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#高校生
第83話 「もう一度、甲子園へ」2023年8月。
夏の甲子園。
柳城高校は再び聖地へ戻ってきた。
去年は悔し涙を流した。
春も宮城育英に敗れた。
だからこそ。
今年の夏は違った。
選手たちの表情に迷いはない。
甲子園練習の日。
塁はマウンドへ向かう。
ゆっくりと土を踏む。
史陽はショートの守備位置へ立つ。
二人とも無言だった。
だが。
同じことを考えていた。
最後の甲子園。
やり残しはしたくない。
その夜。
宿舎。
組み合わせ抽選会。
選手たちがテレビを囲む。
柳城の初戦が決まる。
相手は四国代表。
高松学院高校。
堅実な野球をする好チームだった。
福間監督が言う。
「相手を見て野球をしてはいけません」
選手たちが頷く。
「自分たちの野球をしてください」
いつもの福間監督だった。
大会開幕。
柳城は順調に勝ち上がる。
一回戦。
高松学院高校。
7対1。
快勝。
二回戦。
山陰代表。
出雲商業高校。
4対2。
接戦を制する。
三回戦。
北信越代表。
北陸工業高校。
6対0。
塁が完封勝利。
そして準々決勝。
相手は春のベスト4。
大阪桐陽高校。
全国屈指の強豪だった。
試合は延長戦にもつれ込む。
延長十一回。
二死満塁。
打席は史陽。
カウント2ボール2ストライク。
投手が投げる。
史陽が振り抜く。
打球は三遊間。
ショートが飛び付く。
届かない。
レフト前ヒット。
サヨナラ。
柳城高校。
準決勝進出。
選手たちが史陽へ駆け寄る。
だが。
史陽が最初に見たのは塁だった。
塁も笑っていた。
兄弟だから分かる。
ここまで来た。
あと二つ。
その夜。
宿舎。
テレビで準決勝の組み合わせが発表される。
柳城高校。
対。
白鷺学園高校。
そして反対の山。
宮城育英高校。
準決勝進出。
部屋が静かになる。
誰も口には出さない。
だが。
全員が思った。
決勝で待っているかもしれない。
二度敗れた相手。
宮城育英。
塁は窓の外を見る。
甲子園の夜空。
その表情は落ち着いていた。
もう追いかけるだけの存在ではない。
もし決勝で会うなら。
今度こそ。
柳城高校の夏は佳境を迎えていた。
第84話 終
コメント
1件
第83話、熱かったッス……! 特に塁と史陽が無言で同じこと考えてるところ、兄弟ならではの空気感がヤバかったですね。サヨナラの瞬間、真っ先に塁を見た史陽にグッときました。決勝で因縁の宮城育英と当たるかもしれない展開、震えます。続きが気になりすぎる……!