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話す事ないから
スタート.ᐟ.ᐟ
第2話「悪役令嬢の嫌がらせ」
――昼休み。
けちゃ「ちぐー! 一緒に食べよう!」
けちゃが笑顔でちぐに声をかける。
ちぐ「うん!」
ちぐも嬉しそうに頷いた。
その隣には、ぷりちゃんとまぜたん。
そして、あと。
五人で昼食を食べようとしていた、そのとき。
あき「……あら」
冷たい声が響いた。
あき「楽しそうね」
ちぐ「……あきちゃん」
ちぐの表情が少しだけ曇る。
あきは、ちぐの机の前まで歩いてきた。
あき「あなた、誰の許可を得てそこに座っているの?」
ちぐ「え……?」
あき「そこ、私のお気に入りの場所なのだけど」
ちぐ「ご、ごめんなさい……」
ちぐが立ち上がろうとする。
しかし――。
あと「ちぐ」
あとが止めた。
あと「動かなくていいよ」
ちぐ「でも……」
あと「ここは誰の席でもないだろ」
あとがあきを見る。
あと「だから、ちぐが座ってても問題ない」
あき「……あなた、本当に生意気ね」
あきが睨む。
あき「私はこの学園で――」
あと「知ってる」
あとが遮る。
あと「悪役令嬢として有名なんだろ?」
あき「……!」
あきの眉がピクリと動く。
――悪役令嬢。
その言葉を聞いた瞬間、前世の記憶が蘇る。
ゲームの中で、何度も言われた言葉。
『悪役令嬢・あき』
『主人公・ちぐを虐める』
『攻略対象たちに嫌われる』
あき「……そうよ」
あきは冷たく笑った。
あき「私は悪役令嬢」
そして、ちぐの弁当箱を見る。
あき「そのお弁当――」
ちぐ「……?」
あき「美味しそうね」
ちぐ「あ、うん……!」
ちぐが少し嬉しそうに笑う。
ちぐ「よかったら――」
あき「いらない」
ちぐ「……え?」
あき「そんな庶民みたいなお弁当」
あきはそう言って、ちぐの弁当箱を手に取った。
ちぐ「……あ」
ぷり「やめろ!」
293
なつω
1,799
なつω
7,563
244
ぷりが立ち上がる。
しかし。
ちぐ「ぷりちゃん、大丈夫」
ちぐが止めた。
ちぐ「私が悪いから……」
ぷり「ちぐは悪くないだろ」
ちぐ「でも……」
そのとき。
まぜがあきの手から弁当箱を取り上げた。
まぜ「これ、返す」
ちぐ「……まぜたん」
まぜ「ちぐが作ったものだろ」
ちぐ「……」
まぜは弁当箱をちぐへ渡す。
まぜ「大切に食べろよ」
ちぐ「ありがとう……」
ちぐが微笑む。
その笑顔を見たまぜは、ほんの少し頬を赤くした。
まぜ「……別に」
それを見ていたけちゃが、くすっと笑う。
けちゃ「まぜち、照れてる?」
まぜ「照れてない」
けちゃ「顔赤いよ?」
ちぐ「……けちゃ」
ちぐ「ふふっ」
二人は楽しそうに笑い合う。
――あきは、その様子を見ていた。
あき「……」
ゲームでは、こんな場面はなかった。
まぜとけちゃは、もっと後に恋をする。
それに――。
あき「……どうして?」
あきは小さく呟く。
あき「どうして、こんなに展開が違うの……?」
ちぐ「……あきちゃん?」
ちぐが不思議そうに見る。
あき「何でもないわ」
あきはそっぽを向く。
そして、そのまま教室を出ようとした。
しかし。
あと「待って」
あとが呼び止める。
あき「何?」
あと「もう、ちぐに嫌がらせするのやめてくれない?」
あき「……嫌」
あと「なんで?」
あき「気に入らないから」
あきは振り返る。
あき「私は、ちぐが嫌いなの」
ちぐ「……」
ちぐが俯く。
あとが心配そうにちぐを見る。
そして――。
あと「……分かった」
あとが静かに言う。
あと「なら、俺がずっとちぐのそばにいる」
ちぐ「あとくん……」
あと「何をされても、俺が守る」
ちぐの頬が赤くなる。
ちぐ「……ありがとう」
二人が見つめ合う。
あきはその二人を見て――。
あき「……勝手にすれば」
教室を出ていった。
* * *
廊下。
あき「……おかしい」
あきは一人で歩いていた。
あき「絶対におかしい」
ゲームのストーリーなら――。
ここであとがあきを嫌いになる。
そして、ちぐとの距離が縮まる。
それなのに。
あき「……もう両思いじゃない」
あきは頭を抱える。
あき「最初からじゃん……!」
しかも――。
あき「まぜとけちゃまで……」
あきはため息をつく。
あき「ゲームでは、そんな設定じゃなかったのに」
その瞬間。
???「あき様」
後ろから声がした。
振り返ると、見知らぬ少女が立っていた。
あき「何?」
???「少し、お話があります」
あき「……?」
少女は周囲を確認してから、小さな声で言った。
???「あなた……」
???「本当に、この世界の人間ですか?」
あき「…………え?」
あきの顔から、笑みが消える。
あき「どういう意味?」
少女は答えなかった。
ただ――。
???「あなたが転生してきたことを、知っている人がいます」
あき「……!」
あきの心臓が大きく跳ねた。
あき「誰なの?」
少女は静かに微笑む。
???「それは――」
???「まだ、秘密です」
そう言って、少女は去っていった。
あき「…………」
あきはその場に立ち尽くす。
自分が転生者だと知っている人間。
そんな存在は――。
ゲームには、一度も登場していなかった。
あき「……この世界」
あきは呟く。
あき「一体、何なの……?」
終了.ᐟ.ᐟ
おつむぅ.ᐟ.ᐟ
コメント
1件
おつむぅ!第2話、めっちゃ面白かったわ! あき、悪役令嬢って立場はあるけど、ゲームと違う展開に戸惑ってて、実はけっこうピュアなとこあるよな。あとに「ずっとそばにいる」って言われたちぐの反応とか、まぜたんが赤くなるところとか、グッときたわ。 最後の「転生者を知ってる人物」ってのが気になりすぎる!ますます続きが読みたくなった🔥