テラーノベル
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「止めろ!!」
モトキが障壁を殴る。
ガンッ!!
ヒビが走る。
だが壊れない。
リョーカの身体は、
指先から少しずつ光へ変わっていった。
粒子になって、
空中へ溶けていく。
ヒロトが顔を歪める。
「おい、嘘だろ……」
少女が演算樹へアクセスする。
『新しい器が必要です!!』
「器?」
『RX-00の自我を定着させるための生命基盤』
モトキが叫ぶ。
「そんなのどこにある!!」
少女が沈黙する。
そして
ゆっくり、
生命演算樹の中心を見る。
そこには、
白銀の核が浮かんでいた。
脈打つ、
小さな光。
『……生命核』
『本来、人類再構築用の中枢』
『使用すれば、RX-00を完全独立生命として再定義可能』
モトキの目に希望が戻る。
「なら――」
『ただし』
少女が続ける。
『生命核を使えば、この施設は完全停止します』
空間が揺れる。
崩壊が進む。
『生命演算樹も消滅』
『ヴェルトラウムに残された意識群も、全て消える』
地下が静まる。
モトキは息を呑む。
それはつまり
リョーカを救う代わりに、
ヴェルトラウムの中に残っている無数の人々を消すということ。
リョーカも理解した。
目を見開き、
すぐに首を振る。
「ダメ」
弱々しい声。
「それはダメだよ」
「リョーカ」
「みんな、苦しかっただけなんだよ」
涙が零れる。
「やっと少し眠れそうなのに」
モトキは拳を握る。
選べない。
どっちも
どっちも捨てられない。
その時
ヴェルトラウムの声が、
静かに響いた。
『……RX-00』
黒い影はもう薄れていた。
怒りもない。
ただ
静かな声。
『我々は長く、間違え続けた』
リョーカが涙目で見上げる。
『孤独を恐れ』
『一つになろうとした』
『だが』
影が、
少しだけ笑ったように見えた。
『お前は教えた』
『別々でも、繋がれると』
空間が静まる。
『ならば』
生命演算樹が、
ゆっくり開いていく。
中心の生命核が、
淡く輝いた。
『RX-00…いや、リョーカに未来を託す』
少女が目を見開く。
『ヴェルトラウム、自発的分解……!?』
ヒロトも呆然とする。
「は……?」
ヴェルトラウムの影が、
無数の光へ変わっていく。
苦しみ
孤独
絶望
その全部が、
静かに溶けていった。
『我々はもう、“一つ”でなくていい』
リョーカが泣いていた。
「……うん」
『生きろ』
その最後の声は
どこか、
優しかった。
次の瞬間。
生命核が、
一直線にリョーカの胸へ飛ぶ。
眩い光。
モトキは目を覆う。
ヒロトが息を呑む。
少女がシステムを叫ぶ。
『再定義開始!!』
『生命構造再構築!!』
『個体名――リョーカ』
『生命分類更新』
白い光が、
世界を包み込んだ。
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静かだった。
崩壊音も消えている。
モトキはゆっくり目を開けた。
白い粒子が舞っている。
雪みたいに。
その中央
誰かが倒れていた。
長い三つ編み。
蛍光色の髪。
華奢な身体。
「……リョーカ」
モトキが駆け寄る。
抱き起こす。
温かい。
ちゃんと鼓動がある。
ヒロトも隣へ来る。
「生きて……」
そのとき
リョーカの瞼が、
ゆっくり動いた。
数秒
ぼんやりと、
二人を見る。
そして
少し掠れた声で言った。
「……あれ」
小さく笑う。
「お腹空いた」
次の瞬間
ヒロトが吹き出した。
「っ、ははっ……!!」
モトキも、
とうとう耐えきれなくなる。
笑いながら、
涙が溢れた。
「……バカ」
リョーカは、
よく分かってない顔で笑っている。
その瞳にはもう、
黒い侵食はなかった。
ただ
透き通るくらい、
綺麗な光だけが宿っていた。
コメント
1件
ああ…読んでいて胸がぎゅっとなりました。リョーカを救うか、ヴェルトラウムの意識を残すか、あの選択の場面、本当に苦しかったです。でもヴェルトラウムが最後に「別々でも繋がれる」と気づいて、自ら未来を託す——その流れが美しすぎて泣きました。そして最後の「お腹空いた」で全部が温かくなって、本当に良かった…。命が戻ってきたんだなって実感できました🤍