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第二話 立ち向かうもの
「……キュッ!!」
何かが横から飛び込んできた。
小さな身体が、架の前に立つ。
「……え?」
架は目を見開いた。
青白い毛。長い耳。黄色い瞳。
さっきの――あのモンスターだった。
「……おまえ……」
小さなモンスターは動かず、大きなモンスターを見上げている。
「……キュ」
短く鳴く。
大きなモンスターが低く唸り、瓦礫を踏み砕きながら近づいてきた。
架の足は動かなかった。
小さなモンスターの耳が、ぴくりと動く。
それでも、退かない。
「……やめろ」
架が呟いた。
「おまえじゃ……無理だろ」
次の瞬間、地面が弾けた。
「――っ!」
大きな身体が迫る。
小さなモンスターは横へ跳び、直後、巨大な腕が地面を叩き割った。砕けた石が飛び散る。
「おい……やめろっ……!」
着地した小さなモンスターは、息をつく暇もなく地面を蹴った。
「キュッ!」
低く身を伏せ、大きなモンスターの懐へ滑り込む。爪が走り、肉を捉えた。
だが、大きなモンスターは止まらない。
わずかに動きの鈍った小さなモンスターへ、反撃の腕が迫る。
「逃げろ!」
叫び声が裏返った。
身を沈めた頭上を、巨大な腕が唸りを上げて通り過ぎた。風圧に身体を揺さぶられながらも、小さなモンスターは横へ駆ける。
背後から、地面を踏み砕く音が追ってきた。
「キュッ!」
振り返る間もなく跳び、振り上げられた腕を足場にして、さらに高く舞い上がる。
身体をひねり、爪を振り下ろす。
ガッ!
確かに当たった。
しかし、大きなモンスターは腕を振り抜いたまま、こちらを見上げただけだった。
効いていない。
「……嘘だろ……」
架の口から、かすれた声が漏れた。
小さなモンスターは空中で身をひねり、着地と同時に駆け出した。
距離を取る。
だが、離れられない。
大きなモンスターが踏み込む。地面が揺れ、小さなモンスターの足元が跳ねた。
そこへ巨大な腕が横薙ぎに迫る。
「危ない!」
小さなモンスターは跳んだ。
腕が身体をかすめ、毛が舞う。
「キュッ!」
着地した瞬間、再び地面を蹴る。
「……!」
架の視線が、小さな身体を追う。
逃げるだけでは追いつかれる。
小さなモンスターは、もう一度懐へ飛び込んだ。爪が走る。
だが、傷を負っても大きなモンスターはびくともしない。
反撃を身を翻してかわすと、巨大な腕がすぐ横の地面を砕いた。
「やめろ……もう、やめてくれ……!」
架の声は震えていた。
#いじめ
名瀬口にぼし
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#魔道具職人
こはる
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逃げ道を塞がれ、小さなモンスターは崩れた瓦礫の隙間へ滑り込む。
その足元が崩れた。
「……っ!」
身体が沈み、片足を瓦礫に取られる。
「立て! 早く!」
架は叫びながら、一歩踏み出した。だが、足元の瓦礫が崩れ、思わずよろめく。近づけない。手を伸ばしても届かない。
引き抜こうとするが、間に合わない。
大きなモンスターの影が頭上を覆った。
巨大な腕が迫る。
「キュッ!」
小さなモンスターは無理やり足を引き抜き、跳んだ。
だが――遅い。
「やめろおおおっ!」
ドンッ!!
巨大な腕が身体を捉えた。
小さな身体が弾き飛ばされ、地面を何度も転がる。背中を石に打ちつけ、瓦礫に叩きつけられて、ようやく止まった。
架は息を呑んだ。
「……っ、あ……」
声が出ない。
架の足が、わずかに前へ出る。
「……キュ……」
小さなモンスターは、震える前足で地面を押した。
立たなければ。
「もういい……逃げろ……」
架は呟いた。けれど、その言葉が届くはずもない。
力を込めると、身体がわずかに持ち上がる。視界が揺れた。
遠くで、大きなモンスターの足音が響く。
また一歩。
近づいてくる。
架は震える手を握りしめた。
「……頼むから……立ってくれ……」
小さなモンスターの前足から力が抜けた。
身体が崩れ落ちる。
立ち上がれない。
それでも、迫る影だけは、はっきりと見えていた。
コメント
1件
第2話、読み終わりました……。小さなモンスターが、自分よりずっと大きな相手に立ち向かう姿、すごく胸に来た。架くんの「やめろ」「もうやめてくれ」って叫びが、どうしても届かないもどかしさと、それでも必死に戦うあの子の姿が、重なって切なかった。最後の「立ち上がれない。それでも、迫る影だけは、はっきりと見えていた」って一文、すごく好き。続きが気になる……。