「別に大したことはしてませんよ」
「マナさんの言う通り、明石さんは優しい方ですね」
「アイツがそんなことを――」
「えぇ、いつも自分のことのように言ってますよ」
それから家に入ってコーヒーを飲んでから、荻野さんは自宅に帰った。改めてマナの部屋を覗いて見たけど、跡形も何もなくなっており、本当にマナがいなくなったという実感が湧いてきた。急に寂しさが込み上げてきた。