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耳鳴り。
浮遊感。
胃がひっくり返るような感覚。
伸ばした手の先には、俺と同じ顔。
同じように慌てた表情。
同じように手を伸ばしていて。
そして。
―――目を開けた。
「っは、」
勢いよく身体を起こす。
心臓が痛いほど暴れていた。
荒い呼吸を整えながら周囲を見回す。
部屋だった。
ベッド。
机。
本棚。
カーテン。
壁掛け時計。
どこにでもあるような部屋。
「……」
いや。
知っている。
この部屋を知っている。
「……俺の部屋?」
思わず呟く。
見慣れた景色だった。
何年も暮らした自室。
少なくともそう思えた。
なのに。
何かがおかしい。
机の上に置かれた写真立て。
そこに映っている人物を見て、眉をひそめる。
「誰だよ」
知らない顔だった。
背景を知らない。
隣にいる人物も知らない。
記憶にない。
『あー』
頭の奥から声がした。
『やっぱそうなるか』
「うわっ」
反射的に飛び上がる。
忘れていた。
いや忘れられるわけがない。
『おはよう』
「全然おはようじゃねぇ」
『それはそう』
呑気な声だった。
「……いるの?」
『いる』
「どこに」
『頭の中』
最悪だ。
『ちなみに俺も最悪』
「聞いてねぇよ」
即答だった。
数秒の沈黙。
そしてほぼ同時に。
『「……夢?」』
重なった。
#nqrse
兎ゞ亜 @はじめたばかり
2,486
餡狐(あんこ)
312
かき
3,001
『うわ』
「うわ」
『真似すんな』
「お前がな」
また重なる。
何もかもが最悪だった。
ゆっくりベッドから降りる。
床の感触は確かにある。
夢じゃない。
少なくともそんな気がした。
机に近付く。
教科書。
筆箱。
ノート。
全部見覚えがある。
なのに。
「……なんだこれ」
ノートの端に書かれた文字。
見覚えのある筆跡。
俺の字だ。
間違いなく。
でも、
『それ俺の』
「は?」
『俺が昨日書いた』
頭の中の俺が言う。
「……」
ノートを見る。
『……』
気味が悪かった。
俺の字だった。
俺の癖だった。
文字の崩し方まで同じだった。
「……本当に俺じゃん」
『だから言ってる』
頭が痛くなる。
知らない人間ならまだ良かった。
知らない世界ならまだ良かった。
でも違う。
これは。
知らない”俺”だった。
その時。
机の上のスマホが震えた。
画面が光る。
表示された名前に息を呑んだ。
「……ぐちつぼ?」
『誰?』
頭の中から返事が来た。
一瞬。
思考が止まった。
「は?」
『いやだから誰』
「ぐちつぼだろ」
『知らん』
空気が凍る。
「知らない?」
『知らない』
即答だった。
俺はスマホを見る。
ぐちつぼ。
見慣れた名前。
見慣れたアイコン。
俺の友達。
なのに。
『少なくとも俺の友達じゃない』
頭の奥で。
もう一人の俺が静かに言った。
『……それ、多分』
少しだけ間が空く。
『お前の世界の、お前の友達なんだろ』
4話は1~3話がすべて♡1000になったら更新します(人*´∀`)。*゚+