テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
31
翌朝、病室には静かな光が差し込んでいた。
カーテンの隙間から差し込む光が、ゆっくりとベッドの上を照らしていく。
どこか穏やかで、何も起きていないような朝だった。
看護師がいつものように様子を見に来ると、彼女はすでに動いていなかった。
最初はただ眠っているように見えた。
だが、呼吸の気配がないことに気づくまで、そう時間はかからなかった。
名前を呼んでも、返事はない。
そっと手に触れる。
冷たかった。
そこに確かにあったはずの温もりは、もうどこにもなかった。
看護師は静かに息をのみ、現実を受け入れるしかなかった。
——夜のうちに、君は息を引き取っていた。
まるで、誰かを待っていたかのように。
その日、僕はいつも通り学校へ向かった。
教室のざわめき、黒板の音、変わらない日常。
何も知らないまま、時間は流れていく。
それでも、どこか落ち着かなかった。
ふと、ポケットの中のスマホが気になる。
画面を開く。
アプリの通知。
それは、BeRealのものだった。
「今日の写真を撮ろう」という、いつも通りの通知。
彼は何気なく、カメラを起動する。
周りの風景。
何も変わらない、ありふれた教室。
シャッターを押す。
そのまま、投稿画面を見つめる。
ほんの少し迷ってから、僕は君の名前を探す。
いつもなら、そこにあるはずの名前。
トークも、投稿も、当たり前のように繋がっていたはずの相手。
しかし、君のアカウントには——
まだ、既読も、反応もついていない。
何も返ってこない画面。
それが、やけに引っかかった。
その小さな違和感を抱えたまま、放課後を迎える。
僕は自然と、足を病院へ向けていた。
——行かなければならない気がした。
理由は分からない。
けれど、胸の奥がざわついていた。
病院に着き、受付へ向かおうとしたそのとき——
「……あの」
背後から、静かに声がかけられた。
振り返ると、君の親が立っていた。
その表情を見た瞬間、胸の奥が冷たくなる。
何かが起きている。
はっきりと、そう感じた。
言葉が出ないまま、時間だけが過ぎていく。
「……あの子は」
母親が、震える声で口を開いた。
一度、言葉を飲み込むように息を整え——
そして、静かに告げた。
「……亡くなりました」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!