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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第102話 〚名乗られる側〛
― 澪視点 ―
昼休みの終わり。
席を立ったところで、
海翔が声をかけてきた。
「澪、ちょっと」
その後ろに、
見覚えのある三人が立っている。
――海翔の友達。
視線が合う前に、
一人が前に出た。
「神崎瑠斗。(かんざき ると)
見れば分かると思うけど、
俺、顔がいい」
自信満々。
鏡を取り出して、
前髪を整える。
(……本当に言うんだ)
驚いている間に、
もう一人が軽く手を挙げた。
「田中悠真。(たなか ゆうま)
普通。
どこにでもいるタイプ」
声も表情も、
本当に普通。
安心するくらい、
普通。
最後に、
少し距離を詰めてきた男子が
笑った。
「佐藤陽翔。(さとう はると)
チャラく見えるでしょ」
自分で言うんだ、と思ったら、
続けてこう言った。
「でも、
空気は読むよ」
三人とも、
変に近づいてこない。
それだけで、
少しだけ肩の力が抜けた。
海翔が、
一歩前に出る。
「澪に、
伝えておきたいことがある」
一瞬、
胸がきゅっとした。
でも、
次の言葉は
想像していたものと違った。
「俺ら、
澪を守る側に回る」
瑠斗が、
さらっと言う。
「別にヒーローじゃない。
俺は見栄え担当ね」
悠真が、
淡々と続ける。
「近くにいるだけ。
何かあったら、
人が増えるって思ってくれれば」
陽翔は、
少しだけ声を落とした。
「気づかなくていい。
気づかれない方が、
楽な時もあるから」
私は、
すぐに返事ができなかった。
守る、という言葉が、
前より重くない。
押しつけがましくもない。
選択肢を、
奪ってこない。
「……どうして、
私に言うの?」
そう聞くと、
海翔が答えた。
「知らないままより、
知ってた方が
安心できると思った」
瑠斗が、
にやっと笑う。
「あとさ、
守ってる側が
勝手に満足するの、
一番ダサいから」
悠真が、
小さくうなずく。
「了承は、
必要」
陽翔は、
肩をすくめた。
「断ってもいいよ。
その場合は、
距離を変えるだけ」
私は、
三人の顔を見た。
どれも、
真剣だった。
「……お願いします」
そう言うと、
三人とも、
同時に力を抜いた。
「了解」
「分かった」
「オッケー」
それぞれ、
言い方は違う。
でも、
同じ方向を見ている。
その瞬間、
私は初めて思った。
守られるって、
こんな形もあるんだ。
前に立たない。
抱え込まない。
でも、確かに居る。
私は、
少しだけ息を吸って、
ちゃんと吐けた。