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87 ◇裏切り者の哲司くん
「哲司さんはね、温子さんを裏切ったのよ。それで最終的に離婚になったの」
「それって、その……女性関係でしょうか?」
「相手は、同居していた温子さんの妹なの。
温子さんのご両親も変な人たちでね、妹と哲司さんを攻めるのではなく、温子さんに
身を引けなんて言って、哲司さんや妹に両親、その上妹の凛子さんに取り込まれていた
娘にまで……温子さん、家族全員から家を追い出されたのよ。
信じられないけどこれ本当の話だから」
離婚理由を聞き、雅代の表情が見る見るうちに苦し気なものへと変わっていった。
「哲司さんが……哲司さんも一緒になって?」
「他の者たちが家から出て行けと言った時、下を俯いてただけらしいから
まぁ、そういうことね。残念だけど」
「じゃあ、どうして哲司さんはその妹の凛子さんっていう人と再婚しなかったんですか?」
「凛子っていうのがとんでもない女で、あっ、温子さんの妹のことをとんでもない
女呼ばわりもないもんだけど、失礼……家事なんて大嫌いで母親と喧嘩して家を
出てっちゃったらしいわ」
「哲司さんを置いてですか?」
「そうみたい。
ちゃっかり外で別の男を作って、その男のところへ転がりこんだらしいわ。
だけどその男とも上手くいかなくなったみたいで、今はどこでどうしているのやら、もう家族は誰も凛子さんが今どうしているのか知らないみたいね。
あぁ、これっ珠代ちゃんから聞いた話なんだけど、温子さんが離婚届けを
出した後で、一度哲司さんが工場に来たらしいのよ。
どうも温子さんに戻ってほしいって言いに来たんじゃないかって」
「温子さん、戻らなかったんですね」
「そうね。今の現状がそれを物語っているわね」
――――― シナリオ風 ―――――
絹「哲司さんね……温子さんを裏切ったの。
相手は……温子さんの妹よ」
雅代、衝撃を受けて足を止める。
雅代「そ、そんな……!」
絹「温子さんのご両親も妙な人でね、責めるどころか『身を引け』って温子さ
んに言ったみたいなのよ。
結果、家族みんなで温子さんを追い出したのよ。
信じられないでしょうけど、本当の話よ」
雅代、唇を噛みしめる。
雅代「哲司さんも……一緒になって?」
絹「下を向いて黙ってただけだったらしいわ。
結局、それって同罪よね」
雅代「じゃあ、どうして……妹さんと再婚しなかったんです?」
絹「その凛子さんって人、家事も嫌いで母親と喧嘩して家を飛び出したの。
外で別の男を作って……結局はうまくいかず、今は消息も分からないって
話よ」
雅代、目を伏せる。
肩が小さく震えている。
絹
「そうそう、これ珠代ちゃんから聞いたんだけど――
温子さんが離婚届を出したあと、哲司さんが工場に来たらしいの。
『戻ってほしい』って言いに来たんじゃないかって」
雅代「……温子さん、戻らなかったんですね」
絹「ええ。今の姿が、それを物語ってるわね」