「お店によって違いますけど。万は簡単に飛んでいきますね!」
「えええ!春人さんのこと本気で好きってこと?」
華ちゃんは、私の言葉に頬を膨らませてみせると
「違います。恋愛対象として好きだなんて想うわけないじゃないですか?てか、好きって想っちゃいけないんですよ。私はただのお客さんなんですから!それくらいわかってます!でも、また会いたいんです!癒されたいんです」
こうやって女の子は癒しを求めに行くんだろうな。
「華ちゃんがお店に行きたいなら、私は止めないよ。私たちそんなにお給料が良くないんだから、ほどほどにね」
「わかってます。ていうか、先輩は誰か好きな人いなかったんですか?一緒に行きましょうよ!」
華ちゃんは私の腕を引っ張った。
「行かないよ!もう絶対行かない!」
行ったら、瑞希くんになんて思われるか。
というか、瑞希くんを指名して通うなんて破産しちゃう。かといって、華ちゃんと一緒だからって適当な人を指名したら、怒るんだろうな。
「つまんないのー。じゃあ、一番カッコいいって思った人は誰ですか?」
そんな人、一人しかいない。
「み……、流星さん!」
華ちゃんの顔がひきつったのがわかった。
「げぇ、先輩ってハードルの高い人選ぶんですね」
「もう行かないからいいじゃん。カッコいいと思った人でしょ?流星さんだけだよ」
どうしてだろう。
彼の話をするだけで顔が紅潮してしまう。
「もういいです、一人で行って来ます。また行ってきたら先輩、話聞いてくださいね?」
お店の様子とか、瑞希くんのお客さんの話なんてあんまり聞きたくないけど
「うん。わかった」
私は返事をするしかなかった。
それから、瑞希くんとはプライベートのスマホで連絡を取り合っていた。
生活リズムが違うので、夜少しのやり取りになってしまうが
<お疲れ様!ゆっくり休めよ!>
<葵のご飯が食べたくなってきました(ノД`)>
そんな二・三通のやり取りが楽しい。
<今日は奢らされて、焼肉に行って来ました>
そんな文章とともに送られてきた写真には、瑞希くん、春人さん、歩夢さん?だったかな?が映った食事の写真が送られてきた。
「これが華ちゃんのお気に入りの人」
確かにカッコいいな。
お店の時も優しかったし。
贅沢な写真だな、そんなことを思いながら、眠りについた。
……・……………・
「ねぇ、流星!あの子とはどうなったの?」
出勤し、予定を確認していると春人が話しかけてきた。
「んー?毎日連絡してるよ」
こまめに連絡はできなかったが、連絡すれば返信してくれるし、葵が言ってくれたようにゆっくり距離を縮めていけばいいと思う。
焦りすぎはよくないな。
「そっか。お店には呼ばないんでしょ?例え奢りだとしても?」
「呼ばない」
お客さんとして呼ぶつもりはない。
一回でも呼んでしまったら、葵のことだからいろんなことを考えて、俺から離れて行ってしまうんじゃないかと感じる。
「流星、面白いこと教えてあげようかー?」
「面白いこと?」
「今日ね、流星のお気に入りの子と一緒に来た後輩ちゃん、華ちゃんって言ったかな?俺、指名で来てくれるんだって!連絡もらった!」
連絡先、交換してたんだ。
「良かったな。客が増えて」
「いろいろ聞いちゃおうかな?流星のお気に入りの子のこと?」
「はぁ!?」
「流星も聞きたかったらおいでよ。俺のところ」
開店して一時間くらいあとだろうか。
葵の後輩の女の子が一人で現れた。
テーブルに案内されるも、春人は今違う子を接客中だし、すぐに行けないだろう。
しばらくヘルプのホストが彼女と話していた。
春人がすぐ行かなくても、意外と怒らないんだな。
観察していると、ホストクラブには慣れているように見えた。
俺も違うお客さんを接客中だったため、あっちの様子ばかり気にしてはいられないが、やっぱり気になってしまう。
「流星ー?聞いてる?私の話」
「あっ、うん。聞いているよ。大変だったね?それでどうしたの?」
「それでねー、上司がー」
適当に流してはいけないと思うが、お客さんの愚痴を相槌で流す。彼女の飲み物が減っているのを見た。
「なんか飲む?お酒、あんまり強くなかったよね。アルコール少なめのカクテルを作ってもらおうか?」
「えっ!流星、覚えててくれたの?嬉しい」
腕に抱きつかれた。
お客さんの特徴、情報などを覚えることは得意な方だと思う。
何人もいるお客さんの中で、君のことは覚えているということを伝えると、ただそれだけで特別感に浸る子も少なくはないから。些細なことでも覚えるよう努力した。
ヘルプに指示を出し、ドリンクを依頼する。
「流星って、人気なのに気を遣ってくれるし、優しいし、無理にオーダーとらないし。そういうところが好き」
「ありがとう、褒められると嬉しい」
俺の腕に掴まっているお客さん、同時に自分の胸も押し付けてくる。こういう子、多いんだよな。
全然何も感じないけど。
もし葵だったら……。
なんて想像してしまう。
コメント
1件
瑞稀さんが、葵ちゃんのこと凄い溺愛してる感じがして、いいなぁって思います🫶