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ぬいぬい
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人生が変わる日は、生きている中で何回も訪れる。例えば、俳優になることが決まった時。それから________
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ここは、韓国の芸能事務所。俳優とかアイドルだとかが所属しているそこそこ大きな会社。
スタッフ「ハウォンさん」
そうスタッフから呼ばれた。今から、ドラマの撮影だ。
ミン・ハウォン。28歳で性別は男。彼女はいない。ハウォンは大手芸能事務所に所属する俳優であった。
ハウォン「いきます」
そう言って撮影現場に向かう。さすがは国民的俳優。撮影はすぐ終わった。終わったあと、ハウォンは社屋へ向かった。
ため息が出る。この職業についた時から覚悟はしていたが、仕事が多すぎる。疲れる。
自販機で缶コーヒーを買い、ソファに座った。一息を着くことができるこの時間がとても1番と言えるくらいには好きだった。
その時だった。
???「え、、、」
そこには俺より10cmくらい低い若い男子がいた。目は韓国人とは思えないほど色が薄い。ただ、可愛らしい顔立ちをしていた。
???「ハウォンさん、?」
俺を見る目が段々と笑いを含む。そして次にこう言った。
???「久しぶり」
「僕のこと覚えてる?」とでもいうような視線を送ってくるこの子。ハウォンはしっかり覚えていた。
ハウォン「キウ」
その子、、、キウの顔が弾けるように明るくなる。
2人は”7年”ぶりの再会だった。
ハウォンが18歳の時、隣の家に引っ越してきた、あまり一般人には見えない家庭。その母と父はどちらも美しかった。その子供がこの、ユ・キウだった。当時7歳。
ハウォン「なんでここにいるんだ?」
キウ「新人デビューの話聞いてない?」
ハウォンは思考を巡らせる。そういえば、最近この事務所から新しい男性アイドルグループがデビューしたと聞いたかもしれない。忙しくて興味を持っていなかった。
キウ「僕、そこでデビューすることになってさ」
キウ「ここの非公開練習生だったの」
驚いた。だから社屋では一回も合わなかったのか。あと、キウのTシャツには薄く”Noir”というロゴが見える。グループ名なのか。
ハウォン「そうなのか、頑張ったな」
褒めるのは苦手だ。だが、素直に喜べた。
キウ「あ、僕もう行かないと。」
早口でキウはそう言った。なんだか、照れているようだった。
ハウォン「そうか」
キウ「ね、ねぇハウォンさん」
キウ「連絡先、、、繋いでもいい?」
その言葉を最後に、今日は終わった。
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それから、キウとは社屋で何回も会うことが
できた。そして、色々なことを聞いた。
Noirのマンネ(1番年下)としてデビューしたこと。
「キウ」ではなく「カユル」という芸名で活動をしていること。
音楽番組で何冠とったということ。
俺はその姿を見て、相槌をうつだけだった。それでも、キウと話すのは新鮮で楽しかった。キウがどう思っているかは知らないけれど。
キウとは7年ぶりの再会。離れたのは俺の俳優としてデビューが決まったからだ。そこからキウには何も言うことなく、1人で街を出ていってしまった。連絡も何もしなかった。
キウは俺の広告とかを見てこの事務所に来たんじゃないだろうか、とか考えてしまう。
キウは俺に懐いていた。抱きついてくるし、手も繋いできた。
それが嫌ではなかった。ハウォンはむしろ嬉しかったのだ。
それから、ハウォンはキウのことを考える日が多くなっていった。まるで、傍から見たら恋をしているかのように。
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ある日。ずっと雨が続いていた。ハウォンは車で家までの道を走る。幸い、ファンとかには家がバレる気配がない。だから、安心してここら地域では行動できた。
よく行くスーパーマーケットの前を通る。すると、見覚えのある背中が傘も持たずに屋根の下に佇んでいた。
ハウォン「おい」
キウ「うわ!なんでいるの」
ハウォン「家が近くだから」
キウ「そうなんだ」
ハウォン「家、来るか?」
滅多に人を家にあげないことで有名なハウォン。「愛する人とか家族しか家にはあげない」と言っていたハウォン。ハウォンは今初めて自覚なく、人を家にあげようとしているのである。それも幼馴染といえるような男子を。
キウ「行く」
そうキウは応えた。
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家に入るなり、キウは言う。
キウ「部屋何もないね」
ハウォン「うるさい」
そう言われるとキウは照れくさそうに笑った。ハウォンは昔に戻ったようで嬉しかった。
キウ「家と車、ありがとう」
ハウォン「お前なんであそこにいたんだ」
ハウォン「傘も持たずに」
キウ「いや、ちょっと、、、」
キウ「宿舎が近いのもあるんだけど」
キウ「事務所から怒られちゃって」
見るからに落ち込んでいる。ハウォンはそれに関して何も聞かなかった。キウがこういう時、1人にして欲しいことくらい知っているから。でも違った。
キウ「ハウォンさんはここにいて」
ハウォン「なんでだよ」
キウ「ハウォンさんは、、落ち着くから」
そんなこと言われたの初めてだ。キウはところどころよく分からない。今だって自分が言ったのに恥ずかしそうにしている。
ハウォン「そうか」
ぶっきらぼうになってしまった。
キウ「ねぇハウォンさん」
意を決して声を発したのだろうか。力強いような声だ。
キウ「ハウォンさんはその、、、好きな人とかいないの?」
まさかの話題だった。そういう話は出来ればこいつとはしたくなかったのに。
キウ「あ、ほらviolaのサニータさんとか、美人じゃん」
violaとはNoirの先輩グループ、男女混合ということで一躍話題を集めた。
ハウォン「あー、、、」
ハウォン「お前、、、って言ったらどうする?」
口から出てしまった。やや試すような口調になったのが幸い。キウはどのような反応をするだろうか。いつもみたいに子供のような笑顔を見せてくれるだろうか。だが、キウの反応は思っていたのと違った。
キウ「へ、、、」
みるみる頬が染まっていく。まだ丸さの残った唇はキュッと固く閉じられている。
ハウォン「ごめ、、」
キウ「それ!本当なの?」
謝ろうとしたが遮られてしまう。
キウ「ねぇ、本当なの」
何も言えない。言いたくない。かつて、体がこんなにも熱いことはあっただろうか。
察したのか、キウは小さく口を開けてこんなことを言った。
キウ「僕は、、その、ずっと前から好きだよ」
キウ「ハウォンさんのこと、ずっと」
韓国人にしては色が薄い、澄んだ目で見つめられる。今までに見たことが無い瞳。一体どんな気持ちでこの目を向けているのだろう。この子供は。
キウ「返事、くれなくてもいいから」
そう言ってキウは家から出ていこうとする。
もう自分から逃げたくない。
もうこの想いから逃げられない。
そう思ったらキウの細い腕を反射的に掴んでしまった。
キウ「え、何、、」
黙ってしまう。何も言えない。でも、言わなければならない。ここで全て吐き出してしまおうか。想いを伝えて引かれないだろうか。なにしろ、キウは自分より11歳も年下なのだ。だから想いを向けては行けないと思っていたのに。
ハウォン「俺も、キウが好きだよ」
すんなりと口から出てきた。そんな自分に驚いた。ただ、1番驚いているのはやはりキウだった。
キウ「じゃあ」
そう言い残してキウは家を出ていった。外は雨が降っている。傘も持たずに出ていったのだ。いつも、通常なら追いかけていくのに、今日だけは追いかける気にはなれなかった。
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社屋から家に向かっている時。夕方。愛おしい、可愛らしい背中が見えた。今日も今日とて雨。その背中は傘を持っていないらしかった。先日のことがあってからキウとは一言も話していない。その前に繋いだ連絡先も動いていなかった。
一言にいえば辛かった。
世の中の恋をする人達というのはこういうものなのだろうか。キウは多分本気。俺もこの想いをついに認めてしまった。だから、今ここでどう動くのかなんて考えもしなかった。
ハウォン「キウ」
キウ「う、わ、、」
ハウォン「家、来るか」
キウ「、、、」
キウは小さく頷いた。いつもなら笑顔を向けてくれるのに、今は頬を赤く染めて小さな動きをするのだ。余計に緊張してしまう。
家に着いて、キウは玄関から動こうとしなかった。無理をして来させてしまったか。俺としてはこの前のことを無かったことにはしたくなかった。
ハウォン「キウ」
キウ「へぁ、なに」
キウに問う。
ハウォン「この前の本気なのか」
キウは耳まで赤くして手のひらで顔を隠した。そして小さく頷いた。その姿は、自覚した今では酷く愛おしく見える。
ハウォン「そうか、、」
キウ「ハウォンさんこそ」
キウ「この前の、本気なの」
そう言われるとなんて言えばいいのか分からない。無かったことにしたくなかったのは俺のはずなのに。
ハウォン「本気だよ」
キウ「じゃあ、どうするの」
ハウォン「______。」
その日はそれで終わった。キウが帰る頃には雨は止んでいて夜だった。
2人をずっと陰で見ていたかのように、満月が顔をのぞかせていた。
コメント
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ゆいぽんさん、読ませていただきました🌷 7年ぶりの再会から始まるお話、冒頭から引き込まれました。特に雨のシーンが何度も出てきて、雨が二人の気持ちの象徴になってるのが素敵でした。ハウォンが無意識にキウを家に招くところとか、「好きな人いないの?」って聞くところのドキドキしましたね。 最後の満月で静かに締める余韻、とても好みです。続きが読みたくもありつつ、この1話で綺麗に畳めるバランスもいいなって思いました。素敵な作品をありがとうございます🤍