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ブーブッブー ブーブッブー…
何度か無視されたアラームが気づいてくれないことに不貞腐れたかのように鳴り響いた。
俺は1度背をのばし、あくびをしながらアラームを止めると、何件か溜まっている通知の処理をし、ベットから降りた。
まだ意識がはっきりとしないまま、階段をゆっくり降りていくと、聴き馴染みのある声が呼びかけてきた。
「おはよう。遅かったね。休みの日だからってこんなに放置れると寂しいなぁ…お兄ちゃん…」
この少しブラコン臭をぷんぷん匂わせているのは、〔水無瀬 泉《ミナセ イズミ》〕。
兄である。
「おはよ…母さんは?」
挨拶だけ返し、兄の言葉のほとんどを無視する。
すると兄は少ししょぼくれながら
「忘れたのかい?母さんは社員旅行で4日ほど留守にするらしいよ。ゴールデンウィークだしね。女手1つで育ててくれてるんだ。少しぐらい楽しんできて欲しいよね。」
そういえばそうだったか。母の少し心配そうにしていた顔が脳裏によぎった。
「そうだね。心配かけないようにしないと…」
「僕がいるんだから大丈夫だよ。これから4日間2人きりの生活を楽しもうね??うみ♡」
そう言ったあとの笑顔がいつもとは少しばかり違うような気がして、妙な不信感をいだいたが、特に気にする必要は無いと思い隅の方に不信感を放り投げた。
──────
「ところでうみ。今日はどこかに行く予定はある?」
朝食代わりのアイスキャンディーを食べていると、イズミが問いかけてきた。
「うん、一応。夕方から友達とゲーセンに行く予定。」
そう俺が答えるとイズミは、突然真顔になって
「は…?僕との…僕との大事な!…大事な休日だっていうのに…他の子との約束を入れちゃったわけ…??許せない…!!!!」
唐突に発せられた大きな声に驚き固まっている俺にイズミは静かにちかよってきた。
すっとイズミの手が俺の顔に添えられる。
冷たいようで暖かいその手にゆっくりと頬や口、輪郭を撫でられる。怖いような心地よいような、なんとも言えない不思議な感覚に襲われる。
「ねぇ、僕の目を見て?うみ。」
言われるがままイズミの目を見る。吸い込まれるかのような真っ黒い瞳。いつもは気にならないようなその瞳が、ひどく美しく、そして魅力的に見えた。頭もぼーっとしてきて、色々考えることが困難になってきた。
夢中になるように瞳を見つめている俺にイズミは愛おしいものでも見つめるように目をほそめて、
「そう…♡いいこだね、うみ♡ねぇ、うみ?友達との約束なんてキャンセルしてよ…友達なんかよりさぁ?♡僕といぃーっぱい楽しいことしよ?♡」
「たのしぃこと…??」
ぼーっとする頭で必死に言葉をかえす。
「そう♡楽しいこと♡」
俺は操り人形の糸が切れたかのように、首を縦に振った。
アイスキャンディーが床に落ちる音が溶けて床に落ちる音がした。
「いいこだね♡うみ♡」
チュっという音がリビングに響いた。
イズミの唇と俺の唇が触れ合うのを感じた。
「あ、そうだ。友達への断りの連絡。僕の前でしてよ。できるでしょ?」
俺はそっとスマホを取り出し、連絡先を開く。
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悪い。今日、遊べなくなった。>
<えぇ!マジかよ!!!!
うみがドタキャンとかめずらし〜笑
まぁ、しゃーなし!!許したる笑‼️
ありがとう>
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断った証拠として、イズミにスマホの画面を見せる。
「うん♡おっけーだよ♡ちゃんとできてえらいえらい♡」
イズミの機嫌が良さそうで嬉しい。そんなことで頭が埋め尽くされる。
「お兄ちゃん♡楽しぃこと教えて…??♡」
そう言った俺を驚いたように見つめ、その後にこにこしながら
「それじゃあ楽しいこと、しよっか♡」