〓〓〓〓〓〓〓注意書き〓〓〓〓〓〓〓
※この話に主人公達は出てきません。
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「そっちに1匹行ったぞ!」
大盾を構え金属の鎧を纏った男が、フルフェイスの兜の中から声を張り上げた。
「アラン!任せろ!おらよっと!」ザシュッ
「ナイスよ!ダリー!」
アランと呼ばれた男の横をすり抜けた魔物を、軽鎧を纏ったダリーと呼ばれた剣士が撫で斬りにした。
「サリー!左だ!」
バシュッ
「やったわね!ナイスよ!」
アランにサリーと呼ばれた女が、アランの左を抜けてきた魔物を弓で射殺した。
アランが抑えていた最後の一体はダリーと囲み、斬り倒し戦闘を終える。
「もう!カレンは実況ばかりじゃない!」
戦闘が終わるや否や、サリーが『ナイス』ばかり言っていたカレンに非難の声を上げる。
「だって…魔法使う暇がなかったのよ…」
「…サリー。無駄話はこいつらから魔石を抜いてからにしてくれ」
「もう!お兄ちゃんはカレンに甘いんだからっ!」
四人は冒険者で、ここはデザート王領にあるダンジョンである。
「サリー。やっと両想いに気付いたバカップルに何言っても聞こえないぞ?」
「アランもだよ!みんなカレンに甘いんだから!」
(しまった…矛先がこっちに…)
話に加わったアランは後悔したが、解体の手は緩めなかった。
この四人はガーランドという町の出身で、幼馴染だ。その名も『ガーランドの友』というパーティを結成していた。
同じ時期に冒険者となった四人は持ち前の連携ですぐに頭角を表し、今では銀ランク冒険者として、ここデザート王領のダンジョンに挑んでいた。
「よし!今日はこのくらいで良いだろう。帰って祝杯をあげようぜ」
「飲みすぎないでよね」
「はぃ…」
アランとダリーは22歳。ダリーと付き合っているカレンは21歳で、ダリーの妹のサリーは20歳だ。
最年少ではあるがパーティの保護者役のサリーから釘を刺されたアランは、声を小さくして返事をした。
「それにしても不思議よね?来た道でも魔物を倒したのに、もう復活しているんだもの」
カレンの問いにダリーが答える。
「それがダンジョンというモノなのだろう。俺達は砂漠の中の洞窟に入ったはずなのに、ここは森林だからな」
「これで素材でもとれりゃあ金持ちになれんのにな…」
そこにリーダーであるアランの嘆きが加わった。
「仕方ないよ。それにここへは強くなる為に来たんだもん。頑張ろ?」
「おう!」「そうだな!」「次は私がやるわ!」
年下にそう言われて頑張らない彼らではなかった。
四人が幼い頃、町ではいつもアランが仕切っていた。
その名残が今も残り、リーダーをしている。
所謂ガキ大将がそのまま大人になったのだ。
アランは190cmの長身と、それに見合う筋肉を持っているタンク(盾役)だ。
ダリーは180cmとこの世界では普通か少し高いくらいの身長ながら、その身のこなしは素早い。
それを活かした剣で、銀ランクへと昇った剣士である。
サリーは165cmと、この世界の女性の平均的な身長だ。ダリーと同じく身のこなしが素早い為、パーティの斥候を兼ねた弓師をしている。
カレンは170cmと女性としては少し高い。元々四人の中では運動が苦手で、子供の時分いつも本ばかり読んでいたカレンをアランが遊びに誘っていた。
そしてカレンは魔法使いの本に出会い、魔法にどっぷりとはまってしまった魔法使いである。
そんな四人は森の中を歩いていく。
「でも良かったよな!ダンジョンでは迷う事がなくて!」
「そうだな。太陽を背に歩けば、必ず出口に着くのはいいな」
洞窟の中であるはずのダンジョンには森林地帯があり、さらに太陽まで存在していた。
太陽がある方へ進むと先へ行けて、逆に進むと出口へと戻れるのだ。
出口と言っても洞窟が見えるわけではなく、歩いていくと森林の中からいきなり洞窟内へと辿り着く。
「この先にはまだ別の環境があるのよね?」
アランとダリーの発言にカレンが割って入った。その疑問には最年少のサリーが答える。
「冒険者ギルドで聞いた話がホントならそうだよ。でも良かったねカレン。迷う事がなくて」
「そうだぞ。カレン」
「安心だな。カレン」
3人から心配されたカレンは……
「もう!迷子になったのは大昔のことでしょ!?」
カレンはどうやら方向音痴のようだ。
「はい!では、こちらが報酬になりますね!」
ギルドに戻ってきた四人は、ダンジョンで得た魔石を納品した。
「労力に見合ってない…」
報酬を受け取ったアランは、パーティメンバーが待つギルド内の席へと着くと、テーブルに報酬を置いた。
そしてサリーから出た感想がこれだったのだ。
「あれだけ倒してこれだと、武器を壊したら赤字だね…」
パーティのお金を、何故か最年少のサリーが管理しているが、その理由は察してもらおう。
「まだそこまで強い魔物に遭遇していないからな。次の階層に行けばすぐに倍以上稼げるさ」
兄であるダリーが妹を気遣う。
「私がもっと効率よく魔法を使えたら良かったけど…ごめんね」
「ううん。カレンは悪くないよ。魔石しか収入が無いのに、魔石を使う魔法は使えないしね」
この世界の魔法には、大きく分けて三つの種類がある。
魔石を消費するが誰でも使える『魔導具魔法』と
魔石と自身の魔力を使う『魔石魔法』と
自身の魔力だけで魔法を使う『魔法』だ。
カレンは魔法使いであるように『魔石魔法』と『魔法』が使える。
しかし、人族は平均して、魔法の源である魔力が豊富では無い。
身体能力に長けた獣人族ほど少なくはないが、全体からみると少ない種族といえる。
その為、カレンが『魔法』を使えるのは数える程である。
人族が少ない魔力で魔法を使う為に編み出した『魔石魔法』はあるが、それは魔石を消費する為、魔石を主な収入源にしている今の四人には難しかったのだ。
「わかったわ。重要な場所を見極めて使うわ」
「ホントにわかったのぉ…?」
「ほ、本当よ!?」
サリーが疑いの眼差しを向けたのには理由があった。
今回のダンジョン探索で、カレンはどうでもいい場面で魔法を使って魔力切れを起こし、冒頭ではただのお荷物になっていたからだ。
「はぁ…次からは気をつけてよねっ!」
「はぃ…」
魔法の才能はあるが、どこか抜けているカレン。
そのカレンを擁護するバカップルの片割れダリー。
人を引っ張る力はあるが、自己管理すら出来ないリーダーのアラン。
やはりこのパーティはサリーが管理しなくてはならないようだ。
最年少の苦悩は続いていく。
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レビン:7(45)
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