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ーはぁっはぁっはぁっ…!
無我夢中に走り続ける
私は今、謎の化け物に追われているー
『姉さん…っ姉さん…!!!』
夜遅くに戸が開く音がした
母さんと父さんは病死、事故死で亡くなっている
『姉さんっ姉さん!!』
ドンっ!と激しい音がする
音の根源を辿っていたら、そこには
ー姉が横たわっていた
ーはぁっはぁっはぁっ…!
「…真奈…ぁっ」
「逃げて…ぇっ」
ー姉さんはそう言って命が尽きた
「美味そうなぁ…小娘だなぁ…?」
グチャッ
『…ぁぁっ…っ!』
その”化け物”は姉さんの腕をもぎ取ってむしゃむしゃとほうばった
私は怒りと同時に恐怖が湧き上がった
『ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁああ!!!!!』
『はぁっ…はぁっ…』
私は無我夢中に走り続けた
姉さんの分にも生きる為に
だけど、あの化け物は足が異常に速かった
『はぁっ…!ぁっ…っ』
走ってからすぐに追いつかれた
その化け物は私の頭上に目掛けて腕を振るった
明らかにもう私は”終わった”と確信した
だけどー
ー霞の呼吸 参ノ型
霞散の飛沫ー
目の前が霞に巻かれているような感覚に陥った
『…!』
気づいたら化け物の首らしき物が斬れていた
あまりにも一瞬の事だったのでしばらくは固まっている事しかできなかった
『…ぁぁっ…』
しばらくすると目元から大量の涙が流れた
ふと前を見ると髪の長い男の人が不思議そうに此方を見ていた
『…?』
よく見るとその男の人は刀を持っていて不思議な服を身にまとっていた
「…大丈夫?」
『あっ!えぇっと…』
『だ、大丈夫…です…』
「…そう」
そう言って男の人は私から離れていった
『あ、あのっ』
「…?何」
『あ、貴方のお名前は…?』
「…何で赤の他人に言わないといけないのかな」
『い、いやっ…えぇっと…』
思いがけない回答に驚いた
だけど、流石に命を助けてもらった人に恩返しもしないというのは失礼だろう
『い、いつかまた恩を返したいので…』
「そんな事必要ないよ」
『だ、だけど…!』
「そんなくだらない事で時間潰したくないんだよね」
『あ、姉が死んでいて…!わ、私しか…いないんですっ』
「…姉が?」
『は、はいっ』
髪の長い男の人がじっと此方を見ている
『そ、それに…姉も医者に見てもらわないと…!』
「それは無駄だよ」
『…!』
「君の姉はもう死んでいるよ、そんな事も分からないのかな」
男の人に冷たい目線で見られる
『だ、だけど…!』
「何でもう死んでいる人間の為にそんなにムキになるのかな」
「それに、今は君の治療の方が優先的でしょ?」
私は頬にかすり傷を負っていた
『だ、だけどっ…!大切な姉なんです…!』
『それと…!』
『人の為にする事は巡り巡って自分の為になるからなんです…っ』
「…えっ?」
男の人の目に光が宿った気がした
「今、今何て言ったの?」
『え?』
『人の為にする事は巡り巡って自分の為に…って…』
「…」
「君、本当におかしな事を言うね」
『え…』
「まあいいや」
男の人は何事も無かったようにこの場を離れた
『あ…!』
「…」
突然男の人は立ち止まった
「…時透無一郎…」
『えっ?』
「僕の名前は、時透無一郎…これでいい?」
『あっ…』
『は、はい!ありがとうございます…!』
そう言って男の人は完全にこの場を離れた
『…っ』
私はもしかしたらあの男の人に恋しているかもしれない