テラーノベル
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僕はバルトと一緒に屋敷に帰った。
帰りも、バルトは手を繋いでくれた。
屋敷に付いたら、先にシュメリが帰っていた。
「おかえり、二人とも。リンネ、どうだった?」
「楽しかった!」
僕は元気いっぱいに答えた。
「クロノアに変なことを仕込まれなかったかい?」
「大丈夫そうだったぞ。それより、リンネのほうが大変だ」
帰りはバルトがクロノアの部屋まで迎えに来てくれた。
その時、二人で話をしていた。
バルトの言葉に、シュメリが顔を引き攣らせた。
「大変? 何があったんだい?」
「んーとね……お菓子を食べて、ミルクコーヒーを飲んで、お話をした。気持ちがトリガーなんだって」
「ん?」
シュメリが、わからない顔をしている。
「大方、そんな感じだ」
バルトが頷いている。
バルトを振り返ったシュメリが、もっとわからない顔になった。
「菓子や甘い飲み物はリンネが好きだから、魔花が開きやすくなるらしい」
「なるほど。トリガーは?」
「リンネは感情に魔力を乗せてる。想いがトリガーになると、クロノアが話していた」
「なるほど……今までも、そうだったかもしれないね」
シュメリが、やっと納得できたみたいだ。
「何より凄いのは、息を吸うように術を使っていることだとよ。クロノアが一ヶ月と見込んでいた訓練は、今日で終わったそうだ」
「たった一日で?」
シュメリが絶句している。
「でも僕、お花を咲かせただけだよ。あとはクロノアとお茶してお喋りしただけ」
僕の言葉を聞いたシュメリが、バルトを振り返った。
「大変だろ」
バルトが淡々と言った。
「大変だ……大変な天才だ。あのクロノアを凌ぐなんて。凄いよ、リンネ!」
シュメリが興奮気味に僕に抱き付いた。
「うわぁ! 僕、凄いの?」
「凄い! 天才術者だ!」
シュメリが喜んでくれている。
じわりと、嬉しさが湧いた。
「天才っていうか、リンネの性格と能力の相性が異常にいいって、クロノアは言っていたぞ」
「それを天才と呼ぶんだよ」
シュメリが僕の頬を撫でた。
「きっといい術者になるね、リンネ」
ふわりと、胸が温かくなった。
クロノアも同じことを言ってくれた。
シュメリに言われると、いっぱい嬉しい。
「僕、頑張る」
両手を握って、決意を新たにした。
「そうだ、二人に伝えないといけないことがあるんだ」
シュメリが表情を改めた。
机の上の紙を手に取った。
「魔窟の森に、屍狼が大量発生している。近いうち、騎士団が討伐に向かう予定だ」
シュメリが見せてくれた紙を、バルトが覗きこんだ。
「屍狼って?」
「オバケオオカミだ」
「あの、怖いやつ!」
森に住んでいた時に、時々出くわした魔獣だ。
既に死んでいる狼が魔獣化したのだと、バルトが教えてくれた。
僕は、バルトにしがみ付いた。
「怖い時は私にしがみ付いて、リンネ」
僕をバルトから剥がして、シュメリが胸に抱いた。
「発生場所、森の家に近いな」
バルトの顔が険しくなった。
「そうなんだ。今は危険だから、近付かないでくれ」
「そうか。そろそろ引き払おうかと思っていたんだけどな」
「引き払うって……あの家、なくなっちゃうの?」
バルトと暮らした場所がなくなるのは嫌だ。
思い出も大事なものも詰まっている。
「新しい家が見付かるまでは、置いとくけどな」
「バルトはここに住めばいいじゃないか」
シュメリの発言に、バルトが微妙な顔をした。
「いつまでもは、いられないだろ。魔術師団にも慣れてきたし、そろそろ自分の家を探すよ」
「それは、リンネが残念がるよ」
僕は思いっきり何度も頷いた。
バルトがこの屋敷からいなくなっちゃうのは、嫌だ。
「いつまでもそれじゃ、ダメだろ」
バルトが僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。
(バルトがいなくなっちゃう。森の家もなくなっちゃう)
そんなのは、バルトも思い出もなくなるみたいで、悲しい。
シュメリを好きになるってことは、バルトを失うってことなのかな。
(どうして、三人じゃダメなの。どうしてバルトはいなくなるの)
胸の中に、モヤモヤが広がっていく。
「……やだ」
僕は呟いた。
「リンネ?」
「バルトがいなくなっちゃうのも、森の家が無くなるのも嫌だ! だったら僕、シュメリと結婚しない!」
僕はシュメリの書斎を飛び出した。
「待って、リンネ!」
シュメリの声に、今は立ち止まりたくなかった。
自分の部屋に入って、鍵をかけた。
「なんで、バルトは出て行くの。どっちかを選ばないといけないの」
考えても僕にはわからない。
シュメリが好き。
でも、バルトも大切なんだ。
どうして、それじゃダメなの。
僕はベッドに突っ伏して、枕に顔を埋めた。
シュメリが来ても、バルトが来ても、ドアを開けなかった。
お股ポテト
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はるにし
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コメント
1件
ああ、第47話、読み終えました……。リンネが一日で訓練を終えた天才ぶり、嬉しいですね。でもその直後に「バルトがいなくなる」「どっちかを選ぶのは嫌だ」って駄々をこねる姿が、幼くて切なかったです。シュメリとバルト、両方大切なんだよね。三人でいる幸せを壊したくない気持ち、痛いほど伝わってきました。続き、どうなるんだろう…