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「ありがとう。……来てくれて」
エストニアは静かに、しかしはっきりと話す。
声は柔らかいのに、どこか距離を感じさせる響きがある。
それがベラルーシには、いつも少しだけ怖かった。
2人は小さなテーブルを挟んで紅茶を飲む。
ベラルーシは、自分の視線が彼女に吸い寄せられていくのを止められなかった。
いつも冷静で、知的で、誰にも媚びず、誰にも染まらない――
そんなエストニアに、ベラルーシはずっと惹かれていた。
でも、その想いは心の中に閉じ込めてきた。
「言えば壊れてしまう」と思っていたから。
だけど今日は――言わなければいけない気がした。
「……ねぇ、エストニア」
ベラルーシの声は、少し震えていた。
「何?」
「……ずっと前から……あなたのことが、好きなの」
言った瞬間、空気が凍ったように感じた。
エストニアは紅茶のカップを持ったまま、動かなかった。
答えがない時間が、ひどく長く感じられる。
ああ、やっぱり……早すぎたかな……。
ベラルーシが目を伏せようとした、その時。
「……ごめん」
その言葉に心がしんと音を立てて崩れそうになった――
「……私も、言うタイミングをずっと逃してた。……好きよ、ベラルーシ」
静かな声だった。けれど、それは確かに彼女の真っ直ぐな言葉だった。
「え……?」
ベラルーシの目が、ほんのわずかに見開かれる。
エストニアは恥ずかしそうに視線を逸らしていた。
「こんなに感情をどう言葉にしていいか、分からない。でも……あなたを見てると、胸があたたかくなるの。私にはそれが“好き”なんだって……分かる」
その言葉に、ベラルーシの頬がゆっくりと赤くなっていった。
「……私、あなたのそういうところも、好き……」
エストニアが微笑んだ。ほんのわずか、けれど確かに。
2人の間にある距離は、確かに少しだけ、近づいていた。