テラーノベル
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生命演算樹が、激しく脈動する。
白い光。
黒い侵食。
二つがぶつかり合い、
空間そのものが悲鳴を上げていた。
『分離率78%……65%……』
少女が数値を見つめる。
『安定しません……!』
リョーカが空中で苦しそうに身体を丸める。
「ぁ……っ……!」
黒い影――ヴェルトラウムが、
なおも彼を引き戻そうとしていた。
『RX-00』
『戻れ』
『孤独になるぞ』
『また失うぞ』
何千もの声。
絶望
恐怖
後悔
それら全部が、
リョーカの心へ流れ込んでいく。
普通なら、
耐えられない。
だが
リョーカは震えながら、
それでも笑った。
「……知ってるよ」
涙を流しながら。
「一人って、怖いよね」
黒い影が揺れる。
「でも」
リョーカが、
ゆっくりモトキ達を見る。
「二人が、“また帰ってこい”って言ってくれたから」
その瞬間
彼の胸から、
青白い光が溢れた。
優しい光。
暖かい光。
まるで、
三人で過ごした記憶そのものみたいだった。
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夜食のカップ麺。
依頼帰りの雨。
くだらない喧嘩。
眠そうな朝。
ヒロトの騒がしい笑い声。
モトキの不器用な優しさ。
“帰る場所”
その全部が、
リョーカを繋ぎ止めていた。
『……解析不能』
ヴェルトラウムの声が揺らぐ。
『なぜそこまで個を維持する』
リョーカが、
静かに答えた。
「好きだからだよ」
「一緒にいたいって思える誰かがいるの」
涙を拭う。
「だから、一人でも頑張れる」
黒い影が、
少しずつ崩れていく。
『……理解』
初めてだった。
ヴェルトラウムの声が、
怒りではなく、
戸惑いに変わったのは。
『個は孤独』
『だが』
『個であるから、誰かを求める』
生命演算樹が、
さらに強く発光する。
『分離率92%……95%……』
少女が目を見開く。
『成功領域へ到達』
ヒロトが拳を握る。
「いける……!」
だが
次の瞬間。
警告音が鳴り響いた。
『エネルギー過負荷』
『演算樹崩壊まで残り120秒』
空間が揺れる。
天井に亀裂。
白い光が暴走し始める。
ヒロトが顔を引きつらせた。
「おいおいおい待て待て!!」
少女も険しい顔になる。
『再構築完了前に施設が崩壊します』
モトキが叫ぶ。
「方法は!?」
『……一つだけ』
少女が、
生命演算樹を見る。
『誰かが中枢へ直接接続し、暴走を抑える』
嫌な沈黙
ヒロトが即座に言う。
「俺が行く」
「ダメだ」
モトキが遮る。
「強化人間じゃ接続に耐えられない」
「じゃあお前かよ!!」
「そのつもりだ」
ヒロトが胸ぐらを掴む。
「ふざけんな!!」
「リョーカ助けるんだろ!!」
「お前まで消えたら意味ねぇだろ!!」
二人が睨み合う。
その時
弱々しい声が響いた。
「……二人とも」
リョーカだった。
光の中で、
泣きそうに笑っていた。
「ケンカしないでよぉ」
モトキが顔を上げる。
リョーカは静かに首を振る。
「もう、誰かが犠牲になるの嫌だ」
その言葉に、
二人は黙る。
リョーカは、
ゆっくり目を閉じる。
そして
小さく呟いた。
「だから今度は、みんなで帰ろう」
リョーカの身体から、
無数の光が広がった。
ヴェルトラウムの中にいた、
人々の意識。
その一つ一つが、
生命演算樹へ流れ込んでいく。
少女が目を見開く。
『これは……』
リョーカが笑う。
優しく。
「みんな、“帰りたい”って」
暴走していた光が、
少しずつ落ち着いていく。
まるで
無数の人達が、
リョーカを支えているみたいだった。
『エネルギー安定化』
『分離率99%』
モトキの鼓動が速くなる。
あと少し。
あと少しで――。
その瞬間。
リョーカの身体が、
光の粒になり始めた。
「……え」
モトキの顔が凍る。
少女が叫ぶ。
『分離後、器が崩壊しています!!』
「なんで!!」
『ヴェルトラウム因子が生命維持を担っていたためです!!』
つまり
人間になれば、
今の身体は維持できない。
モトキが障壁へ駆け寄る。
「リョーカ!!」
リョーカは、
少し驚いた顔をしたあと。
困ったように笑った。
「……あれぇ」
コメント
1件
うわあ……胸が詰まりました。第34話、すごかったです。 「好きだからだよ」「一緒にいたいって思える誰かがいるの」——このリョーカの台詞が刺さりました。ヴェルトラウムの“孤独になるぞ”という囁きに、一人で頑張れる強さと、それでも繋がっていたいと思う弱さの両方を肯定するような返しで。あの「知ってるよ」も含めて、リョーカの優しさと強さが滲んでいて泣けます。 そして最後の「あれぇ」。あの困ったような笑顔、読んでいて心がぎゅっとなりました。ヒロトとモトキの喧嘩も、どっちもリョーカを守りたい一心で、熱かったです。本当に、みんなで帰れてほしい……🤍
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