テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……でも、殿下と私では身分が不釣り合いで……」
彼は王族、しかも世継ぎで、私はただの平民。
あまりにも身分が違いすぎる。
まさに雲泥の差だ。
途端、クラウスの目が鋭くなった。
「そんなことを君に言ったのは誰だ」
クラウスは地を這うような声で言う。
エーファはぎょっとした。
目だけで人を殺せそうだ。
エーファは慌てて首を横に振る。
「だ、誰にも言われてないです!」
するとクラウスの目はやわらかくなった。
心底安堵したように言う。
「そうか……。良かった……」
かと思えば、クラウスは不敵に笑い、恐ろしいことを口にした。
「もし言われても、君にそんなことを言ってくる者に生きる権利などないのだから、殺せばいい。不敬罪で簡単に首を刎ねられるぞ」
エーファは再び驚く。
「こ、殺すのは駄目です!」
「そうか……」
どこか残念そうに言うクラウスに、エーファはびっくりしてしまう。
私は恐ろしい人に恋をしてしまったのかもしれない。
クラウスは咳払いをした。
「とにかく、問題があれば俺が何とかする」
それでどうだ?と彼は尋ねる。
エーファは考えた。
確かに彼は王族で、たいていのことなら権力でなんとかできるのかもしれない。
しかし、彼に任せっきりでは駄目だ。
「……いえ、問題は一緒に乗り越えましょう」
クラウスは驚く。
そして期待に満ちた声で言った。
「それは、俺と恋人になってくれるということか?エーファ」
エーファはそこで先程の発言が交際する前提であることに気づき、顔を赤くする。
「あっ、え、えっと、それは……」
両思いなのに決めきれない自分がいる。
不安が拭いきれないのだ。
どもるエーファに、クラウスはやわらかく笑む。
「好きだ、エーファ。……君は俺のことが嫌いか?」
そんなわけない。
こんなに優しいひとを、嫌いなわけない。
寧ろ……。
エーファは首を横に振り、赤らめた顔で言う。
「私も殿下のことをお慕いしております……」
照れて少し小さい声になってしまった。
しかしクラウスにははっきり聞こえたらしい。
クラウスは嬉しそうに笑む。
「では、俺の恋人になってくれるか?」
エーファの顔がますます赤くなった。
ああもう、言うしかない。
「……私で良ければ、よろしくお願いします……」
それを聞いた途端、クラウスは再度エーファをぎゅうっと抱きしめる。
「で、殿下……?」
「クラウスだ」
「く、クラウス様……」
すかさず訂正された。
抱きしめたまま動かないクラウスに、エーファは首を傾げる。
クラウスは緩みに緩みまくったこのだらしない顔を見られたくなかった。
嬉しくて、彼女が愛しくて、大好きで……。
表情の緩みがやっと収まり、クラウスはエーファの身体を離す。
エーファは赤い顔でクラウスを見上げていた。
不思議そうな、どこか困ったような顔だ。
それがまたかわいくて。
彼女への想いがあふれる。
クラウスはエーファの額に口づけた。
エーファは額にやわらかい物が一瞬当たったのを感じた。
クラウスがエーファから顔を離すと、彼女はさっきよりも赤面し、澄んだ新緑色の瞳を丸くさせている。
そして小さな唇をぱくぱくと開閉させた。
彼女はどこまで自分を魅了するのだろうか。
クラウスはもう一度口づけたかったが、ぐっとこらえる。
と、彼女の首元で自分の瞳と同じ色の宝石が輝いていることに気づいた。
そして、嬉しくなる。
「……これ、着けてきてくれたんだな」
クラウスがそう言うと、エーファははにかんだ。
「はい。とても素敵で、気に入っています。ありがとうございます」
良かった。
彼女が着けてくれて。
クラウスは笑う。
「気に入ってくれたなら良かった。……あと、言いそびれていたが」
クラウスはエーファの白い手を取った。
エーファは首を傾げる。
何をするかと思えば……、クラウスはエーファの手の甲に口づけを落とした。
まるでフリードリヒの痕を上書きするように。
エーファは目を見張る。
「きれいだ、エーファ」
クラウスの白皙は月の光に照らされ、瞳は黄金に輝いていた。
そう、まるでこのトパーズのように。
エーファはただただ嬉しくて、ふわっと笑う。
「ありがとうございます。クラウス様もよくお似合いです」
クラウスは目を眇めて笑みを深めた。
「ありがとう」
ふたりとも幸せな気持ちで満たされる。
「そろそろ夜会も終わるから戻ろう」
「はい」
そうしてふたりは手をつないで会場に戻った。