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出水視点出水は、木の陰に潜んでいた。
帽子にマスク、サングラスという、どこからどう見ても「逆に怪しい」変装スタイルで。
「……俺、何やってんだろ」
自分でもちょっと情けなくなる。
でも前、ナマエが言った一言がどうにも引っかかっていた。
『日曜日は用事あるから、先輩との勉強はまた今度ね〜』
笑ってたけど、あの笑顔が、また少しだけ無理してるように見えた。
「もしかして、誰かと会うのかな……」
気になって、気になって。
気付いたら、家の前でナマエを待ち伏せしていた。
出てきたナマエは、いつもと違う服装で、髪も軽く巻かれていて、どこか「特別」な雰囲気だった。
「……デート?」
なんて思ってたその時。
「――っ、は?」
彼女の隣に、見知らぬ男の姿があった。
スラッと背が高くて、優しげな笑顔。
何より、ナマエの表情が――どこか、安心しきったように緩んでいた。
(誰だよ、あいつ)
動悸が速くなる。
理由はわからない。でも、胸がぎゅっと締め付けられるような感じ。
(……もしかして、彼氏?)
心がざわつく。
(……いや、でも、そんな話聞いてないし――てか、聞いてないから何? 俺は何者だってんだよ)
ナマエは男の腕に軽く触れながら、笑い合って歩いていく。
「……っ、くそ」
無意識に拳を握っていた。
こんな感情、初めてだった。
自分がこんなふうに“誰かを独り占めしたい”なんて、思うことがあるなんて。
(あーもう……マジで俺、どうかしてんな)
それでもその背中を、なぜか見送ることしかできなかった。
(……ナマエ、お前の隣、ほんとは俺が歩きたいんだけどな)