2136年 9月24日 ━━━━ あれから45年経ち、涼は58歳で保護団体を退職し、今では79歳になっている。保護団体の古参組は大体が退職か、亡くなっていて新しい社員が沢山居た。
涼は、暖炉の上に置かれた写真を見ていた。その写真には若き日の自分や三里、マイクなどが写っていた。すると、キッチンの方から使用人の人が涼を呼ぶ。
「涼さぁ〜ん!お薬の時間ですよぉ。」
「…あらあら。もう、そんな時間なの?待ってねぇ、今行くから、。」
「ええ〜?!いいですよ!私が行きますからっ!涼さんは安静にしてて下さいっ!!」
「あらぁ〜、ごめんなさいねぇ〜。」
「いえいえ。」
奥から薬と水の入ったコップを持って使用人の吾郷 紫保里がやって来る。
「あらぁ、。また、その写真見てたんですかぁ?」
「えぇ。やっぱり、この写真がいつも、懐かしく感じてねぇ〜。」
「その人たちの事、忘れちゃダメですよぉ?」
「ええ、勿論よぉ〜。」
薬を飲んで笑う涼も老いてからは、認知症の症状が出始めていたが、決して三里たちの事は忘れなかった。
「涼さん。テレビ、見ますかぁ?」
「そうねぇ〜。何か、いいのやってるかしらねぇ?」
「そうですねぇ。」
吾郷はテレビを付け、リモコンを操作する。すると、テレビ番組のある巨大な石像が目に入った。
「あらぁ〜、ギャラクシア君じゃないのぉ。」
そう、その石像はギャラクシアだった。ギャラクシア、そしてナイトメアはあれから動き出す事なく今も固まったままだ。
「……ごめんねぇ、、。」
「……涼さん、、。」
吾郷は涼の背中を摩る。
3日後 ━━━ 動物保護団の会社にて、今では社長となった遥輝が社員たちに指示をしていた。しのぶもまだ、ここで働いている。今のところ、この会社に残っている古参組は遥輝としのぶだけだ。
「社長っ!」
「うん?どした?」
「ここのスケジュールの事なんですけど、、。」
いつも、暇なく仕事をしている遥輝を見て、社員の波佐間 蛍子、有剛 聖樹、西野 剣吾が話し合っていた。
「社長、今日も忙しそう。」
「だねぇ〜。」
「…あれっ?今、揺れなかった?」
「やめてよぉ!縁起でもない事、言うのぉ!!」
「ごめんってぇ。でも、なんか揺れた気がしたんだけど、。」
「気のせいじゃない?」と聖樹が言い、仕事に戻る。
「……でもさぁー、東京にあるゴジラの石像、気にならない?」
「ああ〜、あの向かい合った双子の怪獣?」
「そうそう。」
「……その子ら、『双子』で定着してんだ。」
「『うわっ?!!』」
急に話しかけて来た遥輝に驚く三人。
「もう〜っ!!驚かさないで下さいよっ!!!!」
「ビビったぁ〜、、。」
「ごめん、ごめんっ。」
遥輝は、平謝りをしながら社員から資料を貰う。
「まあ、どお見ても瓜二つですからねぇ。」
「でも、対象的な色で?黒と白。」
「へぇ〜!社長、物知りですねぇ。」
「……あー、剣吾?社長としのぶさんってあの怪獣らの戦いに加わってたんだぞ!」
「…えっ?!そうなんですかっ?!!知らんかったっ!!!!」
「やろうなぁ。もう、ギャラクシア君の事、知ってる人は殆ど、歳とってるやろうし。」
『ギャラクシア』と言う単語に?マークを浮かべる社員たち。いつの間にか社員、全員が聞き入っていた。
「あぁ、ギャラクシアって言うのはあの石像の右側の怪獣ね。で、左側の怪獣の方がナイトメアって言うの。」
「…かっこいい名前ですね?」
「俺らの先輩が、付けたんだよ。」
しのぶと遥輝は懐かしそうに答えた。
「前にここで、働いてた人ですか?凄いなぁ。」
「…うん。ほんと、凄い人ばっかだったわよ。」
すると、社員の一人下野 龍姫がテレビを付けて見ていたら、緊急速報が入る。
「あっ、。ねぇねぇ!皆、見てっ!!」
「なんだよ、たっちゃん?!」
皆がテレビに目をやった。
『 巨大怪獣の石像にヒビ!! 』
そう書かれた題名を見てまず、口を開いたのはしのぶと遥輝だった。
「『どっち?!どっちにヒビが入ったの?!!』」
同時に叫ぶ。あまり見ない二人の慌てた姿に驚きが隠せない社員たち。
「どうしたんですかっ?!と、取り敢えず、落ち着きましょうっ!!!!」
何とか二人を落ち着かせ、事情を聞く。
「あのねっ!さっき、名前教えたでしょ?ギャラクシアとナイトメア。ギャラクシアは私たちの味方なの!でもっ、でも、ナイトメアは違う!!」
震えた声で言うしのぶの肩を持ち、遥輝が口を開く。
「その名の通り、『悪夢』だ!!…ナイトメアは45年前に俺らの先輩や、モスラも、軍の隊員さんたちも殺した!!!」
「…えっ、、?!」
「あの時はモスラがっ、モスラが最後の力を振り絞って二匹を封印してくれたけど、。モスラはあの時に死んで、力も残ってない状態だったから、多分、直ぐに解けるとは、分かってたんだけど、、。」
「…だから、もしギャラクシアが先なら俺らも安心するんやけど、、。」
遥輝は口を噤んた。二人には冷汗が出ていてそれ程、不味い状況なのは社員たちも分かった。
「…あの、、もし、ナイトメア?の方が先に封印が解けたら、、?」
社員が一斉に遥輝を見る。遥輝は溜息を付き、
「……きっと、俺らも死ぬ、、。」
サーッと血の気が引く。
「……でも、ギャラクシアが居れば、、。今度こそ、力を合わせて、、、。」
遥輝は小さく呟き、その言葉にしのぶが強く頷いた。二人はテレビを見る。
そして、肝心のヒビが入っているのはギャラクシア、ナイトメア、、両方にだった。
孤島にて、双子は手を合わせ卵に祈りをする。すると卵は動き出し、ヒビが入る。
「”きゅぅうぅ、?”」
「…未来。目覚めましたよ。」
「えぇ、姉様。」
双子は微笑み、新たなモスラの誕生を喜んだ。
「ですが、、間に合うかどうか、、。」
「えぇ、、そして、適うかどうか、。」
「”きゅぅうっ!!“」
孫モスラ(ゴジラから見て)が強く鳴く。
「『っ!…そうですか、、そうですよねっ!!』」
双子は孫モスラを撫で、少しの幸せな時間を過ごした。
東京市内 ━━━━ ゴジラとナイトメアに亀裂が入った事によって東京は完全に封鎖された。今では軍のヘリや戦車が二匹を取り囲んでいる。
「今の状況を説明してくれ。」
「はい。ただ今、全軍が東京にて待機しています。いつでも攻撃出来ます。」
「了解した。」
「司令塔っ!!!石像のヒビが、大きくなっていますっ!!!!」
「なんだとっ?!どっちだっ!!!!」
「っ、、ゴジラ・ナイトメアですっ、、!!」
「……くそっ!!直ちに戦闘準備!!!今度こそ、息の根を止めてやる!!!!」
『了解。』
次は全員に聞こえるような大きな音を立ててナイトメアの身体にヒビが入った。バキバキとナイトメアを包んでいた結晶が剥がれ落ちていく。すると突然、辺りに白い結晶が現れた。
「なっ、なんだっ?!!どう言う事だっ?!!!!」
「わ、分かりませんっ?!!」
次々と戦車や住宅、ビルを貫き生えてくる結晶。その時、銀色の結晶に身を包んでいたナイトメアが姿を現す。自身にまとわりつく結晶を剥がし、首を鳴らした。
「撃て、撃てぇーっ!!!!!!」
途端に、ナイトメアへの一斉射撃が開始される。しかし、軍の攻撃はナイトメアの一歩手前で爆発した。
「なっ?!!」
「あれはっ?!!!」
ナイトメアを囲むように透明なバリアが光る。鼻を鳴らしたナイトメアは、空を飛ぶ軍のヘリや戦闘機に向け勢い良く熱線を吐いた。
「こ、攻撃が、当たりませんっ!!!!」
「なん、だとっ?!!」
ナイトメアは軍をある程度、薙ぎ倒していき、自身の脚に力を込める。
「何をする気だっ、?!!」
するとナイトメアはなんと、空へ飛んだのだ。有り得ない光景に口を開けながら見ていた司令塔。軍は、62年振りに為す術なくその場に立ち尽くした。
「………。」
「………。」
ニュースに出ていたナイトメアの復活、そして、進化に絶望する社員たち。しのぶと遥輝もまさかの事態に驚きが隠せない。
「……まじかよっ、、。」
「…まさかっ、そんなっ、、?!!」
「そ、空、飛ん、だ、、?!」
「…………最悪だ、、。」
「……誰か、着いて来る人居る?」
「『……え?行くんですか?』」
皆がしのぶの提案にざわめく。
「あぁ、俺は行くよ。」
「了解。他は?」
しのぶと遥輝が社員たちを見渡す。
「…あー、えっと、、。」
「……………あの!私、行きます。」
「よし、決まり。他の人は居る?」
「あの、、。ゴジラって、僕らに、友好、的ですかね、?」
「うん。そりゃねぇ、友好的じゃなかったら、まず行かんで。」
「なら、行きます。行きたいです!」
「『お、おう、。』」
しのぶと遥輝が軍の司令塔へ連絡し、会社の屋上にヘリがやって来た。
「ご苦労様!今のナイトメアは何処居るか、分かる?」
「いえっ!今、隊員らが捜索しておりますっ!」
「…なんか心配だけど、ワクワクもするのよね、、。」
「うん、僕も、、。」
波佐間と聖樹は、少し不安な顔をしてヘリに乗る。四人を乗せたヘリはまず、司令塔へ向かった。
ニュースを見てゴジラの元へやって来た、涼と吾郷。
「吾郷さん、来てこっち。」
「あ、はいっ!」
涼が車椅子を押しながら、吾郷を手招きしてゴジラの近くに寄る。ゴジラは今だ眠ったままだ。
「…………ここでねぇ、最悪の戦いがあったよぉ、。大事な人たちを失って、仲間だった怪獣も死んでった。軍の人たちも沢山殺されたの、、。」
ゴジラを見つめ、涼は語った。目を閉じ、あの時の光景を思い出す。
「貴方も、無理せんとってねぇ、、。」
涼は振り向き、吾郷を見た。
「………分かってますよ、、。」
その時、地面が大きく揺らぎ、ゴジラを包む結晶に亀裂が走る。涼たちは一旦離れ、ゴジラを見守る。ゴジラの伸ばされたままだった腕がバキッと割れ本体が見えた。その次に、ゴジラの顔の結晶が剥がれて行く。
「ギャラクシアく〜ん!」
涼がゴジラを呼んだ。ゴジラは目を開き開口一番に強く、吠える。
ごお”お”ぉぉおぉぉお”ぉおおぉぉんっ!!!!!!!!
声は児玉し辺りに響き渡る。その悲しげな声の主に涼は車椅子を進めた。
「…ギャラクシア君!こっち、こっち〜。」
その言葉にゴジラは振り向き、涼を見つめる。
「えっと、、。ゴジラ君、涼さんの事、覚えてる?」
『涼』と言う名に反応したゴジラは、涼の居る場所へ行き屈む。
「”……?”」
「私もねぇ、老けておばあちゃんになっちゃったのよぉ〜。」
「”ごぉおぉ、、。”」
「ギャラクシア君は、いい子ねぇ〜。」
涼は手を伸ばしゴジラの鼻先を撫でた。涼が手を離すと、ゴジラはゆっくり立ち上がる。そして、ナイトメアの消えた空を睨んだ。
北海道 洞窟内 ━━━━━ 58年前にラバドンが眠っていた洞窟の中は改造され、巨大な研究所と化していた。その中央には丸くなったガイターバーグが眠っている。
「ガイターバーグは大分、落ち着いて来たな、。」
「アルバート!」
高い所からガイターバーグを見下ろして居たアルバートに武装軍団の一人、ミゲルが走って来る。
「何だね?騒々しい。」
「ゴジラが、目覚めたぞっ!!」
「なんとっ!素晴らしいなぁ。」
クスクスと笑いながら喜ぶアルバートは、ハッとなり、ミゲルに問いかける。
「そう言えば、あのゴジラのクローンはどうした?もう、殺されたなんて事は無いだろう?」
「あぁ。クローンは今、名古屋の空を飛んでいるところだ。」
「ほう、。奴も『完全体』となったのか、、。素晴らしい。」
アルバートはまた、クスクスと笑う。
「我々の夢ももう時期だ、待っていろ。『エクス』。」
ガイターバーグの瞳が開く。
「よし。準備をしろ!ガイターバーグはまだ、利用出来る。どうせ、あの守神も来るだろう。」
名古屋市 上空 ━━━━ 突如、復活したナイトメアにより、緊急着陸する事となった飛行機。機内では、ナイトメアの襲来が来るのではないかと皆、不安を募らせていた。
「おばあちゃん、、。」
「大丈夫よ!なんかあったら、ゴジラとモスラが助けに来てくれるけん!」
「本当?」
「軍の人もおるけん、心強いで!」
何とか、孫の不安を取り除こうとする。
「昔の話しようか?」
「昔?」
「そう。私がまだ、5歳だった頃の話よ。……私と私の母を助けてくれた怪獣と人たちが居たの。」
「今もう、亡くなってるけど、、。あの方たちが居たから貴方がここにいるのよ。」
「じゃあ!その人と怪獣さんが居なかったら、私、産まれてなかったの?!お母さんも?!」
「そうよ。」
「私も母ももう死ぬなって思ってたけど、モスラが命懸けで助けてくれた。……三里さんも死ぬかもし知れないのに諦めず、私たちを助けてくれたのよ。だから、希望を捨てちゃダメ。ちゃんと持っておきなさい。」
「はいっ!!!」
手を挙げ返事をする孫。しかし、気が和んだのもつかの間、機体が揺れる。乗客は必死にイスにしがみつく。祖母は孫を安心させるように抱き締めた。
「どうしたっ?!!何だ、この揺れはっ!!」
「まさかっ?!!『スペースゴジラ』?!!!」
パイロットの一人が呟く。もう一人がその名前に反応し、
「スペースゴジラって、一体何ですか?!」
「…見た目はゴジラ。しかし、産まれは宇宙の果て。我々は奴の事を宇宙のゴジラ、『スペースゴジラ』と名付けたんだ、。」
するとまた、機体が揺れ、二人の顔が歪む。その時だった。センサーに巨大な物体が映る。その物体はもの凄い速さで此方へ向かって来た。
「不味い!!着陸まで後、どれくらいだ?!」
「あ、後、10分ですっ!!」
「クソっ!!!これじゃぁ、間に合わないっ!!!」
もうダメかと思われた時、突然現れた軍の戦闘機が飛行機を囲む。
『”聞こえますかっ!今から我々が誘導しますっ!!急いで着地して下さい!!!“』
「”了解しましたっ!!“」
皆がホッとした。その時、隣を進んでいた戦闘機が何かの尻尾に貫かれ、爆発する。機内は大騒ぎだ。
「大丈夫、大丈夫よ、、。」
「…うん、。」
祖母は孫だけでもと神に祈った。
『”全軍に注ぐ!スペースゴジラの出現を確認っ!!!市民の避難を優先し、注意しろっ!!!“』
「”了解。”」
「”しかし、レーダーに反応しないぞ?”」
パイロットは疑問を浮かべる。確かに戦闘機のレーダー探知には何も映っていない。しかし、危険を知らせる音は機内に鳴り響く。
「”辺りには、何も居ないぞ?!“」
「”待てっ?!!不味いぞ、これはっ!!!“」
「どうしたっ?!!!」
パイロットは隣を飛ぶ、戦闘機を見た。そのパイロットが此方を向き、上を指差す。
「”…上だ。”」
その瞬間、雲の中からナイトメアが飛び出して来る。その見た目は以前とは大きく違っていた。両肩に巨大で歪な結晶が生えており、尻尾の先や額にも白い結晶、胸部の真ん中には、隕石の時と同じ星のような模様が入った結晶。
ぎぃお”ぉぉおぉお”ぉぉおおぉぉんっ!!!!!!!!
雄叫びを上げ、軍の戦闘機に突っ込んで行く。スレスレのところで2機が躱し、ナイトメアにミサイルを撃ち込んだ。しかし、ナイトメアは自身の周りをバリアで囲み、防ぐ。そして、戦闘機に向け黄色い光線をはいた。
「不味いっ!飛行機から遠ざけろっ!!!」
「分かってるっ!!!」
軍の戦闘機がナイトメア、いや、スペースゴジラによって次々と破壊されて行く。
「っ?!来た!飛行機がこっちに来てるぞっ!!!」
「こっちだっ!!!!急げぇっ!!!!」
外に居た人たちが手を振り呼び寄せる。
飛行機は無事着陸し、スペースゴジラはゴジラが居るであろう東京へ向かった。
東京市内 ━━━ ゴジラは今だ空を睨んだまま佇んでいる。
「……ゴジラ君、どうしたのかしら、?」
「………吾郷さん、離れましょう。あの子が来るわ。」
「は、はい。」
吾郷は車椅子を押し、ゴジラから離れた。すると、司令塔から東京にやって来たしのぶたちと出会す。
「あっ!涼さんっ!!!」
「あらぁ〜、しのぶちゃん、遥輝君!」
しのぶは涼の手を取り、再会を喜んだ。
「久しぶりです!吾郷さんも!」
「ご無沙汰してます。」
ペコペコと頭を下げて本題に移る。
「あの。お二人は、ここから離れた方が良いですよ?ここは危険ですし。」
『”聞こえますか?!聞こえたら、返事を下さいっ!!!!“』
遥輝が持っていた無線機から隊員の声が聞こえた。
「あっ!はいっ!!聞こえます!どうしたんですかっ?!!!」
『”そこから、離れて下さいっ!!!スペースゴジラがもう少し、東京に辿り着きますっ!!!“』
「えっ?!…皆っ!!急いで、離れようっ!!ナイトメアがもう直ぐ、こっちに来るって!!!」
「は、はいっ!!分かりましたっ!!!」
その時、雲の中からゆっくりスペースゴジラが降りて来た。地面を踏み締め、ゴジラと向かい合う。
「……なっ、、。最初、見た時、あんなんじゃ無かったよな、?!」
「…スペースゴジラって言われるに相応しい見た目してるね、、。」
しのぶは苦虫を噛んだような顔をして、スペースゴジラに皮肉を言った。
「………皆、始まるわよ。」
ゴジラはスペースゴジラに向け鋭いパンチを入れ、スペースがゴジラを自身の尻尾で刺す。しかし、ゴジラは何とも無さそうにスペースゴジラの首根っこを掴み、地面に何度も叩き付ける。そこで、スペースゴジラは脚を使ってゴジラの脚を蹴る。体勢を崩したところへ素早く立ち上がり、黄色い光線を吐いた。
「ギャラクシア君?!!!」
すると、ゴジラから離れたスペースゴジラは両手を広げ、手の平にバチバチと雷を鳴らせた。その瞬間、地面を突き抜け氷柱のような結晶が何本ともなく生えて来る。
「全軍!ゴジラの助太刀をしろっ!!!この45年の戦いに、決着をつける時だっ!!!!」
『”了解!!“』
司令塔の合図と共に軍の戦闘機や戦車はスペースゴジラへの攻撃を開始する。スペースゴジラは忌々しげな顔を浮かばせ、攻撃を何とか避ける。そこへゴジラが突っ込んで行き、近距離で熱線を吐いた。しかし、スペースゴジラが腕を振り下ろしゴジラの頬を殴る。
「撃てっ、撃てぇっ!!!奴を怯ませろっ!!!!!」
遠く離れた場所から弾道ミサイルがはっしゃされ、その何発かがスペースゴジラに命中した。スペースゴジラは脚を踏ん張らせ、両腕に力を溜める。バチバチと鳴り響く雷と共に空へ両手を掲げた。すると、スペースゴジラの辺りに生えた結晶を通し、黄色い光線が無差別に飛び散った。ゴジラは軍の戦車の前に立ち、スペースゴジラの光 攻撃から守る。その時だった。司令塔がスペースゴジラの後ろに忍び寄る何かを見付ける。
「…んっ?何だあれは、、、、なっ?!!ガ、ガイターバーグっ?!!」
突如、現れたガイターバーグは勢い良くスペースゴジラの肩へ飛び付いた。スペースゴジラは、思いもしない事に混乱し、何とかガイターバーグを下ろそうとする。しかし、ガイターバーグはスペースゴジラの皮膚に自身の爪を食い込ませ、肩に生えた結晶にかぶり付いた。
ぎぃ”お”ぉおぉぉおぉおぉ”ぉぉんっ!!!!!!!!
スペースゴジラは苦痛に歪んだ顔でガイターバーグを剥がす。投げ飛ばされたガイターバーグはなん楽着地し、鼻を鳴らした。その時、
「『皆さんっ!!!』」
遥輝らの後ろに過去と未来が現れた。
「あっ!!過去さん、未来さんっ!!」
双子は微笑み、小さく頷く。
「『モスラが、参ります。』」
しかし、空からモスラが現れる事は無かった。
「………あれ?」
しのぶが口を開く。
「もう直ぐ、来ますよ!」
そう言うと、双子は空ではなく海のある方向の山を見た。
「…え、?……まさ、か、。」
遥輝の顔が引き攣る。遥輝の考えた予想は的中した。
山から薄い青緑色の物体が這い出てくる。その物体はモスラの、幼虫だった。涼の「あらあら、可愛いねぇ。」と言う声が聞こえる。
きゅぅあぁぁあぁあぁぁああぁぁっ!!!!!!!!
モスラの幼虫が叫び、スペースゴジラに近付く。そんな中、ガイターバーグがスペースゴジラに飛び掛かり、ゴジラが熱線を吐いた。
「…モスラ、、大丈夫かな、、。」
「『きっと、大丈夫です。』」
スペースゴジラがガイターバーグを軍の戦車らへ投げ、ゴジラに殴り掛かる。瞬間、スペースゴジラの振り下ろそうとした腕に白い糸が飛ばされた。スペースゴジラの腕に引っ付いた糸は粘り気があり、隣のビルに張り付く。なんと、モスラの幼虫が口から糸を飛ばし、攻撃したのだ。
「今だっ!!!!撃ちまくれぇっ!!!!!!」
司令塔の攻撃命令が聞こえ、軍の一斉射撃が行われる。身動きが取れないスペースゴジラにミサイルの雨が降り注ぐ。そこへゴジラの熱線が加わり大きな爆発を巻き起こした。
「っ?!……皆っ!大丈夫っ?!!」
ゲホゲホと咳き込みながらしのぶが安否を問う。
「涼さんと吾郷さんは、大丈夫ですっ!!!」
「俺らも、大丈夫!」
波佐間が驚いたように東京中央を見た。
「あ、あれっ!!!!」
そして、指を指す。遥輝らが波佐間の指差す方向を見ると、そこには、右肩の結晶が粉々になったスペースゴジラの姿。
ゴジラは肩で息をするスペースゴジラの顔面に火炎放射を吹いた。スペースゴジラは、直撃した顔を振りながらゴジラを鋭く睨む。そして、スペースゴジラはゴジラに向け勢い良く熱線を吐いた。しかし、先程より威力はなかった。
「待てっ。スペースゴジラの熱線の威力が下がったぞ、、。」
「…まさか、、?」
「……結晶だ、、結晶を狙えっ!!!!」
『”奴の弱点は、肩の結晶だっ!!もう片方も、粉々にするぞっ!!!!“』
『”了解!”』
戦闘機らはスペースゴジラのもう片方を狙いミサイルを撃つ。しかし、スペースゴジラは自身の周りにバリアを張り、攻撃を防いだ。すると、軍のミサイルはバリアに吸収されスペースゴジラは片手をバリアの前に掲げる。スペースゴジラは人差し指を出し上に上げた瞬間、バリアから軍の放ったはずのミサイルが跳ね返ってきた。ミサイルは辺りに飛び散り、ガイターバーグやゴジラに直撃する。ミサイルがビルに当たり、モスラの幼虫にビルが倒れて来た。モスラの幼虫は急いで避け。ゴジラたちを見詰める。
「くそっ!!なんて奴だっ!!!!」
「何でも、ありかよっ?!!」
「ゴジラァーっ!!!!大丈夫かぁっ?!!!!!」
軍の一人が叫ぶ。ゴジラは跪いているが、こちらにピースする余裕は持っていた。スペースゴジラが両腕を掲げ空へ飛び立つ。
ぎぃお”ぉ”おぉ”ぉぉおおぉぉぉんっ!!!!!!!!!!
ごお”ぉぉお”ぉ”おぉぉおおぉぉんっ!!!!!!!!!!
二匹が同時に叫び、互いの背びれを発光させる。そして、同時に熱線を吐いた。ゴジラとスペースゴジラの熱線がぶつかり合い、押し戻しを繰り返す。スペースゴジラは放つ熱線に更に力を込め、ゴジラも負けじと押し返す。次第に二匹の熱線は膨れ上がり、巨大な爆発を発生させた。
隙を見たガイターバーグがスペースゴジラの肩の結晶部分に噛み付く。痛みに顔を歪ませながら、スペースゴジラは片脚を地面に叩き付けた。その時、地面を突き抜けて来た結晶がゴジラとガイターバーグの腹を勢い良く貫く。
「ギャラクシアっ?!!!!!!!」
しのぶが叫ぶ。ゴジラは口から血を吐きながら結晶を砕く。ガイターバーグも急いで抜け出し、ゴジラの少し離れた横に止まるが、スペースゴジラは追い討ちを掛けた。また、両手を掲げ、力を込める。すると、突然、ゴジラとガイターバーグの身体が浮かんだ。そして、勢い良く両腕を交差させる。ゴジラとガイターバーグはスペースゴジラの腕の動きに連なり、鈍い音を立てぶつかり合った。ゴジラとガイターバーグは地面に倒れ込み、唸った。軍の戦車がスペースゴジラの気を逸らそうと弾丸を撃ち込み、戦闘機もミサイルをスペースゴジラへ撃ち込んだ。モスラの幼虫がスペースゴジラの脚に糸を飛ばす。すると、とうとう、スペースゴジラがモスラの居場所を捉えた。スペースゴジラが熱線を吐こうとした時、物凄い速さでガイターバーグがモスラの幼虫を捕まえ、避ける。ゴジラも何とか立ち上がりスペースゴジラの肩に噛み付いた。ガイターバーグがモスラの幼虫を降ろそうとした時、ガイターバーグの背中に付いた巨大な釜がちぎれ地面に落ちた。
「…ガイターバーグ、、。」
遥輝としのぶは、今にも事切れそうなガイターバーグを見て悲しくなる。ガイターバーグはまだ、X星人によって操られたままだからだ。
「今だっ!!!スペースゴジラの肩を狙えっ!!!!!!」
司令塔の命令で飛ばされた弾道ミサイルが、スペースゴジラの肩の結晶に直撃しする。そこにガイターバーグも火炎放射を吐き応戦し大爆発が起こった。
「………っ!やったっ!やりましたっ!!!!」
なんと、スペースゴジラの残った結晶も粉々に砕けたのだ。スペースゴジラが憎しみの籠った顔で歩みを進めようとしたが、両脚がモスラの糸によって身動きが取れない状態だった。ゴジラはそんなスペースゴジラに強烈なパンチを食らわし、背びれを青白く光らせた。スペースゴジラがそれに気付き口を開いた途端、モスラの幼虫が糸を吹き付け口を塞ぐ。ゴジラの背びれの色が朱色に変わる。
「ゴジラァ!!やれぇえーーっ!!!!!!!!」
「いけぇえーーーっ!!!!!!!!!!」
「いっっけぇぇーーっ!!!!!!!!」
皆が叫ぶ。ゴジラは地面を踏み締め、勢い良く熱線を放った。その瞬間、スペースゴジラは朱色の熱線に包まれ消えて行く。と同時に巨大な爆発が起き、爆風が吹いた。
「うわっ!!!!」
「皆っ、飛ばされないでねっ!!!!!!」
咳き込みしのぶが問う。涼を抱き締めていた吾郷がOKサインを送る。ほっとした、しのぶは遥輝と共に東京市内を見渡す。
東京は瓦礫の山と化しており、その中央にゴジラが佇んでいる。ゴジラの目の前に今や、白い結晶となったスペースゴジラがゴジラに手を伸ばした状態で固まっていた。そして、スペースゴジラの一部が欠け、落ちる。それに連なるようにバラバラとスペースゴジラは砕け崩れていった。ゴジラはスペースゴジラだったものに近付き顔を寄せる。ゴジラは星型の結晶の塊を見詰めた。その時、どぉんと言う音が聞こえ、ゴジラは振り向く。そこには、地面に倒れ込むガイターバーグの姿。モスラの幼虫がガイターバーグに寄り添うがガイターバーグは静かに瞳を閉じ、目覚める事の無い眠りについた。
「ガイターバーグ、、。」
「………ごめんね、、。」
「……なんか、、惨い、な、、。」
「……うん、、。」
波佐間と聖樹は初めての事に、感情がぐちゃぐちゃになっていた。すると、ゴジラが波佐間らの所へ近付く。
「ギャラクシア君、、。お疲れ様。」
遥輝は近寄って来たゴジラの鼻先を撫でた。
「『ゴジラ、皆さん。また、助けて頂きありがとうございます。』」
過去と未来は遥輝らに振り向き、お辞儀をして消えて行った。ゴジラも涼を見てから、皆に背を向け歩き出す。
「ギャラクシア君!!ありがとおぉっ!!!!!!」
「ありがとねぇっ!!!!!!」
涼は夕日をバックに消えて行くゴジラに微笑みながら、手を振った。
「ありがとうねぇ、、。」
ゴジラは海に戻り、暗闇の中へ進んで行く。
45年の月日を経てゴジラとスペースゴジラの戦いは幕を閉じた。だが、
まだこのステージは終わらない
END
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