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#高校生
第84話 「約束の場所へ」
2023年8月。
夏の甲子園。
準決勝。
柳城高校―白鷺学園高校。
試合当日の朝。
宿舎の食堂は静かだった。
ここまで勝ち上がった4校。
どこが優勝してもおかしくない。
そんな大会になっていた。
塁は窓の外を見る。
快晴。
去年の雨はない。
春の曇り空もない。
真っ青な空だった。
福間監督が選手たちを見る。
「楽しんでください」
それだけだった。
もう多くを語る必要はなかった。
選手たちは十分に成長していた。
試合開始。
白鷺学園も強かった。
序盤から一歩も引かない。
三回終了。
1対1。
互角。
五回。
白鷺学園が勝ち越す。
1対2。
甲子園がざわつく。
だが。
柳城ベンチは落ち着いていた。
六回裏。
史陽がヒットで出塁。
盗塁成功。
続く打者の送りバント。
一死三塁。
スクイズ。
成功。
2対2。
再び同点。
試合は終盤へ。
八回裏。
二死二塁。
打席は史陽。
相手ベンチは敬遠も考える。
しかし勝負を選ぶ。
初球。
史陽が振り抜く。
打球はセンター前。
二塁ランナー生還。
3対2。
柳城勝ち越し。
九回表。
最後の守り。
白鷺学園も執念を見せる。
二死一、二塁。
一打逆転。
甲子園全体が静まり返る。
打席は四番。
塁が深呼吸する。
史陽がショートから声を掛ける。
「あと一人や!」
塁が頷く。
初球。
ストライク。
二球目。
ファウル。
追い込む。
三球目。
外角低め。
打者が振る。
ショートゴロ。
史陽の正面。
捕る。
一塁へ。
アウト。
ゲームセット。
柳城高校3-2白鷺学園高校。
決勝進出。
甲子園の歓声が響く。
選手たちが抱き合う。
塁はマウンドに立ったまま空を見上げた。
史陽が駆け寄る。
「行くぞ」
塁が笑う。
「ああ」
試合後。
決勝の組み合わせが発表される。
宮城育英高校。
反対の山を勝ち上がっていた。
球場がどよめく。
夏。
春。
そして夏。
三度目の対決。
宿舎へ戻るバス。
誰も騒がない。
決勝だからではない。
相手が宮城育英だからだった。
夜。
塁のスマートフォンが鳴る。
啓介からだった。
『決勝やな』
短い。
相変わらずだった。
その後にもう一通。
『楽しめ』
塁は思わず笑った。
何年経っても同じだ。
返信する。
『勝って帰る』
送信。
窓の外には甲子園の夜空。
明日。
因縁に終止符を打つ日が来る。
柳城高校。
宮城育英高校。
全国の高校野球ファンが待ち望んだ決勝戦。
運命の舞台は整った。
第85話 終
コメント
1件
第84話、熱かったです…!序盤から互角の展開で、六回の同点、そして八回の史陽の勝ち越し打、本当に痺れました。九回裏の守りで塁がマウンドから空を見上げたシーン、ここまでの彼の成長と仲間を思うと胸が熱くなりました。啓介からの「楽しめ」も最高です。三度目の対決、決勝が待ち遠しいです!