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スタート.ᐟ.ᐟ
第3話「悪役令嬢、西園寺あき」
あき「……本当に、誰なの?」
放課後の廊下。
西園寺あきは、一人で立ち尽くしていた。
先ほどの少女の言葉が頭から離れない。
――『あなたが転生してきたことを、知っている人がいます』
あき「……ありえない」
あきは小さく呟いた。
あき「この世界はゲームの世界なのに……」
前世では何度もプレイした。
登場人物も。
ストーリーも。
イベントも。
全部知っている。
だからこそ――。
あき「こんな展開、知らない」
* * *
その頃。
教室では――。
けちゃ「ちぐ、帰ろう!」
けちゃが笑顔で声をかけていた。
ちぐ「うん!」
ちぐ――天宮ちぐが立ち上がる。
その隣には、まぜがいる。
ちぐ「けちゃ、今日どこ行く?」
けちゃ「えっと……」
けちゃが少し考える。
まぜ「一緒に帰ってもいい?」
まぜが小さく笑う。
ぷりがそれを見て吹き出す。
ぷり「お前ら、毎日一緒に帰ってるじゃん」
けちゃ「いいの!」
けちゃが笑う。
「だって……」
けちゃがまぜを見る。
けちゃ「まぜと一緒にいると楽しいから」
「……!」
まぜの顔が赤くなる。
まぜ「……俺も」
「ふふっ」
二人は照れながら手を繋いだ。
ぷり「はいはい、ごちそうさま」
ぷりが笑う。
その隣では――。
ちぐ「あとくん」
ちぐがあとを呼ぶ。
ちぐ「一緒に帰ろ?」
あと「もちろん」
あとが嬉しそうに笑う。
あと「……今日も一緒にいられて嬉しい」
ちぐ「私も」
二人は自然に並んで歩き始めた。
ぷり「……」
ぷりはそんな二組を見ながら、肩をすくめる。
ぷり「俺だけ一人じゃん」
ぷり「まあ、いいけど」
ぷりには好きな人はいない。
だから、今はみんなと一緒にいられるだけで十分だった。
* * *
――その頃。
西園寺家。
あき「ただいま」
あきが屋敷に戻ると、執事が駆け寄ってきた。
すみれ「お帰りなさいませ、あきお嬢様」
あき「……ねぇ」
すみれ「はい?」
あき「あの子について調べて」
すみれ「どなたでしょうか?」
あき「今日、学園にいた子」
あきは少女の特徴を伝える。
すみれ「分かりました」
あき「それから――」
あきは少し迷った。
あき「天宮ちぐについても調べて」
すみれ「天宮様を?」
あき「ええ」
すみれ「かしこまりました」
執事が頭を下げる。
あきは自分の部屋へ向かった。
あき「……天宮ちぐ」
ベッドに座りながら呟く。
本来なら、自分はちぐのことを虐める。
そして、攻略対象たちに嫌われる。
でも――。
あき「あととちぐは、もう両思い」
あき「まぜとけちゃも、両思い」
あき「ぷりには好きな人がいない」
あき「……全部、ゲームと違う」
あきは窓の外を見る。
あき「この世界で何が起きてるの……?」
その瞬間。
コンコン。
すみれ「お嬢様」
あき「何?」
すみれ「調査結果が届きました」
あき「……早いわね」
あきは扉を開ける。
執事から一枚の紙を受け取った。
すみれ「天宮ちぐについては、特に問題はございません」
あき「そう」
すみれ「ですが――」
執事が一枚の別の紙を差し出す。
すみれ「先ほどの少女について、奇妙なことが」
あき「……何?」
あきが紙を見る。
そこに書かれていた名前。
あき「…………」
あきの目が見開かれる。
あき「この名前……」
知っている。
ゲームの攻略対象でもない。
モブでもない。
なのに――。
あき「なんで……」
その少女の名前は。
『神楽坂りん』
前世のゲームには、絶対に存在しなかった。
* * *
翌朝。
学園。
ちぐ「あきちゃん、おはよう!」
ちぐが笑顔で声をかける。
あき「……おはよう」
あきは素っ気なく答える。
ちぐ「今日、一緒に――」
あき「嫌」
ちぐ「……そっか」
ちぐは少し寂しそうに笑う。
そこへ、あとがやってくる。
あと「ちぐ」
ちぐ「あとくん!」
ちぐの顔が一気に明るくなる。
あと「おはよう」
ちぐ「おはよう!」
二人が笑い合う。
あきはそれを横目で見る。
あき「……」
すると。
りん「西園寺さん」
背後から声がした。
振り返る。
あき「…………!」
そこに立っていたのは――。
昨日の少女。
神楽坂りん。
あき「あなた……」
りんは笑顔を浮かべる。
りん「おはようございます、西園寺あき様」
あき「……何の用?」
りん「別に」
りんは、あきの耳元へ顔を近づける。
りん「ただ――」
りん「あなたが転生者だってこと、誰にも言わないでくださいね」
あき「…………!」
あきは凍りついた。
りんは何事もなかったかのように、その場を去っていく。
あき「……待って!」
あきが追いかけようとした瞬間。
先生「西園寺さん?」
教師の声が響く。
先生「もうすぐ授業ですよ」
あき「……はい」
あきは立ち止まった。
あき「…………」
神楽坂りん。
一体、何者なのか。
そして――。
なぜ、自分と同じ秘密を知っているのか。
あき「……絶対に調べてやる」
悪役令嬢・西園寺あき。
その目に、初めて強い決意が宿った。
終了.ᐟ.ᐟ
おつむぅ.ᐟ.ᐟ
今月中には、完編される予定です.ᐟ.ᐟ
コメント
1件
第3話お疲れさまでした! 「全部、ゲームと違う」ってあきが呟くところ、すごく胸に響きました。転生者なのに知らない展開が起きて、しかも秘密を知っている人物が現れる…。りんさんの「言わないでくださいね」の距離感が絶妙で、一気に物語が引き締まりましたね。あきが初めて「調べてやる」と決意したラストも、続きが気になりすぎます…!